2人っきりのデート
こちらも良ければ読んでくださいね♪
■「小さな小さな 大冒険!!」続編を開始しましたので、宜しければご一読下さい。
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そして月曜日、振替休日となった事で、健一はいない。
「いつつつつ・・・。」
「大丈夫?」
そこには、全身筋肉痛に苦しむ龍徳の姿と心配そうに龍徳を見つめる志津音の姿があった。
「大丈~夫ぅ~・・・ではないかも・・・たはははは」
「もう・・・無理しないで良かったのに・・・。」
「バカか~! 志津音とデート出来るのに休んでいられるかぁ~!!」
「馬鹿はどっちよ~もう~しょうがないわねぇ」
この日は、地元のデパートの中にある映画館とアイススケートを楽しむ為に来ていた。
「それにしても・・・龍徳君が筋肉痛って珍しいわね。」
「あ~説明が難しいんだけど練習筋、試合筋、戦闘筋って感じで一時的に使える筋肉を変える事が出来るんだけど、戦闘筋の使用時間超えた反動ってやつだな・・・。」
「良く分かんないけど・・・無理したって事は分かったかも。」
「ハハハ。まぁ~そんな感じかな♪普通なら使わない筋肉使ったから反動が凄くって」
「平気なの~?別に運動しなくたって大丈夫だよ?」
「俺がどうしても滑りたいの!」
「もう~何でそんなに頑固なのかしら?」
「それは・・・アイススケートなら志津音の手を取って滑れるからだ!」
自信満々に志津音と手が繋ぎたい・・・要はそう言う事だった。
「う~ん・・・頭良いのに・・・クスクスクス♪ そんなに私と手を繋ぎたいの?」
「当然! アイススケートなら自然に手を握れるからな!」
「クスクスクス♪そう言うのは普通言わない方が良いんじゃないの?」
「かも知れないけど嘘を吐きたくない。」
「呆れた・・・フフフ♪ ここまでハッキリ言われると何だか笑っちゃうわね♪」
「いてててて・・・それも作戦!」
「はいはい♪ おじいちゃんこっちですよぉ~」
「お爺ちゃんではない!・・・いてててて・・・ちくしょう~」
「フフフ♪ 今日は私がエスコートしてあげるからね♪」
「いやじゃ~俺がエスコートする~」
「そんな身体じゃ無理でしょう♪ お爺ちゃん♪」
そう言って龍徳の身体をつつく。
「グッ・・・だ・大丈夫だし~ぃ!」
「ウフフ♪楽しぃ~♪」
「ぢくしょぉ~」
それから1時間。
「見て見て~結構滑れるようになったよぉ~♪」
「うむ・・・相変わらずの運動神経・・・。」
最初こそ小鹿の様に龍徳に摑まっていた志津音だったが、今では普通に滑れるようになっていた。
「もう少し動けば筋肉がほぐれそうなんだけどなぁ・・・。」
未だにぎこちない龍徳。
実は、前回の人生でアイススケートはホッケー選手並みに上手であった。
っと言うより元から何をやっても人より早く覚えるので、大半のスポーツは得意であった。
だから、自分のイメージでは颯爽と滑る自分を見せて惚れさせようと企んでいたのだが、今回、限界を超えた力を使った時間が長かったせいで、今まで経験した事がないほどの筋肉痛を味わっていたのだった。
「ほらほら♪」
「グヌヌ・・・捕まえ・・・」
「キャァァァ~ フフフ♪残念~♪」
さっきから龍徳に近づいて揶揄って来る志津音を捕まえようとしているのだが、身体が思う様に動かない。
最初は触れる程度の動きだったのだが、ムキになって抱き着く勢いになっていた。
「行くよ~♪ 今度は摑まっちゃうかもぉ~♪」
「今度こそ・・・痛い・・が!とりゃ~!! 捕まえた!」
「・・・・・」
逃げようとした志津音を後ろから抱きしめる形になってしまった。
力強く抱きしめられ志津音の顔が真っ赤に染まる。
「フッフッフ・・・とうとう捕まえてやったぜ・・・って・・・どうした?」
「ううん・・・何でもない・・・」
気が付けば未だに抱きしめている事に気が付く。
