論破ってなんだ?????
論破について考えるシリーズ。本日は説得術のつづき。著者が利用したテクニックを心理学的な紹介でまとめてみました。
議論とはなんだろう? 論破とはなんだろう? そんなことを考えつつ、これまで『西村博之』氏著作の『論破力』や『1%の努力』を参照し、わたしなりの解釈を交えテクニックを紹介してまいりました。で、これからも続けていくのですが、著者である西村博之氏はこれらの本について「私が書いたわけではなく、私が話した内容を他人がいい感じにまとめてくれた」的な趣旨の言葉を残しております。だからどうってわけでもないんですけど、くわしく知りたい方は彼についての動画はたっぷりあるのでそのへんを調べてみてください。
これらの本は、彼の知識や経験から、現場で利用できたりこういう手がありますよ、といった内容を紹介している内容ですので、必ずしも万人が利用できる手段ではありません。加えてここでは"わたし"というフィルターを介して紹介しているので分かりづらいとことや説明不足、わたしの理解力不足の部分があるやもしれません。もし本の内容全てが気になった場合は書店にてお買い求めください。
前回は『説得』という分野にプッシュしていきました。今回もそれに通ずるテクニックを紹介していきますが、説得というのは得てして『相手をその気にさせる、そのマインドにもっていく』ことが肝です。いくらテクニックを弄したとして、相手にその気がなければ成功率は低いですし、逆にこちらに説得術のカケラもない状況であったとしても、相手が乗り気ならどんな企画だって通ってしまうものです。まあどんなって言葉は言い過ぎかもしれませんが……。
なので、ここで紹介する説得術はテクニックというよりも、心理学っぽい技術を利用して相手のマインドをその気にさせる、的な『乗せ方』の紹介になると思います。はい、わたしの感想です。
著者が『ニコニコ動画』の立ち上げのとき、他者に説明する場合利用した手段は「シルク・ドゥ・ソレイユ」みたいなものです。という切り出し方でした。
さて、みなさん"シルク・ドゥ・ソレイユ"ご存知ですか? 名前だけは聞いたことがあるかと思います。さて、ここで心理学的な話なんですけど、ある商談をして説得したいという時、まずは相手に『興味』をもってもらうことからはじめる必要があるんです。まったく興味ないんじゃ「ただ仕事で商談してるだけ」ですから、そこに魅力を感じないじゃないですか。そこで『シルク・ドゥ・ソレイユ』という単語をもってくると、なんでアレをもってくるの? と心が動きます。ちょっとした"好奇心"をくすぐるわけですね。
で、シルク・ドゥ・ソレイユってなんでしょう? みなさんはその疑問を持ち出されたらどう答えますか? 「あのサーカスのやつ?」なんてわたしは答えるかもしれませんが、少なくともその単語をいきなり出されたことに興味を持つことでしょう。で、こういうとき人間は不思議と"知ったかぶり"になってしまう傾向がありまして、いわゆる"偉い人"は余計にその傾向が強いそうです。で、そういった心理にかられて「カーなら見たよ」という答えを口にしてしまう人もいたり、つまりは『俺シルク・ドゥ・ソレイユを知ってるよ』というアピールをしてしまうわけです。ちなみに"カー"っていうのは演目のひとつのようですね。気になる方は調べてみましょう。
著者の場合、こういった偉い人の"知ったかぶり"に合わせて『そんなの知ってて当然ですよね?』みたいな体でそのさきの話をすすめるわけです。そうすると(やべえおれ本当はあまり知らないのに知ってるアピールしちゃった。でもここで実は知らないってのもかっこ悪いからそのまま長そう)という心理に誘導されます。こういう心理に至った人は「シルク・ドゥ・ソレイユと言えば"カー"ですよね? あれは素晴らしかったです」と説明すると、知ってる人を装っているので「うんうんそうだな」みたいな態度を取りやすくなります。そうなるともう負のスパイラルですわよ。そっから先の説明もすべて『知ってる』前提で話が進むので、聞かれる度に「うむ、そうだな」と相槌打つマンに変貌してしまうのです。
で、著者はシルク・ドゥ・ソレイユについての説明をします。あれはひとつのパフォーマンス中にあちこちで芸が繰り広げられています。舞台の中心で手品でもやってる人がいて、空中ではブランコがあって、観客席にはふわふわ浮かぶボールがあちこちに散らばって観客が弾ませたりしている……ひとつの時間に複数の演目がある世界において、全てを1度に経験することは人間の脳みそが許しません。ですから「次はアレを見よう」とか「次はこうしよう」のような、同じサーカスの内容なのにもう一度行きたくなる理由が生まれるわけですね。
