筋肉は科学だ_その4
ただ闇雲にトレーニングをしても筋肉は育たない。筋肉の仕組みを理解し、筋肉がどのように使われているかを知れば、より目標に合わせた効率的なトレーニングができるのです。
前回は筋肉の収縮の種類と、より強い力を効率的に発揮する構造を利用したトレーニング法を紹介しました。やめ時が難しいなどの問題点はありますが、普段よりも強い力を脳が引き出してくれるという点ではたいへん魅力的なトレーニングだと思います。
本日理学博士であるも『石井直方』氏著作『筋肉の科学』をもとに、わたしなりの解釈や知識をもって書いていこうと思います。本日は『熱生産』について書いていく予定です。ダイエットをするなら基礎代謝を上げる、つまり身体に熱を生み出してもらって脂肪を燃焼してもらわないといけないよね? という話と、じゃあどうやったら効率的な熱生産が可能なの? といった流れになるでしょう。
基本的に、筋肉は力を引き出せば(収縮すれば)エネルギーを生み出しますが、熱生産という意味ではやる動きによって変化していきます。例えばボディビルダーがコンテストで行う『ポージング』。あれはアイソメトリックスという、動かないにしても筋肉に力を入れている状態なのですが、じゃあエネルギーは生産してないか? と問われたらそんなことはありません。実際あれってすっげー疲れるんですよ。みなさんも試しにやってみてください。ハイッ、サイドチェストー!!
はじめに理論的な部分と、後半に具体的なトレーニングの紹介をします。知識とかはいいから『どうすればいいの?』という部分が知りたい場合は次の段落は飛ばしてもらって構いません。
熱効率的な考えでいくと、有名な研究者として『アーチボルド・ヒル』という方がいらっしゃいます。彼は1922年にノーベル生理学・医学賞を受賞する経歴をお持ちで、身体の熱発生率に関する研究を行っていました。
等張力性条件、ようは普通のダンベル上げなどの運動で、さまざまな負荷をかけ1秒当たりにどの程度熱が発生したかを測定します。これで『その運動をした時の発熱量』は判明します。結論から言えば、発熱量の効率で言えば『軽い負荷』のほうが熱生産効率は高いようです。
人間にはその人が発揮できる『最大筋力』があり、通常は『重量が重くなればなるほど動かすのが難しくなる』、『35%ほどをピークに最も効率のよいパワーを発揮できる』という法則があります。これはスポーツを経験されている方なら無意識的に実感しているかもしれませんね。これらはグラフ化された画像がいくらでも出てくるので、いちど『力-速度曲線』とか『力-パワー曲線』などで画像検索してみてください。
最大筋力から計算した速度やパワーのグラフに、上記の熱生産量の値を加えた時、その人が『そのトレーニングで発揮した全エネルギー』が判明します。このグラフもおおまかに『軽い負荷の時に高いエネルギーを発揮した』という結論が出ますね。ちょっとまってくださいと、重い負荷のほうがいっぱい力を入れているはずだろうと思います。わたしもそう思いましたが、ここで言うパワーは力学的なもの、つまり物理学でいう『仕事』をした量を指します。重くて上がらない、ということは動かしてないのでエネルギーはゼロです、はい。ただ動いて無くても筋肉は踏ん張って熱を生産しているので、熱エネルギー的な意味ではエネルギーを生産していますね。
これらをまとめると、熱を生産したいのなら『重量挙げなどではなくランニングなどの軽い負荷のトレーニングをやろう』ということになります。
さて、具体的にどのようなトレーニングをすれば熱を効率的に発散する=ダイエットになるのか? という話をしていきましょう。
軽い負荷なので、つまりは『ランニング』や『ダンス』、さらに『エアロビクス』なんてものが有効でしょう。有酸素運動などはこのあたりの負荷で行うトレーニングですから、厚着してランニングをする方たちはとてもダイエットに良い運動をしているとも言えます。ただ、やりすぎると水分不足になったりするのでしっかりと水分捕球は行いましょう。ランニングは長時間やるのが普通でしょうから、水分に加えて『ナトリウム・カリウム』なども捕球しましょう。まあ塩分ってことですかね。スポーツドリンクは種類によって糖質が高かったりイロイロあるのでチョイスは慎重に。
あと連続して運動すると、身体にストレスホルモンと呼ばれる『コルチゾール』くんが現れ始めます。これはだいたい1時間以降の運動で出やすくなるようですので、ランニングと言えども1時間を目安にするのが理想でしょう。よく長距離ランナーにある『ランナーズ・ハイ』という現象ですが、これは身体が苦しくなって、我慢して走り続ける身体をどうにかしようとして、脳が脳内麻薬をたくさん分泌することから起こります。まあだいたいβ-エンドルフィンのせいなんですけどね。
ランナーズ・ハイについて深く書くと、これは別に2時間も走り続ける必要はなく、身体が「キツイよぉ……くるしぃよぉ……」ってなってる時に分泌されるヤツらなので、ようはアナタが苦しいと感じるレベルの運動で発生する現象と考えられます。だからまったく運動してこなかった人がいきなり自転車を30分こぎ続けるような運動をした場合でも発生する可能性はあります。アナタにとって『キツイ運動』ってどのくらいのレベルでしょうか?
話を戻しましょう。えー熱効率は軽い運動のほうが良いのですが、必要なのはとにかく『動き続ける』ということです。ちょっと動いては休み、みたいな動きはもはや運動とは言えませんし、ずっと散歩程度のめちゃ軽な運動をすれば良いわけでもありません。まあ、たしかに少しは熱効率は良くなりますが、せめてちゃんとした『ウォーキング』をしましょう。ダンスやエアロビなどもとにかく動き続けることが大切で、足を動かし続ければ自然と汗が流れてくるものです。筋トレって、実は持久系のトレーニングほど汗が流れないんですよね。まあセット繰り返せばブワッと吹き出しますが、それでもダバダバ流れることはない。熱生産にはやはり持久系のトレーニングが良いでしょう。
今まで運動したことがないという方は、とりあえず『ラジオ体操』から始めてみませんか? あれって実はマジメにやるとメチャクチャ汗かきます。そこから適当にランニングをするだけでも立派な運動になりますので、初心者は『とりあえずラジオ体操と速歩き、またはランニング』的な意識からスタートしてみましょう。
じゃあ、痩せたい場合はとにかく有酸素運動をすればいいんだな! 的な結論に達するところでしょうがそこはまだ待ってください。確かにその場の熱生産的な意味ではすごく良いのですが、このシリーズのはじめに書いた通り、強い負荷を交えた筋トレもしないと『リバウンドしやすい』身体になってしまいます。そのあたりの説明は明日に取り上げましょう。今回はここまでにしておきます。
わたしは「読んでくださる方の役に立つ」ような内容を心がけています。健康のようなダイレクトに関係ある内容から、教養的な豊かな知識まで、触れた方が良い時間を過ごせたと思えるような文章を書くことができたのならこちらとしても嬉しい限りです。
ここにあげた知識が、アナタの健康増進、筋力強化の一助になることを願っております。
ひとつの運動に固執しないのも良い筋トレですよ。




