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つれづれグサッ  作者: 犬物語
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脳科学者のハイパー記憶術

脳科学者が研究する『可塑性』。その研究に基づいた記憶術を紹介するコーナーです。

 これまで『池谷裕二』氏著作の『記憶力を強くする』から知識を拝借しいろいろと紹介してきました。今回平和に読了しましたのでそれらの知識をわたしなりに要約しまとめてみようかと思います。内容は『犬物語』というフィルターを通してのものですので、もし気になるのであれば著書を手にとっていただくことをおすすめします。




 記憶とはなにか? 脳の神経細胞とはなにか? 著者はそのナゾに挑み、そして『可塑性』にナゾの解明を見出したのだと思います。実際、脳の神経細胞はとてもうまくできていて、そのなかでも『海馬』という機関はものすごく重大な役割を果たしているように思えるのです。


 海馬はすでにご存知の通り、生物の記憶インプットに関する機関です。脳の様々な場所(主に感覚器官や側頭葉)からここに蓄積された情報に『ふるい』をかけ、これは必要だ! と脳が判断した場合にその記憶を側頭葉をはじめ様々な担当箇所に送り込む。文字で説明するとまさに『よくできている』という感じですね。生物という地球上で数億年かけて進化(または淘汰・選択された)した機構はなんとも貴重な存在に思えます。


 脳の神経細胞は電気信号であり、チャネルが開閉(電極の+ーが入れ替わる)することで科学的に電気を生み出すということは前回書いたかと思います。パソコンのような機械設計だと一部が停電したら全体的にシャットアウトされるためにそれぞれが独立していることのメリットもわかると思います。では、これらの回路をより活かすための信号はないでしょうか?


 あります。それは『長期増強』と『長期抑圧』というしくみで、シナプスに電気が入る、その電力を増やしてあげれば良いのです。と、同時に他の余計な記憶を司る電力を弱めると、そのコントラストによって強い記憶がより思い出しやすくなります。これらは『カフェイン』を摂取すると効果的になるようですが、カフェイン自体が興奮作用があり記憶しやすい体調とは逆行するきらいがありますので、どうか『ここぞ!!』という時にご利用ください。ほかにも効果がある物質がある、というか『ありすぎる』物質があるのですが、これは『サリン』です。そう、あの地下鉄サリン事件で使われたサリンです。事件の犠牲者となった方に遠い昔の記憶が蘇るという症状が現れ、それだけならば良いのですが、それが『四六時中イヤでも思い出されてしまう』ため夜も眠れない状況が続いたそうです。強すぎるクスリはすなわち『毒』にもなるんですね。


 この長期増強に対しては『K90』という物質が期待を寄せられているそうです。肝臓が切除されてもすぐ修復されるあの機能によく使われているらしく、海馬にも含まれ記憶に効果的な働きをしています。これを薬品化できたらノーベル賞は間違いないでしょうね。




 記憶についてイロイロと語ってきましたが、おそらく多くの人にとっては『じゃあどうすれば記憶力が良くなるの?』という話ですよね? ということで、今回はどうすれば記憶力が身につくのかという方法と、それが有効な理由を科学的に説明してみようと思います。そのまえにニューロン可塑性に関する用語『ヘブの法則』について書いておきましょう。次に紹介する記憶術の予備知識として役立ちます。


 『ヘブの法則』

  ~ニューロンは記憶するべきか判断するために『ニューロンに送られる科学的電気の強弱』と『どれくらいのニューロンから科学的電気が送られてくるか』を基準にしています。ある一定以上の強さの信号が伝ってはじめて「じゃあ私も協力するよ」と、ニューロンはその電気信号の通り道となり他のニューロンに伝えてくれるようになります。これを『協力性』と呼びます。さらに、ニューロンは『そこまで強くない信号は無視し強いものだけを選ぶ』という基準もあり、これを『入力特異性』と言います。協力性と入力特異性が合体してより記憶にコントラストを生み出すのですね。


 ニューロンの電気を伝う法則はもうひとつあります。それは、あるニューロンが同じ種類の記憶の信号を複数のニューロンから受け取った場合、もし片方が『無視するレベルにしか強くない信号であっても受け取る選択をする』ということです。いわゆるバーターですね。関係あるっぽいからついでに記憶しておくか、みたいな感じです。まぁ柔軟な思考をしやがりますね脳は。では、この予備知識を蓄えたうえで、これからいくつかの『脳科学者:池谷裕二氏が考えた最強の記憶術』をご紹介したいと思います。



・法則性を理解する

  ~脳は『意味のあることを覚えます』。単純に「ドナルド・トランプ」というだけでは覚えません。そこに『現アメリカ大統領』とか『国境に壁』とか『移民を排除』のような理解するために必要な部品があって初めて記憶できるのです。ほかにも『1836547290』という、一見意味のない数列に見えても『奇数は小さい順に、偶数は大きい順に並んでいる』という法則性を見い出せばすぐに覚えられます。連合性を利用した記憶術です。アルゴリズムのように順番を意識した理解の仕方も効果的で、これは『手続き的記憶』にもなるのでいちどやり方を覚えてしまえば、例えば野球からソフトボールなど、他にも応用が効くようになります。



・材料を増やす

  ~こちらも連合性から。一見情報が増えるというのは覚えづらくなる印象があります。しかし記憶というのは情報が多ければ多いほど覚えられるもので、しかも『すくない電力でも記憶することが可能』です。『ワシントン大統領→初代アメリカ大統領』というように繋がりを求めたり、あるいは『語呂合わせ』にも同じような効果があります。



・興味! やる気! 感動!