「あっ!ご・ゴメン・・・」
「ううん・・・ちょっとビックリしたけど・・・大丈夫。」
「本当に?」
「うん・・・」
「それにしても・・・志津音って良い匂いだな♪」
龍徳的には褒めたつもり。
だが、相手は中学生だ。
見る見るうちに顔を真っ赤にすると
「バカァ~!!」
ドンっと胸を押され
「グエッ」
ズデ~ンと盛大にコケてしまう。
「もう知らない!」
そう言って滑って行ってしまった。
「いてててて・・・そう言えば中学生だった・・・距離感が難しいなぁ~おっ!今ので良い感じに筋肉がほぐれて来た気がする。」
すると突然、ピクッと何かに反応し立ち上がって志津音を探すと
「誰だ・・・知り合い・・・じゃないな!」
反対側のコーナーを過ぎた辺りで男性2人に挟まれ声を掛けられている姿が目に入った。
目線を合わさない様に顔を下に向けて滑る志津音の姿で、ナンパされていると判断した。
「ざけんなよ・・・こんな痛み・・・どう~ってこた~ない!!」
軋む体に鞭を撃つ。
だが、先程に比べればかなりまし。体制を低くして一気に氷を蹴りだした。
「うわぁ~あの人早っ!」
シャーっと姿勢を低くして一気に近づくと2人の男性から離れようと志津音が少し前に出たので、スケート靴を横に滑らせ男性に向け氷を削りながら一気にブレーキを掛ける。
すると凄まじい量の氷がラッセル車で雪かきしているかの様に飛び散った。
「あんたら何? 俺の女に何してんの?」
『俺の女・・・ヒャァァァ~・・・』
「何だよイキナリ・・・」
「ペっ・・・口の中に氷が入った・・・。」
スゥーっと志津音の前に立って後ろに隠す。
「で?まさか、嫌がる女の子を無理やりナンパしたんじゃないよな?」
「何だこのガキ! ウッ・・・」
「おい!もう良いから行こうぜ!」
パッと見は高校生だろう。
龍徳の気迫に離れて行く。
「大丈夫か志津音?ゴメンな傍にいなくて・・・怖かったか?」
そう言って志津音の肩に手を置いて様子を伺う。
「こ・怖かった・・・」
「一人にさせちゃって・・・ごめん。」
震えている志津音を見て反射的に抱きしめてしまう。
いつもの志津音なら恥ずかしがるのだろうが、余程怖かったのだろう龍徳の腕にそっと触れる
「けど・・・龍徳君助けてって心の中で叫んだら来てくれた♪」
「何か分かんないけど確かに何かが聞こえた気がしたな・・・」
「フフ♪ もう大丈夫だよ♪」
そう言われて未だに抱きしめている事を思い出す。
「あ・・・ごめん。」
「ううん・・・今度は大丈夫だったよ♪」
柔らかい笑みを浮かべ嬉しそうにそう伝える。
「ハウッ・・・何その笑顔・・・メチャクチャ可愛いんだけど・・・」
「フフ♪ありがとう♪」
「お・おう・・・」
『初恋は美化するって言うけど・・・俺の場合、記憶が劣化してたんだけど・・・思い出の中より全然可愛いんだけど・・・何なんだ・・・この感じ・・・なんか・・・こう・・・叫びたくなる・・・』
「フフ♪ エスコートしてくれるんでしょう♪」
そう言って龍徳に手を差し出す。
「お・おう・・・」
恥ずかしそうに後ろ向きに滑る龍徳とは対照的に志津音の顔が微笑みに満ちていた。
そして、スケートを終え昼食を取ると志津音の見たがっていた映画を見終わった時。
「それにしても・・・本当に自分の分は自分で出すってば~!」
「だから~さっきも言ったし実際に見せただろう?」
さっきから一円も支払っていない事で志津音がダメだと言い出したのだが、それは予想済みだった龍徳が新聞屋の大谷さんからアイススケート場の無料招待券とお食事優待券さらに映画観賞券を準備していたのだった。
「確かに見たけど・・・な~んか龍徳君が先回りしている気がするんだよね~」
『ハハハ・・・中学生なのに鋭いな~』
「そんな事ないって♪ ただなのにお金を使ったら勿体ないだろう?」
「そりゃ~そうだけど・・・」
「先に言っておくけど今の俺は無料券が結構手に入るから!だからお金の話はなし!」
