【論理パズル】誹謗中傷した方が得ってどうなのよ?【囚人のジレンマ】
機会がある、得があると判断すれば犯罪を犯す。それが人間というもの。
性善説、性悪説。互いに相反する概念ではありますが、これには『そもそも善悪ってなんだ?』という問いかけも必要だったりして、じゃあ善悪の定義をしようっても善と悪ってハッキリワケられるものなの? っていう疑問もあり、なんだかわけがわからぬ状況になってしまうような気がします。
人間は学習する生き物です。世の中の知識、現象、関係などに『善悪』などは存在せず、それらについて人間がいろいろな解釈をつけ『これは善(悪)だ』と定義している。世の中そういうのが多そうな感じがしますね。
言うまでもなく『殺人が悪』でしょうが、じゃあ京都伏見介護殺人事件とかを知って『殺人は悪だ』となんのためらいもなしに言えるかってとそうでもない。わかりやすい善悪はありつつも、その定義は状況、場合によって度合いもなにもかもコロコロ変わっちゃうんだねぇ。
えー現在、あっちこっちのSNSやらなにやらで誹謗中傷というのが流行っているようです。これも状況によって『許される感』がでちゃうのが難儀なものなのよねぇ。いや基本誹謗中傷はアウトよ? でも人間ってのは機会やら大義名分やら免罪符やらがあるとへーきで通常『悪』とされることをやっちゃう生き物なのです。たとえば相手に何かしらの過失があったり言われて当然的な雰囲気があったり、相手が言い返せない状況だったりすると、ね?
心当たり、あるでしょ?
今回はそんな『相手を蹴落としたほうがいい場面』に関する論理パズルをやっていきます。世間では『囚人のジレンマ』と呼ばれるわりとメジャーな分類のそれ、なかなか奥が深いのでここでぜひとも知識を取り入れてください。
ふたりの悪者が逮捕され、投獄されました。各囚人はそれぞれの独房に監禁されており、他の囚人とコミュニケーションがとれません。メッセージ交換などもできません。
警察はふたりを有罪とする証拠がなく、とはいえ軽犯罪違反で『懲役1年』を言い渡す予定です。とはいえ、どうにかして囚人からの証言を得たい警察は、それぞれの囚人にこのような提案を持ち出しました。ここでは囚人Aへの提案を紹介していますが、同じ提案を囚人Bにも持ちかけています。
「囚人Aよ。アナタがもし囚人Bにとって不利な証言をしたなら、アナタは"懲役なしで開放"される」
「その場合、囚人Bは"懲役3年"の刑罰がくだされる」
「ただし、囚人A,Bが両方とも相手に不利な証言をした場合、双方とも"懲役2年"になる」
相手が黙秘したか、証言したかを知る手段はなく、囚人A,Bは「あいつチクッたりしねーよな? いやでも証言したら豚ブタ箱行きを免れる。うーん……」とジレンマに悩まされることになります。
さて、アナタが囚人の場合どのような選択をしますか? 感情的に考えるのもいいですが、ここはひとつ理性的な頭脳をもってチャレンジしてみましょう。論理的思考に基づいた『答え』は用意しておきますが、ぶっちゃけこれ正解なんて人それぞれじゃね? 的なアレなのでアナタのフィーリングに頼ったものでも良いと思います。じゃあシンキングターイム。
アナタならどうする?
ってことで解説。これはカナダの数学者『アルバート・タッカー』さんが考案したとされてますが、彼はアメリカの数学者『メリル・フラッド』、『メルビン・ドレッシャー』氏が考案したソレを懲役刑という例にして出題しただけに過ぎません。いわゆるひとつのゲーム理論です。
上記の文章、わかりやすくするとこうなります。
・Aが証言をする
Bが証言をする
→ A = 懲役 2 年
→ B = 懲役 2 年
Bが証言をしない
→ A = 釈放
→ B = 懲役 3 年
・Aが証言をしない
Bが証言をする
→ A = 懲役 3 年
→ B = 釈放
Bが証言をしない
→ A = 懲役 1 年
→ B = 懲役 1 年
囚人A,Bの間柄は知らんけど、このふたりが相棒的なポジションだったらまあ苦労する選択ですよね
俺たちは仲間を売るつもりはねえ! ――なんて言いつつも眼の前にある『釈放』という選択肢に手が出そうになってしまう。で、このタイミングでこんなことを考えてしまうのです。
「証言すれば開放される――もしかしてアイツもそう考えてるんじゃないか?」 的な感じに。いちど生まれた不安って人間どーしても払拭できないものでね、しかもそういう不安って時間とともに膨らんでいってしまうものなんです。この不安や焦燥感がジレンマを生み出しさらにお悩みモードへ導いてしまうのですが、アナタはどういった『答え』にたどり着きましたか?
