金縛りとデジャヴ
初の恋愛ものを書いてみました。
毎週水曜日と土曜日にアップします。
作者的には自分で書いていて泣いてしまうような物語だと思っています。
文字総数334000文字で完結迄書き終わっているので、良ければご一読ください。
冒頭は主人公の現実。
第3話辺りから主人公の生い立ち
第6話辺りから本編と言った感じになると思います。
「そうか・・・そうだよな・・・離婚届を偽装され、再婚を拒否され、未だに家の事は一切何もせず、金を湯水の様に使おうとする。自分に非があるにも拘わらず逆切れをする彼女と一緒にいる意味は?」
答えは、最初から分かっている。
「最愛の一人息子の為」だけだ・・・。
だから子供を人時事に取られたと感じたのだ。
そんな生活が何年も続くと
『子供が高校生になったら家を出よう。子供の為に近くにアパートを借りて住んだ方が幸せだ。』そう思うようになった。
子供が、中学に上がるころには、子供も私について来たいと言うようになった。
今までが、良い子過ぎただけで母親の異常な姿を見続けた彼は、自分の母親を本気で嫌い始めてしまった。
実は、子供が3歳の時から母親が嫌いだと言っていたのだが、私が良いお母さんに見える様にフォローし続けた結果、何とか好きでいてくれていただけの事なのだ。
そのフォローをしなくなった途端、彼は日に日に母親の事が嫌いになっていった。
それでも身体の弱いママに少しは優しくしてあげなさいっと気が付けば言っている私は一体何がしたいのだろうか?
思えば、子供が赤ちゃんだった頃、出産2週間で妻は育児ノイローゼとなり、育児放棄をした。そのせいか僅か4ヶ月で彼は母乳を飲まなくなってしまった。
生後2週間・・・普通の仕事をしながらでは、とてもじゃないが彼を守れない。
そう思い私は仕事を止め時間に融通が利く新聞屋に努め直した。
少年時代にボクシングがやりたくて新聞配達をやっていた事があるが、またやる羽目になるとは思いもしなかった。
保育園が見つかるまでっと働いた新聞屋をまさか2年以上続けるとは思わなかった。
事実、保育園は彼が生後6ヶ月の頃に運良く入る事が出来た。
だが、妻が何もしなかった。
朝が辛いと子供を保育園に連れて行かないし夕方は疲れたからと迎えにもいかない。
迎えに行けば満面の笑みを浮かべて駆け寄ってくる我が子が可愛くて仕方がなかった。
私がいない間は子供の面倒を見ていると言ってはいるが、信じきれない。
『この子が、言葉を話せる歳まで新聞屋を続けよう』そう思った。
だが、新聞屋の仕事は、自分をダメにする。
私以外の社員はサボる事しか考えていない。
それどころかお客様の集金を勝手に使ってパチンコ三昧。
要は“毎月の大半をどう働いている様に見せるか”なのだ。
最初は付き合いもしたが、堕落した生活に慣れたら再就職した時に後悔する事になる。
そう思ったからこそ人の何倍も頑張った。
そもそもマネージャーからして昼から酒を浴びる会社。
飲酒状態でバイクに乗って出掛けるマネージャーからモラルについて話されても聞く耳がない。
私が頑張れば頑張る程、サボれるようになるマネージャーは、他の社員の3倍のエリアを私に任せる様になった。
給料も上がらないのに、配達、集金、顧客管理。
今は亡き父が働いていた印刷会社で同じ様な目に合っていた事を思い出すと何故だか誇らしく思ってしまった。
1000件もの量を一人でこなすには休憩時間を使わないと不可能になってしまう。
数日やっただけで、睡眠時間を1時間にしないと不可能だと分かった。
そうしないと子供の面倒が見られないからだ。
『ダメな会社は、トコトン腐っているな』そう思い退職を考える。
そんな中、真夜中の業務中に信号無視をした車にはねられ病院に担ぎ込まれた。
「幸せって何なんだろうな・・・」
思わず考えていた事が言葉に出てしまった。
肉体的にも精神的にも限界だったのだと今なら分かる。
入院中、子供の事が心配で2日目には自主退院してしまった。
自宅療養中、やはり昔の事を思い出す様になった。
楽しかっただけではないが、辛く苦い思いでさえも鮮やかに思える様な記憶。
今の元妻ではない女性を選んでいたらどうなったのだろうか・・・
もし・・・過去に戻ってやり直せるなら・・・。
運命の事故がなかったら・・・そう思わずにはいられない。
今の社長と共に育てた会社が軌道に乗った事で、時間が出来てしまったから余計に昔を思い出す。
自営業の頃、学生の頃、高校生、中学生・・・そして、小学生と・・・
「情けねえなぁ~龍徳よぉ~・・・何でそんなに我慢する必要があるんだよ・・・本当のお前なら簡単な話だろうが・・・今からでも遅くないんだぞ!」
『そんな事は分かっている・・・だが、子供だけは育ててからだ・・・』
自分自身と会話。
傍から見ればヤバい奴だ。
それから時が流れ、子供も大きくなり手が掛からなくなってからは、やっと自分の時間が増えて行ったが、自宅療養中に昔を思い出し過ぎたせいか不満が募ると現実逃避したくなる事が増えていった。
少年時代の俺が今の俺を見たらなんて思うだろう。
「情けない」と思われるだろうか・・・
それとも、ここまでの苦労を全て乗り越えてきた俺を自慢に思ってくれるだろうか?
