筋肉は科学だ_その2
タンパク質は足りてますか? じゃあ次はカルシウムだね。
心身の健康には『睡眠・食事・運動』の3要素が必要だよ。で、今回からは運動について、もっと詳しく言うと筋トレについて書いていくよ――っというのが前回のだいたいのお話です。健康における筋肉の役割としくみをざっと説明して、とりあえず基本というか「筋肉ってなんだ?」的なことを題材にしたつもりです。
今回はもうちょい筋肉のメカニズムに踏み込んでみましょう。ということで、マッスル関係で凄まじい経歴を誇っていらっしゃる理学博士の『石井直方』氏著作『筋肉の科学』を参考に、わたしなりの解釈や知識をもって書いていきましょうか。
みなさんが想像する『筋トレ』とはなんでしょうか? みなさんが想像する『ジム』とはどんな場所でしょうか? こう、ムキムキマッチョな方が歯を食いしばって「うぉおおおりゃあああ!!!」ってな感じでバーベルを上げている世界? モリモリマッチャな方がプロテイン片手にダンベル上げてる光景? なんだったらその先のボデぇビル会場で爽やかな笑顔にワセリン塗りたくった身体をムキィ!! ってやってる場面が思い浮かんでみたり?
はい、正解です。
まあ、そういう方は重量がたっぷりあるジムで鍛えるのでフィットネスを重要視する場所にはいないでしょうが。最近は健康志向もあいまって、一般的なジムでも老若男女たくさんの方がいらっしゃるようです。つまり、ジムに通うなら今のタイミングが最も良いということですね!(なにが?)
さて、ここでひとつみなさんにお伝えしなければならないことがあります。すなわち『筋トレ』とはいったいなんだろう? ということ。知ってるようで知らない。そんな世界を紐解いてみましょうか。
えー、まず筋肉というのは『収縮しかしない』組織だということを知っておいてください。屈伸運動などで筋肉が伸びていく時、それは"緩む"のではなく"反対側についている筋肉(拮抗筋)が収縮するから相対的に伸びている"というだけです。通称"力こぶ"と呼ばれる"上腕二頭筋"が収縮をして関節を曲げることで『腕を曲げる』という動作を実現させますが、その後に腕をはじめの状態に戻す時はその反対側にある"上腕三頭筋"が収縮します。上腕二頭筋が伸びていくのは、あくまで反対側の上腕三頭筋が収縮する時に引っ張られているだけで、筋肉に繋がっている神経は「筋肉よ伸びろ!」という命令は一切だしていません。筋肉の力のベクトルは1次元方向にのみ働くのです。
身体にはこういった『拮抗筋』がたくさんあります。胸筋には広背筋、腹筋群には背筋群、スネには筋肉がないように見えますが、実はちゃんと前脛骨筋という筋肉があり、拮抗筋は下腿三頭筋があります。よく「戦力が拮抗している」なんて言い回しがあると思いますが、筋肉において拮抗筋のパワーが拮抗している状態は非常に素晴らしいです。逆に、上腕二頭筋がメチャ強いのに上腕三頭筋がメチャ弱だと非常にバランスが悪くなります。相反する筋肉のパワーを100%発揮できないのでケガにも繋がりかねません。筋トレをする際は、ぜひともこの拮抗筋を同時に鍛えてみましょう。
で、みなさんが知る筋肉はだいたい『関節』と繋がってますよね? これは骨格筋と言うのですが、これらは関節と『腱』という形でひっついています。一番有名なのはアキレス腱でしょうか。あそこがブチッといったらもう歩けなくなるのでご注意ください。で、この腱が関節と結びついているおかげで、その筋肉を収縮させると関節が引っ張られて『曲げる』という動作に繋がってくれます。生物はこの仕組みを利用して身体を操っているわけですね。これらのことを加味すると、骨を鍛えることも筋トレに含まれると思います。通常の筋トレでも骨に負荷がかかりますので、実は骨も多少鍛えているのですが、みなさん筋肉ばかりに気を取られて骨に対して栄養を与えてなかったりしませんか? タンパク質だけでなくカルシウムを初めとした骨に対する栄養も与えてあげてください。
骨は一度折れると回復するのに時間がかかります。筋トレは正しいフォームでやらなければ、そのぶん骨に負担が寄ってしまうのでそこのところは注意してください。
