野球のルール 審判編
ただ判定を下せばいいだけじゃない。審判という役職は選手たちよりも早く"ゲーム"が始まり、そして試合が終了し観客が帰った後にも仕事は残されているのだ。本日はそんな審判に関するルールのお話。
さて、今日も野球規則をご紹介するコーナー。今回で最終回を予定しておりますが、最終回としてふさわしいルールといったらなにかなと考えた結果浮かんできたのが『審判』ですので、じゃあ今回は審判員に関するルールプラスαを書いていこうと思います。
試合を行うのはプレーヤーの役目ですが、試合自体を円滑に進めるための責務は審判員にあります。試合を見る観客からすれば、審判とはいわば縁の下の力持ち。アツい試合をさらに雰囲気付けるジャッジの数々は見るものを熱狂させます。とくにギリギリのプレーに関わる審判のジェスチャーは、その瞬間を見ただれもが感動を覚えることでしょう。
公認野球規則とは野球に関するありとあらゆるルールを制定した1冊であるので、もちろんそこには『審判員』にたいするルールもきちんと記されています。そのなかにおいて、審判には"こうするべき"という注釈を交えた文言の『審判員に対する一般指示』というページがあります(133ページ)。この内容をざっくりまとめると以下のようになります。
・公正公平性を保つために、どちらか一方に肩入れしたジャッジをせず、どちらに所属する人物とも親密な交流を避ける。
・自らのジャッジに責任をもち、周囲に流されることなくルールに則った適用を徹底する。
・競技における代表者として、常に忍耐強く、感情を棄てて自制した存在でいる。
とくに大切なのは『ジャッジする位置』にょうです。ボールを見る位置が悪いと、たとえ正しいジャッジを下したとしても観客が納得せず、選手らにも反感を覚えられてしまうことがあります。
審判員はリーグ会長から指名されて試合を『主宰』します。主宰とは『それをまとめ上げること』という意味ですので、つまり審判にはそのゲームが円滑に進行することに対し責任を負うことになります。規律と秩序に対する責任をもち、競技場におけるあらゆる騒動を治める權利と責務を得ます。
競技場のあらゆる問題に対する責任を持つために、審判員はその権力も巨大です。秩序やゲームの円滑な進行のためならば、ルール上表記されているように選手、監督ならびに記者や記録員、クラブ役職員についてさえ自ら指示を与えて動かすことができます。異議は認められず、ましてスポーツマンらしくない行動なんぞ論外であり、そんな方は遠慮なく退場させられます。観客だってグラウンド内に立ち入ったり騒いだりしたら同じこと。審判は競技場内部の多くの人に対して退場させる權利をもっているのです。
審判のジャッジは『最終的なもの』であり、そこに選手や監督の異議を訴える權利はありません。初めは警告を浴びることになりますが、それでも向かってくるのならその時点で退場させることもできます。ただ審判としては試合の秩序という面もありますから、とりあえず相手にジャッジの説明などをして納得して帰ってもらおうという気にはなるはずです。その結果監督がゴネまくったら遅延行為として退場させ、悪態をついてくるというのならその時点で退場させられます。みなさん勘違いされているかもしれませんが、選手たちやコーチが審判に食って掛かっているあの絵面は、単に『選手たちがしかめっ面選手権をしつつ審判の説明を聞いている』だけであって、別に異議を唱えているわけじゃなぁ……ダメだこれ苦しい言い訳すぎる。ぶっちゃけこの時点で退場させられても、選手たちはルール上なにも言い返せないのですよ。
例外として『監督』のみが『ルール通りに訂正することを要請する』權利を持っています。つまり「キミぃ、さっきのプレーについて〇〇ってジャッジしたけど、ルール上は○○だからこっちに訂正してよ」みたいな感じです。これの面白いところは、審判が『たとえ自らのミスジャッジに気づいても監督からの進言がなければスルーされる』ということです。で、審判はミスジャッジしたからといって次のプレーは相手に有利なジャッジをしようとかは考えません。あくまで公正公平性を重視していますので。