これはニコニコ動画でも通じることだと著者は言います。ニコニコ動画は『動画』と『コメント』があり、動画を見続けているとコメントに目が向かなくなり、コメントを読んでいると動画の内容が頭に入ってきません。本来つまらない動画は1度見たらソレで終わりなのですが、そこにコメントという機能がついていると、楽しみの種類が増えてなんとなく繰り返し見てしまうということがあるわけです。
これってシルク・ドゥ・ソレイユと一緒じゃないですか? ――と、こんな流れですね。
えー心理学的には『連合』という用語がありまして、おそらくこのテクニックを利用しているのだと思います。例えば新作のスポーツカーを宣伝したい時って、なんとなくカワイイねえちゃんがきらびやかな衣装に身を包んで車に寄り添っていたりしませんか? 車のCMなどはおおよそ"大自然の絶景を走り抜ける"とか"家族でレジャーしていい思い出が出来た"とか、そういった流れで構成されています。これは『車に"カワイイねえちゃん"とか"大自然の雄大さ"などを一緒に関連付けてもらう』ことを目的としています。人間って不思議な生き物で、興味ないものでも『良いもの』と一緒に存在すると、それが良いものに見えてきてしまう心理が働くんですよね。スポーツカーは若い男性をメインターゲットにしていますから、若くてピチピチのねーちゃんを侍らせておくことで、良いイメージを車にもくっつけてもらっているわけです。
心理学っておもしろいね。
ついでに言いますと、シルク・ドゥ・ソレイユといえば誰もが知っているある種の『ブランド』です。で、ニコニコ動画ってシルク・ドゥ・ソレイユと同じでしょ? という流れでみなさんに納得してもらうと、ニコニコ動画を否定する=シルク・ドゥ・ソレイユを否定するとも繋がりかねませんので、余計にニコニコ動画を否定しづらくなるわけです。
これは策士やなぁ。
Tシャツを着用していて「ダサいTシャツだな」と言われた時に「でもこれフランス製だよ」なんて言い返してみてください。なるべく笑いに転じられないような雰囲気で。フランスとファッションはけっこう強いイメージで引き付け合っていますから、フランス製の服を下げるというのはなかなか難しいことです。ここで「フランス製とか関係ないよ、ダサい」と言える人はなかなか少ないのではないでしょうか? その時点で「はい論破」ができると思いますよ?
著者によれば、相手を説得する上で『議論になっている時点で下手くそ』だそうです。人間の心理ってほんとうに面白くて『心理的リアクタンス』というのがあるんですよ。よく子どもが「宿題やれ」と言われたときに「今からやろうとしてたのにやる気がなくなった!」なんて言い返す場面、あるじゃないですか? あれ実は心理的リアクタンスが働いたことによるお言葉でございます。
人間の心理として、自由を奪われそうになるとほぼ"反射的"に自由を取り返そうとしてしまいます。例えば「〇〇しろよ」と言われるとする意欲がなくなりますし、スーパーで『大安売り! 残り〇〇個!』なんて書かれていたら購入意欲が上がりますし、『このあと〇〇が大変なことに!!』なんてテロップの後にCMなんか流されたらその後が気になって仕方がなくなります。友人から「別れたい……」なんて恋愛相談をされて「別れたほうがいいよ!」と熱心に説得したところで「でも、いいところもあるんだよ……」となってしまいます。友人の『"付き合う"という自由』を『"別れたほうがいい"と制限をかける』ことでリアクタンスが発生してしまう。人間ってなんでこうメンドクサイ心理が生まれたんですかね。
説得というのは相手をその気にさせること、つまり人間の心理を巧みに利用することが肝心であると、そんな感じのまとめになるでしょうか。となると重要になるのは心理学の知識になるんじゃないかってところですが、心理学と一言で申し上げても細かい区分けがたくさんあったりして、どこから手を付ければよいのかわからないとお嘆きになるでしょう。
そんなアナタに紹介するオススメの心理学の本としては、まず『影響力の武器』というのがありますね。これは社会心理学研究で世界レベルの知名度を誇る『ロバート・チャルディーニ』氏が手掛けた名著であり、セールスマンが相手に「Yes」と言わせるためにどのような心理を駆使しているかをまとめた本になります。これまでいくつかのバージョンや応用編が出版されていますので、どれか手にとってみることをオススメします。わたしは『第3版』を購入しましたが、これ1冊だけでもものすごい価値のあるものだと思いますよ。
論破に必要なのは論理的な思考だけじゃない。このようにして、人の心を巧みにくすぐる技の持ち主であることも重要になってくるんですね。みなさんも、心理学の世界の扉を叩いてみませんか?
宿題やろーと思ってたんだけど宿題やれって言われたからやる気なくなっちゃったなー(元からやる気ない)