布団に横たわり昔を懐かしむ。
あの頃に戻りたい・・・
俺を中心に地球が回っていると本気で思っていた子供の頃に・・・
今の生活は、妻・・・否、既に離婚しているから元妻だな。
その元妻以外に不満がある訳ではないが、子供の頃に描いていた未来とは遠くかけ離れている。
一体どこから俺の人生の歯車は変わってしまったのだろうか・・・
努める会社の全てで圧倒的な成績を出して目の上のたん瘤扱いされた事なのか
それとも人を騙して年収2000万円稼げる仕事に嫌気がさし遣り甲斐のある仕事にしてしまったからなのだろうか・・・
否・・・そんな最近の事ではない・・・
だったら父の会社を倒産させてしまったからなのだろうか・・・
それとも当時、24歳で年収1000万の仕事を辞めてまで父の会社を継いだからなのか・・・
それは、違うな・・・その全てが俺の経験として今の俺を支えている・・・
そうであれば、もっと昔の出来事が俺の人生の歯車を壊したのだろう・・・。
そうであれば、ホスト時代に女共の本性に幻滅してモノクロの世界となった時だろうか・・・
それとも高校時代に喧嘩に明け暮れ、夜の仕事をしたからだろうか・・・
否、答えなど最初から分かっているんだろう?」
全ては、中学2年生の交通事故が俺の運命を狂わせた。
あの運命の交通事故が回避出来たら俺は初恋の人とどうなったのだろうか・・・
あの子に告白したかったからこそ俺は努力する事が出来る人間になったのだ。
初恋の女性に告白する勇気を持ちたくて強くなったのだ・・・。
今の俺の根幹にあるのは彼女の存在だと今さらになって思い出す。
こんな歳になっても抱いてしまう淡い恋心に笑ってしまう。
気が付けば涙を流して眠りについてしまったようだ。
暫くして目を開けようと思っても涙が乾いて、瞼がくっ付いたのか開かない。
目ヤニで瞼が付いているのかと思い手で擦ろうと思うが、手が動かない。
『あぁ・・・この感覚・・・金縛りだ・・・』
過去何度も経験があったから分かる。
身体がピクリとも動かない。
大人であっても怖いものは怖い。
こういう時は必ず・・・奴らがいる!
薄っすら開く事の出来た俺の目には案の定幽霊が映っていた。
『しかも2人?』
いつもは、怖くて強引に身体を動かし幽霊達から逃げるのだが、何故か人生に疲れていた私は、この出来事を受け入れた。
怖くない訳ではない。
だが、逆にいつも同じような事をしている幽霊に興味が出たのも事実。
そのお陰?と言うのも変な話だが、現在2体の幽霊と睨めっこ状態となっていた。
『怖っ! 大人だって怖いものは怖い!・・・けど・・・何をしているんだ?』
腰のあたりに座っている髪の長い女性は、胸元から何かを引っ張り出している。
『何なんだあれは・・・?』
目線を上にあげると男の子が見下ろしている事が分かる。
『この子・・・どこかで・・・』
見た記憶があると思ったが子供であろうが幽霊は幽霊
『マジで・・・小便ちびりそう・・・』
無言で見下ろされているだけかと思いきや・・・
『この幽霊も俺の頭から何か取り出しているのか!?』
何度か経験がある金縛り。
余りの怖さに幼児返りしそうな程、怖かった事を思い出す。
子供の頃に続けて何度も起きた事で、怖くて一人で寝られなくなってしまい目覚める度に今は亡き父親の布団に潜り込んだ記憶を思い出す。
『そう思うとこの光景も懐かしいのかな・・・』
だが、こんなに長く金縛りに合った事はない。
いつもなら長くても10秒程度の話だ。
『そう言えば・・・これ・・・記憶にある・・・デジャヴだ・・・』
以前、夢か何かで見た記憶が鮮明に思い出される。
子供の頃から今までも何十回、何百回と経験した事のあるデジャヴ。
一瞬の記憶もあれば、最大10分以上も覚えているケースもあった。
だが、歳を重ねるごとに減って行ったので、久しぶりの感覚。
「この後・・・確か・・・」
既に1分以上は経過している・・・そう思うと無性に怖くなる。
『なんか思い出せそうなんだが・・・分かんないけど・・・兎に角・・・目覚めなきゃ不味い気がする!』
強引に体を動かそうとするが、微動だにしないそれどころか・・・
『な・なんだ・・・身体が・・・嘘だろぅ・・・浮いているのか!?』
自分の身体を上から見つめる初めての経験。
だが・・・
『そう言えば・・・子供の頃・・・否、何度か経験したはずなのに・・・何で忘れていたんだろう・・・』
理由は分からないが、忘れていた記憶が呼び戻されていく。
『そうだ・・・このデジャヴ・・・思い出した・・・過去にも何度かあった・・・そうだ・・・この後俺は・・・あの時に・・・』
プチンっと何かが切れた様な感覚。
完全に意識を手放しどこかを彷徨っている感覚だけが微かに分かる。
そして、記憶にある声で起こされた・・・
こちらも良ければ読んでくださいね♪
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