もしこのアピールを受け自らのミスジャッジを訂正する場合、他の審判員に対し『アドバイス』を求めることはできます。ただ最終的な決定権は件に関わる審判員ですのでご注意ください。例えばホームへのクロスプレー。実はボールを落としていたことに気づかず球審のジャッジはアウト。当然、攻撃側の監督は上記のルールに従って「ボールを落としていた。これはルール上セーフだよ」とアピールします。しかし球審はアウトになるところを『見た』のでアウトにしたいところですが、たしかにボールをしっかり掴んだのかどうか微妙だった。こういった場合はタイムをかけて、今回の例では球審が他の審判員を集めて協議に入ります。ですが言った通りにアドバイスを受けるだけであり、他の審判は「落としてるの見た。だからセーフだよ」とまで言うことはできないでしょう。あくまでも「こちらからは、キャッチャーがボールを落としているように見えたなぁ……チラッ」みたいな感じになると思います。まあ実際どうなっているのかは現場で耳潜めて無ければわかりませんが。
ジャッジを訂正する場合はそれに合わせて状況を変えなければなりません。例えば、ホーム送球でアウトになったといういざこざのスキにさらに先の塁を陥れていたランナーには「あのジャッジのいざこざが無ければ守備はあのランナーのスタートに気づき、ランナーは警戒して進めなかっただろう」と判断され元の塁に戻される可能性がありますこういった環境整備もしなきゃいけないのが審判の辛いとこですね。しかもミスジャッジをしたということで観客からは罵詈雑言の嵐というね。
審判にもいくつか種類や役目があります。テレビにもよく映る球審にはゲーム中たくさんの役目が乗っかります。アマチュアの場合は『責任審判』を兼任することがほとんどですが、プロの場合は違うようですね。責任審判というのは文字通りそのゲームを行う審判員のなかの責任者で、試合により誰が担当するのかわかりませんが、おそらくリーグ会長からの指名だと思われます。混乱がおき説明が必要になったときにマイクで説明する審判が責任審判だと思えば良いのではないかと思います。
球審はたくさんの役目があります。ボールカウントのジャッジ、試合運行の権限、通常審判が仕切る範囲以外のフェア・ファウルの宣言、没収試合などの裁定、公式記録員に打順を伝える、競技場特別ルールの宣言など、他にも細かいことを言えば、審判はそれぞれ仕切る範囲がありますが、パターンによりあちこちへ移動する必要があります。そういった『審判シフト』を球審が中心となって決めるのです。観戦にいくと見られるのでちょいと審判ウォッチしてみてください。
塁審はタイム、ボーク、ほか選手がボールになにか仕掛けたり不正投球などといった反則行為に対し球審と同じレベルの権限があります。同じ場所にいる必要がある球審と異なり、必要であれば適切な位置取りをし、正確無比なジャッジをするよう心がけます。ちなみに、たまにあるのですがあるジャッジに対して2人の審判がそれぞれ異なる宣言をした場合はすかさず協議に入ります。そこでは球審か責任審判が『どちらが(だれが)より正確にジャッジできる位置にいたか?』などを考慮し、そちら側のジャッジを採用することとなります。
審判の仕事はゲーム終了後にも続きます。試合後12時間以内にリーグ会長に対し、すべての規定違反や報告すべき物事を報告する義務があります。特に侮辱行為や暴力行為に対する報告は4時間以内に行わなければならず、その内容、理由も詳細に記す必要があります。それらの情報を元に、リーグ会長が対象となる違反者に適切な制裁を与えることになります。お金だったり出場停止だったりいろいろですね。ちなみに、それらの通知を受けて5日経っても罰則を実行に写さなかった対象者は、その後罰則を行うまで一切試合に出場することはできません。競技場すら来ちゃダメです。
本日は野球の『審判員』に関するルールを書いてみました。強力な権力があるからこそ、そこに付随する責任は大きなものになります。試合進行のすべては審判の手に委ねられ、問題があった場合はすべて審判の責任です。だからこそ、審判は公正公平なジャッジを下し、競技場の秩序を守り、プレーヤーや観客が熱狂して楽しめるような場を提供する必要があるのですね。
ゲームをつつがなく進行させてくれる審判の皆様に感謝をしつつ、ギリギリのプレイに名ジャッジを下した瞬間に熱狂しつつ、みんなで楽しく野球を観戦しましょう。
もっと『カッコイイ審判』増えないかなぁ……央→卍!!




