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つれづれグサッ  作者: 犬物語
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機械には勝手に考えさせとけ

本日は『人工知能』について。機械のスゴさといったらもう、スペシャリストになれますね。

 ボードゲーム業界においては、もはや『AI』は人間を凌駕した、という説もあります。現にチェスはもはやコンピューターにかなわないという空気があり、将棋や囲碁でさえもAIの力は人間のそれをゆうに超えています。ちなみにオセロはパターンが他のボードゲームより少ないのでもはや『勝ち確』のようです。それを逆手に取って『絶対に負けてくれるオセロAI』なるものも登場しているようですが……試しにやってみました。どうあがいても勝ちました。なんかものすごい敗北感を味わいました。検索するとすぐ出てきますのでどうぞお試しください。


 さて、本日はそんな進化を続ける『AI』についてのお話です。




 AIとは『Artificial Intelligence』の略で、日本語で翻訳するなら『人工知能』と呼ばれます。冒頭で書いたように、AIは進化がとても凄まじく、もはや人類には太刀打ちできないのでは? とさえ言われます。しかし、例えば『囲碁』の世界では『手数が多くてAIと言えども人間に勝てないのでは?』とされる時代がありました。それを解説する前に、まずは簡単な『AIの歴史』について書いていきましょう。


 AIという概念が誕生したのは1950年代のこと。コンピューターの誕生により人間には複雑な計算を代わりにやってくれるこの代物に対し『自動的に思考して動いてくれる機械』という発想はすぐに生まれました。そこで当時の人間は決められたルールに基づいて記号を操作をする『形式論理』という考え方を組み込みました。これは厳密な数学の理論により計算をおこおなうものです。ただ形式的な理論を積み込んでも、ただの巨大な計算機がどう人類の役に立つか? という課題がありました。そこで1980年代、新しく『エキスパートシステム』という仕組みが誕生します。これは、ある目的のために利用するAIに対し、専門家が『こういう時はこうする』といった『考え方のルール』を組み込むことです。ただしこれも『人間にとっては当たり前なケースバイケースを事細かく教える』という膨大な作業量があるために多くの課題を生むことになります。一昔前の映画にありがちなロボットの融通のなさはこういった経緯があるのかもしれませんね。


 しかし、現在これらの問題をスッキリ解決してくれる素晴らしい考え方が開発されました。それは『マシンラーニング(機械学習)』というものです。ざっくばらんに言えば『大量のデータを与えてその中から答えを機械に見つけ出させる』というものです。例えば人間が機械に対し『これがネコの画像だよ』とネコが映った風景の画像を提示します。そして大量の画像を機械に与え、その中から、機械に自力で『ネコ』を探し出させるのです。もちろん、判別する方法はプログラミングで定義してからやらせることになりますが……。その手法のひとつとして、みなさんも聞いたことがある『ディープラーニング(深層学習)』というもんがあります。


 ディープラーニングは人間の『脳』を参考にして設計されました。これを『ニューロラルネットワーク』と呼び、ニューロンを模した各所には『入力された情報を評価し出力するか』を判断します。ネコの画像とする条件に合うならその旨を次のニューロンへと出力し、それらが深い層まで続いているので"ディープ"なのですね。機械が正しく判断し学習するためには、この層が深ければ深いほど良く、もちろん与えられる情報が多ければ多いほど的中率もましていきます。


 要は『大量に経験させる』、数こそ全てという感じですね。これは身近にも活用されています。例えばネット通販をしているときや動画サイトを眺めていると『それが好きな人はこんなものも好きですよ』みたいな一覧が表示されていたりしませんか? それはそのサイトにアクセスした人たちがどの商品をまとめて買っていくか、どの動画を続けてみるかなどのデータを収集して、現在見ている人たちに提示しているわけです。このように、人の役に経つAIを作るなら『人が実際にやっているものを学習すれば良いじゃないか』という考え方に適応した結果現在のAIはここまで進化したのですね。




 囲碁のAIはまさにこの手法で人類に打ち勝ちました。人間がこれまでに行った数多くの対戦データを取得し、それらを学習し、どのパターンでどの手を打てば良いのかを判断し、最終的にはAI同士で対戦させさらに磨きをかけました。その数なんと数千万回。疲れ知らずの機械はいくらでも何度でも、そして高速で対戦を行えるという利点がありますね。結果、とうとう人類は囲碁の勝負でAIに敗北を喫することになります。


 ところがAIの進化はそこにとどまりませんでした。それまでのAIからさらに進化したそれは、なんと人間の対戦データを一切参考にせず、ただ単に囲碁の基本的なリールや知識を与えられただけだったのです。これは『モンテカルロ法』という手法を利用しているらしいのですが、要約してまとめると『試行錯誤』といったほうが良いでしょう、数ある選択肢のなかからはじめはランダムにイロイロな手を使い、成功率が高い方法を次第に学習していきやがて答えへの最短ルートを導き出すという手法です。今まではこの部分を『人間が行ってきたデータを取得する』という方法でスキップしてきましたが、今回はそれすらも機械に自らやってもらったということです。そして機械お得意の疲れなき試行錯誤ですね。数百万回繰り返しただけで、すでに以前までのバージョンのAIを凌駕したというのだから驚きです。本当にこのまま機械の進化が進むと、機械の知識が人間のそれを凌駕する瞬間が訪れるのではないかとさえ思います。




 ちなみに、機械が人類の知能を超える瞬間を『シンギュラリティ』なんて言うそうですが、少なくともこれが訪れるにはまだまだ課題が多く残されています。ボードゲームなどの『それぞれの特定分野』に関してはそれぞれのAIが凄まじい性能を発揮します。しかし、たとえば『A宅からB宅を通り、そこからC宅を介してD宅に到着する』などといった計算はまだまだ人間の方がすぐれています。機械の場合はいちいち虱潰しにやるしかありませんからね。ついでに言うと、シンギュラリティがあったからと言って、機械たちが人類に対して反旗を翻すなんて未来もどうかと思います。さきほど紹介したディープラーニングなどの技術は論理計算などによるものではなく、大量の情報を機械にぶちこみ機械がその類似性を評価して「これと違いますか?」と提示しただけに過ぎない『統計的な判断』です。こんなんじゃないかな? と考える機械が、じゃあ「人類に反逆すれば俺たちサイキョーじゃないかな?」なんて曖昧な判断からターミネーターな世界を生み出すとは、ちょっと考えにくいですね。理論的に考察したとしても「人類絶滅こそ正義」なんて結果を得る理論があればだれか紹介してくださいって感じなんですけど。


 閑話休題。いずれにしろ機械の性能はまだ人類のそれには及ばず、それはつまりまだ伸びる可能性がたっぷりあるということです。これからの人工知能界に期待を膨らませつつ、今日もみんなで楽しく囲碁をやりましょう。その時はイロイロな手を試してみてくださいね。最強囲碁のAIによると、試行錯誤こそが全ての知能を凌駕する手段だということが判明していますので。

遠い将来メモリーチップをアタマにぶっ刺すだけで知識を吸収できる未来が来るといいなぁ。

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