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そこにいる君に逢いたくて。  作者: 神乃手龍
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木村との出会い

毎週水曜日と土曜日にアップします。

作者的には自分で書いていて泣いてしまうような物語だと思っています。

文字総数334000文字で完結迄書き終わっているので、良ければご一読ください。



春休みの期間は、様々な事を試せる良いタイミングだったと思う。

子供ながらにトレーニングメニューを必死に考えたが、30年以上未来の知識がある俺からすれば幼稚かと思っていたのだが、これ以上ない程、理に叶っている練習方法であった事に驚いた。


大人だった頃に昔を思い出すと自分の誇大妄想だったのでは?っと思う程の練習内容だったが、実際に自分で書いたメニューがあったし、それを熟してしまう自分がいるからには疑いようの余地がない。

だが、団地のベランダ側を伝って昇り降りするのは、メチャクチャ怖かった。

出来るには出来るが、正直自分が馬鹿だった事を痛感した。


『怖っ!記憶と違う!こんなに足場って小さかったか!? ヒィィィ~ ここ・・・指だけで支えないと無理じゃんか! ここ・・・まさか・・・跳躍してたのか? うそだろ・・・良く死ななかったな・・・』


ある意味、これも自分の特訓の一環だったと思ったからこそ我慢してやっては見たが、これを当たり前の様にやっていたのかと思うと自分がおかしかったのだと再認識できた。

親が知ったら心臓がいくつあっても足りなかっただろう。


因みに毎日のメニューは

01:00~02:00

新聞配達(5階=階段100段、1棟に付き5ヵ所×10棟で)5000段

※本当は12棟だったが、10棟に変更して貰った。

02:00~03:30

アスファルトでのロードワーク8㎞、砂浜ダッシュ100m×30本、砂浜ジャンプ2㎞、


03:30~04:15

アスレチック内で筋トレ

懸垂100×5、逆さ腹筋100×5、逆さ背筋100×5、逆立ち腕立て50×5、その他


04:25~04:50 帰宅しシャワーで汗を流してから就寝

07:00 起床


といったリズムだ。


昔の俺も今の俺も中学に入ってからは、大好きな親父との釣りにも殆どいかなくなりボクシングジムに通い詰めていた。

2度目の人生も全く同じで、塾をサボってはボクシングジムに通ったのだった。

少し違うのは、成績を上げる自信があるって事だな。



現実では、姉の日野美が、私立の高校に上がり貧乏であった神山家として俺は必ず県立に行けと母親からは毎日の如く言われ続けていた。

だが、俺が受かったのは私立。

しかも超ヤンキー校だ。


暴走族、ヤンキー、ヤクザの息子。

さらに武道に力を入れていた学校で猛者が集まりまくっている。


楽しい思いでがある学校だったし悪友も沢山出来た高校だ。

だが、2度目の人生も同じでは馬鹿馬鹿しい。


そもそも、本来の人生は交通事故でボクシングも水泳も出来なくなった人生に嫌気がさしやる気が無くなったからなのだ。

本来なら間違いなく違う高校に受かっていたはずだ。


何故なら、交通事故の後から俺の中で何かが変わり常に周りに遠慮していた人生が大きく変わっていったからだ。

その頃から周りの友達を見なくても自分の意志で考える様になっていた。


そして、今回は長年生きてきた知識と様々な技術がある。

球技はおろかいくつかの格闘技や勉強のための速読や速記さらには効果的な暗記術。

実際、ジムに行くまでの電車の中で参考書や教科書を読むだけで十分だった。


そして、今回の人生でも、当然金持ちになりたい。

で、4月6日の桜花賞だ!

