指で色を塗ろう!
本日も芸術療法のいくつかを紹介。絵を塗ることに技術なんて関係ない! ただ心の赴くままに表現できたそれこそが珠玉の1作なのだ!
以前紹介したように、絵を描くという行為は脳の多くを活性化させ心理療法としても効果的です。今回もこの『芸術療法』について深く踏み込んでいこうと思います。参考にするのは例によって『山脇恵子』氏著作『色彩心理のすべてがわかる本』より、私なりの理解を用いて書いていこうと思います。
これを読む前に、ぜひ前回の『塗り絵を楽しもう!』をご覧いただくことをおすすめします。芸術療法とはなにか? これによってどのような効果があるのか? などといった説明が書かれています。
まず紹介するのは『フィンガーペインティング』です。言葉の通り、指に絵の具をつけて、手や指で思い思いの絵を描く行為です。これは『ストレスが溜まった!』とか『なんとなくムシャクシャする!』などというときにやってみると良いかもしれませんね。普段手を汚して紙にぶつけるという経験はしないので、そういった未経験の楽しみと、手や指を汚すというある種の背徳感を感じられて病みつきになるかもしれません。
加えて、自分の手を『べたぁ!』っと塗り込むようなダイナミックな動きを実現することもできます。身体を使って紙にビンタ一発くりだしたり、だらだらぁっと両手をくっつけて上から下まで撫で回してみたり、子どものころやったどろんこ遊びなんかを思い出してキャッキャウフフしてみたり……心を開放させ(あるいは幼児退行レベルでも良し)己が満足するまで画用紙に思いの丈をぶちまける! ――これはかなりの快感を得られるのではないでしょうか?
具体的な手法を紹介。まず『模造紙くらいの大きな画用紙』と『新聞紙』を用意しましょう。他にも『絵の具』に『パレット』、『水バケツ』に『ハケ』、『雑巾』などがあれば良いですね。絵の具が飛び散る可能性を考え、服装は汚れても良いものにしましょう。
これをやる場合、紙は地面に置くより壁に貼り付けたほうが良いでしょう。まず新聞紙を壁が汚れないようカバーとして貼り付け、そこに画用紙をセットします。貼り付けはテープや画鋲、お好きな方をどうぞ。
画用紙をセットしたら次は下準備。絵の具などの道具類を揃えたら、まずはハケを用いて画用紙を軽く湿らせます。そうすることで、いざ本番として塗り込んだ絵の具がいい感じに引き伸ばされて絵画としての完成度が高まるのです。
さあここからが本番です。手や指に絵の具をくっつけてアナタが思うがままのアートを楽しみましょう!! 前回もお話したのですが、こういった絵を描く時はなにを描こうとか、モチーフはどうとかを考える必要は一切ありません。ただ心の思うがまま、塗り方に技術なんてなく思った通りに色を塗り込んでいきましょう。途中で作業をやめ、ジワリと広がっていく色をただ眺めるもよし、手指が触れた紙の感触を確かめても良し、絵を塗る前にダンスしてみるも良しです。肝心なのは、これは"絵を塗ることが目的"ではなく『己の心を表現することこそが目的』だということ。こういった作業をやっていくうちに、どこか自分の心に感じるものが生まれるかもしれません。描いた絵を眺めた時ふとナニカを感じるかもしれません。その感覚を大事にしてください。そこに現れた色の連なりはまさしくアナタの心を表す鏡となってくれるでしょう。
汚れることに抵抗がある場合は、前回紹介した塗り絵などを試してみるのも良いでしょう。フィンガーペインティングにおいても、まず指先だけに色を付ける段階から初めてもグッドです。それらを繰り返すうちにいつしか心を表現することに慣れていき、気づいたときには顔までカラフルにして画用紙に突っ込んでいるかもしれませんよ?
塗り絵と同じく、やめ時は『満足した時』です。そうしたら、これまで塗りこんできた画用紙を眺めて作品名をつけてみましょう。これもうんうんと考える必要はありません。完成した絵を眺めてなんとなく『感じた』タイトルで良いでしょう。この時「なんか違うなぁ……ちがうんだよなぁ」と感じたときはアッサリ棄ててしまって構いません。アナタが『違うと感じた心』を重視してください。逆に気に入ったのであれば画用紙のすみっこのほうに自分のサインを入れて、裏側にその日の年月日を記入し保管しておこう。発表しても良いですね。オークションで高値がついてウハウハぁ、なんて未来は妄想に留めるとして、まあなくは無い可能性ですからチャレンジしてみても良いのではないでしょうか?
心理学的な解説を入れると、白は『未知』や『完成』、『不安』の象徴でもあります。白い画用紙に対してなにを感じたか? そこにどのような色をぶつけようと思ったのか? などを後から考えてみると、アナタが自分でも知らなかった新しいアナタが見えてくるかもしれません。未知の物に対し色を与えていく好奇心と、不安をかき消すための色付けと、やがて完成へと至る高揚感を覚えたアナタの心は、いったいどこへ向かっていくのでしょう?
塗り絵と言っても、なにもカラフルな世界をつくるだけとは限りません。アジアには古くから『水墨画』というものがあります。白と黒という、たった2色の無彩色で表現する『墨』の世界は、アナタに新しい扉を開いてくれるかもしれません。
また墨には独自の香りが漂います。これはいくつかの香料(龍脳や麝香など)が働いてるためですが、人間は匂いの成分を記憶に強く結びつけます。玄関先に飾ってあるユリの花が、昔亡くした祖母を思い出させる、なんて話もよくあることです。生物学的な話をすれば、嗅覚の神経は『嗅球』という部位で感知され、他の神経とは異なる独自のルートをたどり、直接大脳とくっついている器官でもあります。アロマテラピーがリラックス効果をもたらすのは嗅覚が独自のルートで大脳辺縁系に届き感情に係るため、ある意味では当然の結果とも言えるでしょう。
墨を利用する場合も『新聞紙』でカバーし用紙をセットしてください。筆を利用するので地面に置いて構いませんよ、というかそうしてください。となりに硯を置いて、学校の宿題でやらされた書道の宿題のごとく構えましょう。水を適量含ませ、筆ないしハケを利用して自由に描いていくのです。これもまた己が思うがままの手の動きに身を任せてください。絵画にはアナタの心が勝手に反映されていくだけです。考えたり、ムリに設計しようとしたりしないでください。あらかじめ軽く紙を湿らせておくと、墨がにじんで広がる様も表現できてなお幻想的です。墨を言ってきたらしてみて滲み広がっていく黒の世界を楽しんでみてください。
白と黒が織りなす幽玄な世界、香料が生み出す社寺の景色にアナタの心は洗われていくでしょう。
絵がヘタだとか、苦手だなんてことは関係ありません。むしろそういった意識をもっている人だからこそ、デッサンや造形などに気を引かれることなく思うがままにキャンパスを染めることができるはずです。楽しむことを忘れず、ただ感じるがままに、己の指先を1枚の紙になぞっていってください。やがてあらわれた規則性のない曼荼羅のような模様こそが、アナタがそこに感じて表現した心のそものなのです。
絵を描く時、アナタはどのような心情でいますか? リラックスしてる? 緊張してる? 楽しんでいる? ――それらをすべて目の前のキャンパスにぶつけることが『芸術療法』の肝心な部分。さあ、思い切って画用紙にぶちまけちゃってくださいな。
全身に絵の具を浴びてぇ……そぉれ! ドーン!!
――題名:いっときの過ち




