手料理
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そして、約束の土曜日を迎えた。
ピ~ポ~ン。
今日は志津音の手料理をご馳走してくれると学校が終わり身支度を整え緊張の面持ちで佇む龍徳の姿があった。
『お・落ち着け俺・・・いくら初恋と言っても・・・相手は中学生だぞ?・・・』
その時声と共に玄関が開いた。
「は~い♪ 今行きま~す。ガチャ・・・いらっしゃい龍徳君♪」
そこにはエプロン姿の志津音の姿があった。
ドキッ・・・その姿で微笑まれ年甲斐もなく胸のドキドキが収まらない。
『ヤベッ・・・何か緊張してきた・・・』
「ほ・本日は・・・お・お招き・・・い・頂き・・・あり・・・ありがとうございます。」
「プッ・・・クスクスクス♪ な~に?それ~♪ 面白~い♪ ほら、上がって♪」
言われるが儘、台所に通される。
「もう少しで出来上がるから座って待っててね♪ それとお母さんいないから安心してね♪」
「お・・・おう・・・。」
『き・・・緊張する・・・なんだコレ?・・・俺が緊張?』
これは、驚いた。
本来の人生では、夢が途切れ荒れて行く龍徳は年齢と共に緊張とは無縁になっていたのだ。
実際、24歳の頃に父親が心不全で倒れ入院した時が最後の記憶。
それ以降は50歳になる前まで動じた記憶がない。
『悪くない・・・そっか・・・緊張って・・・こんな感じだったっけ・・・』
だが、経験からそれさえも楽しむ余裕があるようだ。
「お待たせしました♪」
そう言ってテーブルの上に料理が並べられていく。
「お~♪」
「本日は、ミネストローネとキャベツロール、さらに鮭のムニエルで~す。」
「すげぇ・・・本格的だな!」
「フフ。お口に合うか分からないけど・・・」
恥ずかしそうに龍徳を見る。
「良い匂い・・・食べる前から旨いな♪」
「クスクスクス何言ってるのよ。」
「頂きま~す。」
そして、感動。
「う・う・・」
「あれ・・・もしかして・・・美味しくなかった?」
「旨い!・・・なんだコレ!!メチャクチャ旨い!!」
そう言って凄まじい勢いで食べて行く。
「あ~良かったぁ~美味しい?」
「メチャクチャ旨い♪」
「フフ。良かったぁ~♪」
天使の様な微笑みを浮かべた志津音と目があった。
『うわぁ~・・・マジで可愛い・・・記憶が美化されている訳じゃなかったな・・・』
「私も食べよぉ~っと・・・頂きま~す♪ うん!上手くできたね♪ さすが私!」
「マジで感動・・・」
実際涙を流して食べていた。
「な・なんで泣いてるのよ~!?」
「志津音の手料理だぞ!? 感無量に決まってるだろうが?」
「も~う。いつも大袈裟なんだからぁ~♪ でも・・・気に入って貰えて良かったぁ~♪」
「小学校の頃から料理好きだったもんね♪ あの頃も上手だなぁ~って思ってたけど・・・もぅ~プロ級じゃね?」
「クスクスクス♪ 褒め過ぎ! 作り過ぎちゃったかと思ったけど・・・大丈夫そうだね・・・」
「こんな機会二度とないかも知れないから腹が千切れようが俺は食べる!!」
「も~う。馬鹿なんだからぁ~またいつでも・・・」
いつでも作ってあげる・・・そう言おうとして思いとどまる。
4人前以上はあったであろう料理の大半が龍徳の胃袋の中。
先程の会話の後から志津音の様子が違う。
「なぁ・・・以前、話があるって言ったの覚えているかな?」
「えっ? うん。そう言えば言っていたよね・・・。」
「率直に聞くけど・・・もしかして・・・引っ越したりするのか?」
いつもは見せない真面目な顔で志津音を見つめると驚く彼女の顔があった。
「なんで・・・何で知っているの? 健一だってまだ知らないのに・・・。」
「いや・・・何となく・・・それって・・・引っ越さないとダメなのか?」
「うん・・・。ダメみたい・・・。」
「親父さんの仕事か何か?」
「うん・・・お父さんは単身赴任でも良いって言ってくれたみたいなんだけど・・・お母さんが、家族が離れるのは良くないって・・・」
「どこに行く予定なの?」
「横浜になるって言ってた。」
『これも未来と同じか・・・』
本来の人生で、志津音が引っ越した事さえ知らなかった龍徳が高校一年生の時に偶然スキー場で志津音と再会した時に聞いた引っ越し先が横浜であった。
「そっか・・・」
「健一の学校の事もあるから多分、横浜駅の周辺になるだろうって言ってた。」
彼女を見ると今にも泣きだしそうな表情を浮かべていた。
「なら・・・引っ越しても遊びに行けるな♪」
「えっ?・・・」
「どうした? まさか!!引っ越したら二度と会ってくれないのか!?」
「えっ・・・そんな事ないけど・・・でも・・・横浜だよ?」
「たかが横浜だろう?」
「そ・・・そうなの?」
「電車で1時間ちょっとだよ? 全然近いし。」
「横浜が・・・近い・・・」
「ああ近いな。」
龍徳の言葉を聞いてただでさえ大きな目を更に開く。