倍率こそ低かったが、ある意味本命が来たのを覚えている。


2-5の枠連で580円。

そこに俺は貯金していた金と3月の12万を合わせ20万円分、大谷さんに買ってもらった。

当たり前だが、メチャクチャ驚いていた。


が、結果は当然。

「すげぇ~ぞ龍徳! マジビックリしたぜ!」

20万円が一気に116万円となった。

大谷さんには謝礼として端数の6万円を渡したら喜んでいた。


「借金5000万もあるから全然足らないだろうけど良かったな♪」

前回の人生では、そこまで接点が無かったから知らなかったけど案外良い人だったんだな。


次回は皐月賞。

これもハッキリ覚えている。

枠連の倍率より単勝で勝った方が、倍率が高い珍しいパターンだった。


なので、この時は夢で見たと適当な事を言って100万円購入した。

結果は1380円で、1380万円もの大金を得る事に成功した。


この時、大谷さんもちゃっかり10万円買ったらしく本人は大喜びしていた。

が、大谷さんにお願いするのは、ここまで。


次は天皇賞だが、間違いなく万馬券がくる。

そうなるととんでもない金額だ。

間違いなく大谷さんに頼んだらトンずらするだろう。


で、以前から計画していた事を実行に移す事にした。

それは、ジムでの事だ。


この時の俺は、記憶と同じでたかが14歳と思えない程、強かった。

スパーリングパートナーは最低でも8回戦以上でないと俺の相手は務まらない。

実は、2度目の経験と実際の精神年齢によって記憶よりも強くなっていた。


実際、去年、東日本新人王に輝いた長瀬さん(19歳)は、現在ランキング6位のフライ級のボクサーだが、その人とのスパーリングが丁度良かった。


本当はJフェザー級10位の木村さんもいたんだけど、先日、スパーリングで俺の方が強い事がハッキリしてしまった。


「龍徳!手を抜くな!何だその手抜きは!」

勝俣会長の激が飛ぶ。

「はい。」

そうは言っても戸惑ってしまう。


昔は強いと記憶していた木村さんだったが、ハッキリ言って遅いし技術がない。

後だしした俺のパンチの方が先に届く。

と言う事はカウンターが取り放題と言う事。


今では、殆どノーダメージだ。

『あっ・・・また入る・・・。』

スパーの最中に何度もカウンターのチャンスがあるが、どうしても躊躇ってしまう。

その都度、会長から激が飛んだ。


そして、先日木村さんから

「龍徳君!俺と本気でスパーしてくれないか!」

そう言われても“分かりました”とは素直に言えない。


木村さんは32歳だ。

本来ならとっくに引退している歳だが、未練があるらしく今まで辞める事が出来なかったそうだ。


「実は、会社を作る事になってね・・・だけど・・・俺って諦めが悪くてさ・・・こんなんじゃ次に進む事が出来ないんだ!・・・だから・・・頼む・・・俺じゃ無理なんだって・・・君に教えて貰いたいんだ・・・。」


悔しそうにそう言った事が俺の胸を締め付けた。

この歳になる迄、辞められない程、ボクシングが好きな人なのが、痛いほど分かる。

倍以上年の離れた俺に引導を渡して欲しいと・・・


「分かりました・・・では、俺が勝ったら俺のお願いも聞いては貰えませんか?」


「ハハ・・・龍徳君が本気で相手をしてくれるって言うなら! まぁ~俺に出来る事ってそんなにないと思うけど・・・出来る事なら何でも言ってくれよ!」


以前から会長も木村さんの事は気になっていた・・・否、気にならない訳がない。

勝って、負けてを繰り返すボクサーの寿命はとっくに過ぎている。

それでも諦められない木村さんの気持ちが分かってしまうからこそ引導を渡せなかったらしい。


だから、スパーリングとは言え、ヘッドギアを付ける以外は、本番と同じルールでの試合を認めてくれたのだ。


「感謝はここまでだ・・・俺は、君に勝ってボクシングを続けて見せる!」

『凄いプレッシャーだ・・・だけど・・・』


ステップインからのワンツー。

それをサイドステップで回り込み俺は軽くジャブを放つ。


「っ!まだまだ!」

体勢不十分な状態で大ぶりのフック。

『・・・ダメだ・・・』


狙ってくれと言わんばかりの大ぶりだ。

何のリスクもなくカウンターを入れる事が出来たが、俺は躊躇してしまう。

その為、被弾しないものの木村さんのリズムになってしまった。


その時、会長から激が飛んだ。

「アホ!何のためのスパーだと思ってるんだ!ボクサーを侮辱する奴は辞めてしまえ!!」


『違う・・・俺は別に侮辱とか・・・否、間違っているのは俺の方だな・・・』

そう思いながら目の前の木村さんを見る。


『木村さん・・・本気だ・・・。当然だよな・・・』

こんなにも本気でボクシングと向かい合っている人に手を抜く・・・

俺がやられたら?