さて、筋肉には関節も重要なんだよということでもひとつ。実は筋肉には"得意な角度"というのがあります。その角度になったら一番力が入るという角度なのですが、長年の研究のおかげで、現在ではヒジの筋肉は『110度(伸び切った角度を180度とする)』ほどで最大のパワーを発揮できるということがわかっています。スポーツにおいても応用可能でして、筋肉が最も力を発揮できる角度を意識すれば自然と身体のポテンシャルを最大限に発揮できるようになります。なぜこのような仕組みがあるのかという理由は省略しますが、ザックリ説明すると筋肉の構造的な"宿命"と言えます。肘の筋肉が収縮するとき最も良い収縮の仕方が110度のあたりで発生するという理解でいてください。気になる方は『筋繊維 フィラメント』でググってみてね。
では、次は筋肉の収縮の種類をご紹介しましょう。これは実際のトレーニングなどでも使い分ける収縮なので、覚えておいて損はないかと思います。
『等尺性収縮』
――別名"アイソメトリック"。例としては『プランク』など、身体は動いてないものの筋肉は力を発揮しているという状態。ボディビルダーがやる"ポージング"なども一種のアイソメトリックと言える。あの笑顔の裏では血管がミチミチ言ってるんだろうなぁ。
実は熱効率的な意味では良くないタイプの筋トレ。体力テストで利用する『握力計』などは、このアイソメトリックによって最大筋力を測っているのだが、なにぶんその筋肉だけを計測するという点では難しいためやる度にばらつきがあるのが難点。
『等張力性収縮』
――別名"アイソトニック"。ダンベルやバーベルなど、一定量の負荷をかけて行うトレーニングがこれに該当する。ほとんどの筋トレはこの種類だろう。自分の"持ち上げられる重量"をシンプルかつわかりやすい形で認知できるため目安になりやすい。
筋肉は前述の通り得意な角度があるので、どの角度かによって発揮できるパワーが異なるため正確な筋力計測には不向き。なので「アタナはダンベル何キロ持てる?」的な世間話には使えるが、イコールその人の筋力とは限らないので、自分のほうが重量上げられても(勝った!)なんて思わないように。
『等速性収縮』
――上記と同じく一定の重量を持つが、こちらは一定の速度で動かすという制約がつく。一定の重量を一定の力で動かすと、その収縮速度までも一定になるという法則を利用したものだが、トレーニングにおいて"同じ力を保ち続ける"という動きを求める人は少ないでしょう。それならみんなより重たい負荷を上げられるようにしたいもんね。
これは主に研究機関が対象の筋力を測定するときに利用する方法です。上記の法則を利用して対象に一定の負荷を一定の筋張力で頑張ってもらい力を計測するわけですね。
『増長力性収縮』
――ゴムやバネなど、弾力性がある器具を利用したトレーニングがこれにあたる。筋肉の収縮に併せて負荷も変化してくれるタイプのトレーニングです。ゴムははじめゆるゆるですが、筋肉で引っ張り伸ばされるとびよーんと伸びて張力が増すのでより強い筋力が必要になります。つまり、筋肉が力を発揮するにしたがって負荷も大きくなってくれます。
これがどういうことかというと、持ち上げ時に激しい力の発揮がいらないのでケガ防止にもなりますし、骨格への負担が少ないということは、少年少女たちの筋トレで非常に有用だということです。時系列的に筋力発揮が変化していくので筋力測定ではほぼ行われませんが、トレーニングとしてはケガ防止の意味では非常に有用だと思います。
まあ、結論としてはトレーニングの基本は『等張力性収縮』で、子どもやお年寄りにはまず『増長力性収縮』を活用しましょうってことでしょうか? なので、おじいちゃんおばあちゃんへの誕生日プレゼントはダンベルではなくて、まずゴムチューブとジムの年間パスポートを差し上げるのが上策かと存じます。
健康増進、ダイエット、筋力増強。どんな目的があるにしろ、筋肉はアナタを裏切ることはないでしょう。これからの未来を健康に歩むためにも、まずは筋肉に相談しようね!
わたしは何キロ持てるだろうなぁ……