  ~情動は『扁桃体』という機関が司っています。これは海馬と密接に関係しており、感情がこもった行動はすべて強力に記憶に定着することができます。恐怖を感じた場面や、スポーツの感動的な名場面などは未だに覚えている方も多いのではないでしょうか? これは連合性に関わる記憶で、しかも『エピソード記憶』になりやすいので最も強力な記憶術といえるかもしれません。



・新しい刺激を求める

  ~例えば『旅』。新しい場所に出向くと、脳の『場所ニューロン』が働きその場所を覚えようとします。つまり新しい場所にいる時点で強い記憶力が発揮されるのです。こういった状態の海馬はθ波という記憶に関する波を発してこの章の冒頭に説明した『長期増強』を引き起こしやすくなります。つまり強力な記憶定着を生み出すのです。はじめて行った場所なのにその光景をハッキリ覚えているということはありませんか? これはまさにθ波の長期増強の結果と言ってしまっても良いでしょう。本当に強力な効果です。



・復習はたっぷり

  ~これこそ『真の記憶術』です。記憶とは脳に流れる電気信号だということはすでに言わずとも予想がつくと思われますが、この復習をすることによって、電気信号がより強力に結びつくことになります。私が個人的に尊敬している精神科医『樺沢紫苑』氏によれば、2週間で3度その知識を使えば記憶に定着しやすくなるとされます。海馬は記憶をふるいにかけると言いましたが、海馬が記憶を覚えておく期間はおおよそ『ひと月』ほどですので、その間にその記憶の重要性を脳にたたきつけておけば、海馬もこの記憶は使うぞ! と保存したままでいてくれるのです。記憶の研究をした学者の中でも有名な人に『エビングハウス』という方がいらっしゃるのですが、彼の研究では『2ヶ月にわたり定期的に復習すればその記憶は脳に定着する』という結果があるようです。彼は記憶の分野で多大なる功績を残したので、もし興味が湧いてきたら調べてみてください。興味を持つと記憶しやすくなりますよ?



・寝る・ぼーっとする

  ~これが本当に大事。睡眠不足は記憶のみならず健康全般に対して不利益を生み出すことはみなさんも承知の上だと思います。睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠に分かれ、レムとは『眼球運動』を指します。眠っていても脳の一部が活発に動いているのです。この状態で脳は『レミニセンス現象』という『記憶の整理』をしている状態と考えられます。睡眠中のほうが脳の活動が何倍も激しく、脳がどれほど睡眠を欲しているのかわかるかと思います。



・一夜漬けは試験直前に

  ~あ、勘違いしないでほしいのですが、これは記憶術というよりその場しのぎです。こういった詰め込み教育はキュー型というかロケットペン型というか、とりあえず『4時間ほどでほとんどの記憶を失います』。なので、勉強してなくて危機感を覚えていらっしゃる方は、おおよそ試験の4時間前以降に試験勉強をしておいてください。しかし何度も言いますが『4時間以降にほとんど忘れている』ので、長期記憶を求めている場合は『そもそもこのような手を用いないでください』。記憶するなら『1日6時間』より『1日2時間を3日』のほうが効果的です。気長にコツコツと知識を溜め込んでいきましょう。さきほど紹介したエビングハウスさんの研究のなかでも『指数関数的に記憶は忘れていく』という結果があります。



・俯瞰的視点から試行錯誤する

  ~いきなり細かいところを覚えようとしても脳みそはそこまで臨機応変ではありません。まずはとっかかりとして『大雑把なアタリをつけましょう』。生物がものを認識するとき、たとえば視界などは、はじめ脳内にインプットされている○や△など大雑把な形から入り、そこから個別の認識にうつります。複雑な形をしているものは認識しづらく、これは訓練することでしか鍛えられません。スポーツをする時を考えるとわかりやすいかと思います。野球であれば、まずボールをどう投げるか、どう打つかから始まるでしょう? ルールだって、はじめから『インフィールドフライ』を教えるわけがありませんよね? まずは『ノーバウンドでボールを捕られたらアウトだ』とか『打ったらまずあっちの方へ走れ』とかそんあとこから始まります。そして継続していく事によって、いわゆる○○脳という言葉にあるように、脳がその分野の『概念・考え方・思想』を理解し、もしこうだったどうなんだ? といった問題にも柔軟に対応できるようになるのです。



・幼少期はエピソード記憶

  ~子供の頃はなんでも覚えられたのに、そんな方はいらっしゃいますか? それ、正解です。人間の子どもはエピソード記憶や手続き的記憶が特異です。なので身体の動かし方、服の着脱のしかたなどの学習が速く、言語能力なども子どものほうが吸収が速いです。一時期(今も?)子ども教育が流行ったと思いますが、この理由があるためですね。逆に意味記憶的な能力は弱いので、大人のように理屈や学習を通して学ぶということは難しいのです。つまり、習い事をするなら小さいうちからってことですかね。




 記憶術とは『覚えやすく』『忘れにくく』『思い出しやすい』の3要素です。これらの潜在能力をうまく引き出すことができれば、アナタも立派な記憶術マスターとなることでしょう。わたしも日々読書をして知識を深め、みなさんに日々楽しい知識をご紹介できれば良いなと思っております。みんな、読書はいいぞ?

記憶術を記憶するのも一入。池谷裕二氏は素晴らしい脳科学者ですね。

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