セントラルドグマ
本日は生命の維持に欠かせない『セントラルドグマ』についてのお話。生命の神秘と一言で表すには収まりきらない生命の神秘を御覧ください。
『セントラルドグマ』。これは英語で[central dogma]となり、それぞれ『中央・中心的な』、『宗教における教義』という意味合いになります。えー、わたしは知らないのですが、なにやら『エヴァンゲリオン』で登場したネーミングらしいので名前だけは知っている、という方が多いと思います。
これは生物学分野の用語で、身体が分子レベルでエネルギーを作るための『約束事』をひとつにまとめた概念です。本日はこのセントラルドグマについて簡単にまとめていこうかなと思います。
まずざっくばらんな流れを説明しますと、セントラルドグマは『DNA』の設計図から実際に細胞が利用するための『タンパク質』をつくる、までの過程を指します。では始めに『DNA』から紹介していきましょう。
まず身体の中には『DNA(デオキシリボ核酸)』がある、というのはみなさんもご存知ですね? あの『2重らせん構造』とかいうふたつの鎖がグルグルとねじったような形になっているアレです。これは生物がその身体を作るための『設計図』に相当します。身体にある全ての細胞にはこのDNAが備わっており、どの身体にも『全身を作るための設計図』が備わっているのです。
ここでひとつ疑問を覚えるかもしれません。たとえば足だったら足をつくるための設計図さえあればそれで事足りるはずです。ただ、身体ははじめ卵子の中に精子が入り込んだ卵の状態であり、そこから分裂を繰り返していくので、細胞の大元をたどればたったひとつの細胞から始まっています。それが徐々に増えていくので、結局のところひとつの設計図をバラバラにして各部位に保存するというのは手間がかかるのでしょう。まあそれはそれとして、ひとまず細胞にあるDNAは全て"身体全体の設計図が備わっている"と覚えてください。
DNAは23本が2対(両親からそれぞれひとつもらうため)、計46本あります。しかし、何度も言いますがこれは単なる『設計図』です。家というのは設計図だけ描けば完成! というわけではありませんよね? そこにはたくさんの大工さんがいて、設計図を元に家を組み立てていく必要があります。生物の身体の中にも、この『大工さん』に相当する物質がいっぱいあるんですよ。
DNAの設計図を参照するために、まず働くのが『mRNA(メッセンジャーRNA)』という存在です。DNAは2本の鎖がグルグルとねじった状態でいますが、転写をするためにはまずこの引き締まった2重らせんをほどいて1本の鎖になってもらう必要があります。これには『メチル基・アセチル基』とか『ヘテロクロマチン構造』などいろいろ踏み込める余地はありますが、ここまで書くと本1冊になってしまうので許してください。
さて、DNAがほつれて転写しやすい環境になりました! そこから『mRNA』がDNAの情報を『転写』する必要があるのですが、そのためにはDNAの『ここから転写を始めてね!』というキーワードを探す必要があります。転写したい部位(つくりたい身体の部位)を正確に知らないといけませんからね。
そこで『RNAポリメラーゼ』をはじめとしたいくつかの『タンパク質』や『酵素』が転写の開始位置を示してくれます。彼らの誘導により、めでたく『mRNA』が転写を開始することができるのですね。すこし踏み込んで書くと、DNAには『アデニン・シトシン・グアニン・チミン』という4つの『塩基』があるのですが、mRNAは『アデニン・シトシン・グアニン・ウラシル』の組み合わせになり、ウラシルがチミンの代替として働きます。理由はまだ解明されていないようですが……。
転写を少し説明しましょう。DNAは普段『水素結合』という弱い結合により2重らせんを構成しています。それがほどけているときがチャンス。mRNAもこの水素結合の能力をつかって、DNAと一度くっつくんですね。さきほど紹介したいくつかのタンパク質がそれを助けてくれます。まるでファスナーを締めるように次々と転写をしていき、設計図の終端までたどり着いたらこんどは離れて、mRNAはタンパク質を作るためにDNAの存在する『核』から離れていくのです。
核膜から出ていく前に『スプライシング』という、mRNAに存在する"いらない部分"を取り去ります。実は、DNAには『98%』の"タンパク質を作らない設計図"が存在するのです。家を作る設計図のうち98%はいらないってどういうことなの? と疑問を持ちますが、それは一概に"本来の設計図の部分を守るため"と思ってください。長い生物の歴史は、他のウイルスや紫外線などから身を守る戦いの歴史でもありました。それらをどうにかするために、タンパク質をつくらない、いわゆる『おとり』になる部分が生まれたのです。ほか、ウイルスに侵入され残念ながらDNA内部にそのままになってしまった部分もあったりするのですが、深く入り込むと1冊の本くらいかかるのでここまでとして、くわしくは『小林武彦』氏著作『DNAの98%は謎』をご購入ください。
さて、スプライシングを終えて核の外に出ると、まずやってくるのは『リボソーム』です。こいつが転写されてきたmRNAの遺伝子コードからタンパク質のひとつまえ的な段階である『アミノ酸』のカギを作ります。
mRNAに転写された遺伝子コードは、3つごとの『コドン』とよばれる集まりによってひとつの『アミノ酸』を指定するための暗号になります。よく健康番組なんかで出てくる名前ですね。深く踏み込みつつもざっくばらんに表現すると、まず塩基とは『分子がいくつかくっついたあるひとつのまとまり』です。アミノ酸はそれらがたくさん連なった状態です。タンパク質はさらにその配列が長くなっていい感じに折りたたまれたり曲げられたりした状態を指します。タンパク質でも小さいものはペプチドと呼ばれます。
タンパク質を作るにはアミノ酸が必要、ということですね。そのために、作られたmRNAはまずリング状になってリボソームにくっついてもらい、コドンを読み取ってもらいます。コドンの『最初の位置』を読み取ってもらい、そこからtRNA(トランスファーRNA)にアミノ酸を持ってきてもらって次々とアミノ酸をリボソームで結合してタンパク質を合成していくのです。tRNAにも『アンチコドン』というものがついており、これがmRNAのコドンとうまい感じに合体できると、アミノ酸がリボソームに残されそれまでのアミノ酸と連結される、というわけです。mRNAに転写する上で紹介したRNAポリメラーゼも、これと同じ様な働きをしてくれます。最終的に『終わり』の部分までくるとリボソームとmRNAはお役御免で解体され、折りたたまれたタンパク質はそのまま目的の位置までフラフラ~っといざなわれていくのです。
いやあ生命の不思議! これって"生物"がふつうにやってることなんですよ。生物の定義として、自力でタンパク質を合成できるか? みたいなものがあるのですが、つまり生物はここに紹介した機能をすべてもっている、というわけです。すげえ! これはつまり、全ての生物が『共通の祖先から進化してきた』ともとれるわけで、いやあ生命の起源についての謎もまた好奇心をそそられますねぇ。ちなみにウイルスはこの構造をもってないので厳密に生物とすることはできません。
わたしたちの体の中では、現在もリアルタイムでたくさんのタンパク質が合成されています。日々の生活をする上で欠かせない働きをしてくれる『セントラルドグマ』。彼ら(擬人化)の活躍に惜しみない称賛と感謝と敬意を示しつつ、みなさんも一生懸命に生きていきましょうね。
Fateシリーズはよく知らないんだけど、知り合いがよく『霊基』がうんぬんって言ってるからこのヘンを参考にしたんかね?