『そんなものとっくに答えが出ている。』


「木村さん・・・ゴメン・・・ここからは本気で行くからね!」

「ハハ! そう簡単に行くとは思わないでくれよ!」

そして、龍徳のギヤが一段上がる。


ジャブからストレートさらに左フック、右アッパーとコンビネーションを木村が放つが、龍徳は鮮やかに躱す。

「さっきまで・・・ブロックしてたのに・・・これが本気のスピード・・・ゴクリ・・・良いね・・・こうじゃなくっちゃ!」


木村の左に回り込んでいた龍徳が右アッパーを放った木村の死角へとダッキングすると右わき腹がガラ空き・・・そこに右フックを撃ち抜く

「シッ!」

「ぐぅ・・・」

一瞬吐き出しそうになるマウスピースを強引に戻し耐える。


『な・何てボディだ・・・これが中学生の拳か!? だが・・・まだまだ!』

龍徳に悟らせない様に気合で手数を出すが、その全てをいなされてしまう。


『木村さん・・・今までありがとうございました・・・』

そして、龍徳はギアをもう一段上げた。


木村の放ったジャブをダッキングで躱すとジャブを戻すのと同じ速度で懐に飛び込む龍徳。

「なっ!」

「あの野郎・・・やっぱり実力を隠してやがったか!」

会長の目がギラっと龍徳を射る。


そして、飛び込み様に左ボディーを深々と突き刺した。

「グフッ・・・」

距離を取る為に力のないパンチをパーリングで叩き落しながら再び距離を詰め今度は右ボディーを叩き込む。


「グェ・・・」

マズいと思った木村が亀の様に身体を固める。


「そんなチューリップガードじゃダメですよ!」

力の入っていないピーカブー。


そこに強い左を叩き込むと同時に強烈な右ストレートを寸分違わず打ち抜いた。

「グハッ!」

ガードを弾かれ仰け反る格好になった木村が、目線を下げると龍徳の姿がない。


『ど・どこだ・・・』

視線を左下に向けると微かに龍徳の頭が見えた。

『あ・・・あの一瞬で!?』

焦ってガードを降ろそうとしたが、間に合わない。


龍徳の右フックがボディに突き刺さると今度は身体をくの字に曲げた。

苦悶の顔を強引に上げ迎撃しようとするが、そこに龍徳の姿がない。

「な・・・何て速さだ・・・はは・・・これが・・・世界の器・・・」


今度は、龍徳の姿を視界に納める事が出来ない。

そして、既に左へと回り込んだ龍徳の左フックが木村の顎を撃ち抜いた。

「ストップ!そこまでだ!」


ガクンっと膝から崩れ落ちる様に木村が倒れた。

「はぁはぁ・・・会長・・・これで良いんですよね・・・。」

「ああ。良くやってくれた・・・感謝するぞ・・・。」



こちらも良ければ読んでくださいね♪

■「新世界!俺のハチャメチャ放浪記! 記憶喪失の転生者」もアップしましたので宜しければご一読ください

https://ncode.syosetu.com/n0781fy/

月曜日の朝7時に更新します。

■「勇者撲滅! 2度目の人生はハッピーエンドで!」もアップしましたので宜しければご一読ください

https://ncode.syosetu.com/n6920gm/

火曜日と金曜日の朝7時に更新します。11月分まで予約してあります。

■「小さな小さな 大冒険!!」第一部完結

https://ncode.syosetu.com/n6880gm/


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