構築してみよう。そうすれば変わるんだから
家にいる時、目の前に気づいたら変な生き物がいた。
水っぽいというか、ゼリーというか、はんぺんというか、こんにゃくというか……
いくつも例えが適当に浮かぶ。
簡単に言うならファンタジーに出てくるスライム。分かるように言うなら洗濯のりで作るスライムが命を持って動いているみたいな、そんな感じ。ちなみに手のひらサイズ。
目の前でこちらを見ている。目が無さそうだからこちらを見ているか分からないがそんな気がする。
手を伸ばしそーっと触ってみる。
こちらが触ろうとすると近づいてきて手に体?を擦り付けて来る。
なにこれ可愛い。
どれぐらい可愛いかって言うと猫を撫でて喉を鳴らして可愛いってなるくらいの感覚。まぁ、猫飼ったことも飼ったこともないから空想だけど。
まぁこのスライムも空想だけど。
なんて言うか最近空想のし過ぎたせいか、自分で空想したものが見て感じるようになった。任意で消せる。痛みとかも自由に決めることが出来て、触ることもできる。好きなように変えることができる。
例えば先程のスライム。あれを触れないようにしたり、匂いを出させたり、触ったらビリビリ痺れるような痛みを出したりなどなど。
こんな風に色々空想して感覚を感じるのはおそらく一般的に幻覚と呼ばれるのだろう。楽しいが人には見えないから傍から見れば変な人だと思われる。というか何も無いところを撫でてたら普通は変に思われるだろう。
まぁ、人の目を家族以外気にしなくて良い家でいつも空想している。他の人にも見えたら良いんだけどな……それが出来れば猫がいなくても猫カフェができる……かな?
なんで人に見えないかわかるのか。それは外に出かけたときに頭にスライムを出していたけれど、誰も特に反応しなかったからである。
なんで論文みたいな口調になっているんだろう。
他の人にも見えたらそれはなんて言うか実質能力かもしれない。痛みも感じるから気絶させれるかも。拷問とかできる。痛みは感じても肉体的には傷つかないなんてこともできそう。えぐいな
それにしてもこういうのって技名や能力名とか付けたくなるんだよね。何がいいかな。
とりあえず能力名何がいいかな……空想して任意のものを構築できるからファンタジークリエイト?
あ、イマジナリーストラクチャーとかいいかも。でも長いな……ストラクトとかいいかもしれない。
能力名:ストラクト。自身の想像を構築する能力。カッコイイ。厨二病が発症してしまう。不味い不味い。
自分だけじゃなくて他の人も見れたらいいのにな……
とりあえずこの能力が覚醒とかして他の人も見れた時とかに異能を使う組織に所属することになるかもしれない。その時のために一応異能戦闘訓練をしよう。
思い立ったら早速して実行してみよう。
まずは黒い影を作ってみよう。自分自身の構築は難しいのと他の人と話すことが無さ過ぎて人の目も見れない。だからマネキンのような黒い影を作ろう。
自分の身長は168くらいだから大体それくらいを出そう。そうすれば戦いやすくて慣れやすいだろう。
――――よし、構築完了。
どう戦うか……とりあえず『ストラクト』でガラスの破片みたいなものを作る。回転させながら動かして切り刻む。
黒い影がズタズタになった。
おぉーこれは……絶対に人に向けたら即死するやつだ。これは人に当たるようになってもこれは危険だな。
でもかっこいいな……
ガラスの破片みたいなものを飛ばしてズタズタに相手を切り裂く……結構カッコイイ異能力者だな。
そういえば背中に何か当たることが出来るものを構築して背中を押したら自分を動かすことが出来るのでは?
それを応用すれば例え相手にも当たらなくても自分を強制的に動かして突進とかできるのでは?
物は試し、自分の背中に壁を置いたとして、それが動いて背中を押す。こんな感じで構築してみよう。
――――まず動かせるかどうか。背中に自分の身長ほどのサイズの壁を出して、体を押し出す。
おー動いた。背中を押されている感じがする。
あれ?でも自分しか押せないなら服は動かせないよな?でも見た感じ壁に動かされている……どういうことだろうか。
部屋にある出かけるときによく使う肩掛け鞄の下に板を作って上に持ち上げる。
……鞄が宙に浮いた。正確には下に板があるような感覚。
これはもしかして……
――――――――
次の日、俺はあることをしてみようと思った。
当たるような状態でスライムを人の足元に構築する。そうすると道行く人は何もない所に躓いたかのように感じている。そこにはスライムがいる。
実験をしまくった。
その結果、『ストラクト』は自分以外には見えないが痛みを感じさせたりや当たることが出来るらしい。
これは異能力者として完全に覚醒したと呼べるだろう。
これでもし仮に戦うことになっても勝てる。例えば自分に不可視の核爆弾でも壊れないような強力な壁を用意することも可能だろう。切れ味の良い板を用意してズタズタに切り裂くことも可能だろう。
「ハハハハハ!殺してやる!」
男の声が聞こえた。
嫌な予感がしたため全身をストラクトで作った板で囲む。
すると辺りが黒く染まった。
悲鳴が聞こえる。
見ると周りの人達が黒い炎に巻かれ悲鳴を上げている。
無傷なのは俺だけなようだ。
先ほど声がした方向を見ると手から黒い炎を出し、不気味な笑みを浮かべている男が居た。
「俺の炎に焼かれて苦痛をあげてないやつがいるなぁ!ちゃんと悲鳴を上げてくれよ!」
男は走ってこちらに向かってくる。
俺は『ストラクト』を使って大きな壁を作る。
男はその壁に衝突した。
「痛てぇ!なんだこれ!見えない壁があるな!もしかしてお前異能力者か!殺してやる!」
物騒なセリフを吐きながら壁に黒い炎を当てて笑っている。
俺は普通なら混乱して精神がおかしくなるだろう。
だが俺は全くそんな感じは無い。逆に男に釣られて笑ってしまうほどだ。
可笑しいな。全く危機的状況じゃないからだろうか。
とりあえず――――――――
男を構築した球体に入れる。
そしてその球体の中にいるものにこの世のものとは思えない苦しみを与えさせる。
「ギャアアアアアアア!!!!!アアアアアア!!!」
男は苦痛で叫ぶ。なんだよこれッ!楽しいなッ!……こんなに人を痛めつけて気持ちがいいなんて。最大まで苦しみを与えて殺したらどうなるんだろうか。
そろそろかな。
――――――――男は球体の中で少しずつ細かく刻まれていく。
辺りに血が飛び、しばらくして男の叫び声が無くなった。
「ハハハッ!こんな楽しいんだ!」
こんな快楽は他にはない。もっと痛めつけたい。もっと殺したい。
俺は『ストラクト』を使い街に消えていった。
――――――――――――――――一年と数ヶ月後、世界人口の約4割が異能力者となった。
そんな中、俺はこんな話を耳にする。異能力を使い悪事を働く組織があると。
あぁ、俺達のことを勘違いして知られているのかと思いながら街に出向く。
俺達は異能力者になったために人間社会から溢れた、そんな奴らを集めて快楽を求めて街に出没する組織になった。名は『ワールドストラクト』世界を構築という意味を込めてこのような意味にした。
まあそんなことはどうでもいい。俺は異能力で世界の王になろう。
そして殺して殺して殺しまくって快感を求めよう。
君も一緒に行こう。
さぁ、新たな世界を構築しようじゃないか!