『そっか・・・良く考えれば中学生は電車に乗って横浜まで行く事なんて無いもんな・・・高校生なら分かる事でも中学生・・・しかも志津音は真面目な子だから・・・それで悩んでいたのか・・・』
「フフ・・・。そっか♪ 横浜って電車で1時間ちょっとなんだ♪」
「おう♪ そう聞いたら近いだろう?」
「近いって言われたらそうだよね♪」
「だから・・・そんなに心配するな♪って言っても受験もあるし大変だよな?」
「そうだね・・・。でもちょっと救われたかも♪」
「なら良かったよ♪ それでいつ頃の予定なんだ?」
「うん・・・多分6月中旬位って言ってた・・・。」
「そっか・・・」
「龍徳君・・・あんまり驚かないんだね?」
「いや・・・そうでもない。けど・・・」
「けど?」
「いつでも会えるって分かったからね♪」
爽やかな笑顔を浮かべて志津音を見ると少し頬が赤く染まっている。
「うん♪ 来てくれるなら手料理作ってご馳走するからね。」
「お~♪ 行く行く!絶対に行く!」
「クスクスクス♪ 絶対だよ。約束。」
そう言って志津音が小指を龍徳に差し出す。
「ああ!約束だ♪」
「ゆ~びき~りげ~んま~ん・・・」
指きりげんまんの歌を一緒に口ずさむが途中で
「う~そついたら~は~りせんぼんの~ます・・・」
「う~そついたら~こ~くは~くする~よ!指切った♪」
「えっ・・・」
「どうした?」
「今・・・」
「今?」
「ううん・・・何でもない・・・私・・・かたしちゃうね!」
そう言って食卓を片付け始めた志津音の頬には赤みがさしていた。
『可愛いなぁ~♪ 癒されるわぁ~♪』
その後も毎週土曜日は健一を踏まえて遊んでいく事になった。
模試も近いので、一緒に勉強する事になった事も楽しい思い出・・・
龍徳は幸せであった。
望むべくもなかった全てがここにある。
そして、運動会の少し前の5月22日に全国模試が行われた。
結果は・・・
「龍徳君・・・いつの間に頭が良くなったの?」
「これでも頑張っているんだぞ?」
「龍兄ぃ~頭も良いんだな!俺マジ尊敬するよ!」
「うん・・・ちょっと驚いた・・・全国687位・・・しかも数学は全国5位って・・・」
「志津音も全国13241位って凄いじゃん♪」
「だよねぇ~俺38297位だし・・・」
「まぁ~それでも上位だから大したもんだ♪」
「マジ?龍兄にそう言って貰えるならOKだよ♪」
『実際2人ともマジで凄いな・・・ある意味俺はインチキみたいなもんだし・・・まぁ・・・数学だけは同じ結果だけど・・・』
この当時は、第二次ビーブームと言われ現在の2.5倍位の出生率だった事を考えると志津音と健一の順位でもかなり頭が良い事が分かる。
何故なら多い時だと100万人以上が受ける模試だったからだ。
「龍兄ぃは高校どこ受ける予定なんだ?」
「あっ!それ私も聞きたい!」
「そうだなぁ・・・青山かな~」
「青山学園かぁ~兄貴なら楽勝だな!」
「へぇ~何で青山学園なの?」
「大した理由じゃないけど・・・笑わないか?」
「もちろん!」
「俺も笑わないぜ!」
「青山なら・・・近いだろう・・・」
「近いって?」
「横浜だよ・・・志津音に・・・お前達に会いに行きやすいだろう?」
「・・・」
それを聞いた志津音の顔が真っ赤になっていく。
「俺・・・マジ感動したよ!最初は引っ越し何て冗談じゃないって思ったけどさぁ・・・決めた!俺引っ越したら勉強もっと頑張って青山学園受ける!そうしたら兄貴と一年間は一緒にいられるもんな!」
「バカだなぁ~健一ならもっと凄いとこ行けるって。まぁ・・・嬉しいけどな♪」
「よっしゃー!燃えて来た! 引っ越し位でウジウジしてらんねぇ~!」
「志津音はどこにする予定なんだ?」
「私は横浜の県立になるかなぁ・・」
「そっか・・・家庭の事情もあるだろうからね。」
「うん・・・。」
「俺には良く分かんねぇ~けど・・・姉ちゃんも青山狙えば良いのに・・・」
「健一・・・お前が大きくなったら分かる時が来るよ。志津音がどれだけお前の事を守ってくれているのかをな。だから・・・引っ越してもお前が姉ちゃんを守ってやるんだぞ!」
「良く分かんねぇけど・・・龍兄にがそう言うならそうなんだろうな・・・分かったよ!」
「オシッ!男と男の約束だぞ!」
「うん!」
「でも!その前に運動会だね♪」
「俺も兄貴と同じ中学校が良かったなー」
「運動会ねぇ・・・」
「龍徳君、運動会嫌なの?」
「嫌って言うか・・・本気でやるとなぁ・・・浮いちゃうのが嫌なんだよ・・・」
「良いじゃん!そんなの関係ないと思うなぁ・・・」
「志津音は俺が全力でやる姿が見たいのか?」
そう言われて想像する。
「み・見たい!龍徳君のカッコいいところ見たいな!」
「俺の・・・」
「カッコいいところ・・・へえ~姉ちゃんがねぇ~」
そう言われて自分の言葉に気が付く。
「ち・違う!そ・そういう意味じゃなくって・・・その・・・」
顔が見ていられない程、真っ赤に染まる。
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