「もう・・・分かったわよ。ありがとう♪」
「それよりも・・・新しい家の住所分かったら手紙くれよな!絶対に行くから!」
「後2週間で引っ越しかぁ~・・・」
引っ越してしまえば今みたいに頻繁に龍徳と会えないと思うとションボリしてしまう。
「寂しがっている暇なんか与えないからな!」
「クスクスクス♪期待してる♪」
『きゃわいいなぁ~♪』
そして、鈴木家は6月18日に引っ越していったのだった。
鬱陶しい梅雨が始まり部活生たちも引退を終え一斉に受験モードに突入していく中、龍徳だけは普段と変わらない生活を送っていた。
流石に引っ越ししたばかりだと何かと片付けに時間が掛かるから時期を見て遊びに行こうと考えていた。
そうなると、この時代は公衆電話で連絡を取るのが当たり前の時代だ。
恋人の電話を家ですると必ずどの家でも親から文句を言われる時代。
自宅に住んでいる限り龍徳と謂えど例外ではない。
その為、家の近くの公衆電話に行っては志津音と長電話をする日々が続いた。
「はい。鈴木です。」
「もしもし!神山と申しますが、志津音さんはご在宅でしょうか?」
「志津音は出かけています。それよりも龍徳君はウチの志津音をどう思っているんですか?」
その質問に微笑んでしまう。
「・・・・・私の一番大切な女性です♪」
「ヒャァ~・・・一番・・・た・大切・・・キュ~・・・」
電話越しにも慌てている様子が伺える。
「あれ? どうしたんだ?」
「な・何でもないでしゅ・・・そそそそそ・そんなに大切な人ならちゃんと捕まえといた方が良いですよ!」
電話口の相手は何やらパニックになって自分でも訳の分からない事を言ってしまったようだ。
「ええ♪ 次にあったらちゃんと抱きしめますので、ご安心ください♪」
「・・・・・」
電話口でも相手の頭から煙を吐いた音が聞こえてきそうだ。
「そ・そう言うのは惚れた人同士がするものですよ!」
「ええ♪ 惚れてますので♪」
「はわわわ・・・そ・そんなに・・・ほ・惚れ・・・キャァ~・・・もう~無理~!!」
「あれ? もう終わりなのか? もう少し愛を語りたいんだけどなぁ~♪」
「も・う・終・わ・り!!!」
恥ずかしさから声が大きくなってしまう。
「俺から始めた訳じゃないのに・・・」
「もぅ~いつもそうやって揶揄うんだからぁ~!」
「揶揄ってないぞ? 本当に大切な・・・」
「ヒャァ~!・・・も・もうおしまい!!」
「クスクス♪ 相変わらず可愛いなぁ♪」
「もう知らない!」
「クスクス♪ それよりもそっちは落ち着いたかい?」
「・・・う~ん、引っ越しの片付けがもう少し・・・学校もあるから中々終わらないよ・・・」
「受験勉強もあるから尚更か・・・新しい友達は出来たのか?」
「新しい友達も出来たけど・・・学校だけの友達って感じかなぁ・・・」
「ふむふむ・・・それはラッキーだな♪」
「なんでよぉ~?」
「その方が、俺が遊びに行った時にもっと喜んで貰えそうだから♪」
「まぁ~呆れた♪ フフ♪ でも、何だか安心する♪」
「だろう♪ 本当だったら直ぐにでもそっちに行きたいのを我慢してるんだから片付け頑張れよ♪」
「頑張ってるけど~引っ越しのタイミングが最悪だよぉ~」
「アハハ♪ 確かに♪ 梅雨時期に。部活もなく。受験勉強に。試験前。家の片付けに。・・・本当に最悪のタイミングだな・・・。」
「だよねぇ~・・・」
「クスクス♪ 夏休みに入ったら直ぐに会いに行くから♪」
「うん♪ 楽しみにしてるね♪」
『今すぐ逢いに行きたい・・・今から行っても良いかな・・・なんて・・・言える訳ないな』
「・・・・・」
少し無言の時間が流れると
「志津音・・・」
「な・なあに?」
そう言って受話器からコンコンっと言う音が6回聞こえた。
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