これ、論理的思考で考えるとわりとシンプルな答えにたどり着きます。ってのは『Bが証言"する・しない"それぞれ選んだ時の自分の懲役期間』を考えればいいのです。
相手が『証言した』時、自分が証言した時の自分の懲役期間は『2年』でしなかった時は『3年』です。
相手が『証言しなかった』時、自分が証言した時の自分の懲役期間は『0年』でしなかった場合は『1年』です。
相手がいずれの行動をしたとしても『自分は証言する』を選んだ場合のほうがオトクだってことがおわかりいただけるでしょうか?
ああ、もちろんここで「いやどっちも証言しなかったら1年で済むじゃん」というツッコミは理解できます。裏切りは後が怖いぞっていう意見も理解できます。逆に証言をせまる警察が「もしかしたらおまえの懲役3年になるかもなぁ……」みたいな心理的なゆさぶりをかけたり、ウソついて証言させようと追い込んだりする可能性まで言及できちゃいそうです。
いろんな意見があるでしょうが、ここではあくまで『論理パズル』というお題目の上でひとつの回答をご紹介しました。囚人が悶々する難題ですが、これ決してアナタに関係ないお話ではないのです。だってアナタはこの理論をすでに実践しているのですから……っていう例をご紹介しましょう。
マーケティングにおいて広告効果は絶大です。その商品の良し悪しなんて知らないけど、なんかテレビや広告で紹介されてたからといって手にとってしまうことはよくあります。え? そんなコトないって? ――現代社会のマーケティングはアナタを無意識に購買させるスキルをたくさんもってるのですよ。このヘンは行動経済学の基礎でも紹介されてるのでぜひ書店にてお買い求めください。
とある商品の広告をA社、B社が作ったとします。それぞれ原材料、製法、コストなどすべて同じで、ただパッケージと広告デザインだけが異なるとしましょう。そんなの考えられない? ――そんな方はとりあえず『タバコ』をイメージしとけばいいんじゃないでしょうか。
タバコを吸う人が100人いたとして、それをA社B社で争うわけですね。内容がすべて同じなら後は見た目と広告で差をつけるしかありません。アナタなら『広告を出す・出さない』どう考えますか?
A,B社どちらも広告を出さない場合、100人はランダムにタバコを購入することになるためおおむね『50:50』の割合で購入されます。1箱100円なら『5000円』の利益ですね。いやこれは仮定の話なので実際のタバコの値段とか実際に50:50になるかとかそういうツッコミはご遠慮ください。
広告費用は『1500円』だとしましょう。相手が広告を出さずこちらだけ広告を出した場合『80:20』と大幅に売上を伸ばすことができました。つまり『8000円』の売上ですね。で、そこから広告費用を引くと最終的な利益は『6500円』になります。
つまり『相手が広告を出さない場合、こちらは広告を出したら、こちらにとって得になる』ってことです。その逆で『こちらが広告を出さなかった場合、相手が広告を出したら、こちらにとって損になる』とも言えます。
どちらも広告を出せば、やはり『50:50』という購買競争になり売上は『5000円』、広告費用を差っ引き利益は『3500円』になります。
『全体的なタバコの売上』を考えるとどちらも広告を出さないのが最適解ですが『自社の利益』を考えると自身は広告を出し、相手は広告を出さない流れが最も儲かります。
これ、実際の社会にごまんとある例です。これらの企業と囚人の違うところは『話し合うことができること』です。相手に広告を出さないことをお願いすることもできるし、おんぶにだっこな企業相手に「儲かりまっせ」と提案することもできます。その後相手を欺くこともできるし、業界全体のため働くこともできます。
え? それ場合によっちゃ談合になるって? ――いやだなぁ、談合なんてするワケないじゃないですか。これはただの話し合いだよ?
っていう冗談はさておき、まあこういう例がたくさんあるんだってことをご理解いただければ幸いです。ちなみに、囚人のジレンマゲームの戦略とか手法はウィキペディアに紹介されてると思うので興味ある方はググッてみてください。
わたしたちは人間です。常に論理的思考でいられるワケじゃなしに、だからといって論理的思考ができないワケじゃありません。なので、囚人のジレンマゲームを行うとだいたい『だいたい常に協力する人』と『だいたい常に協力しない人』ってのがいたりします。
けど、必ずと言っていいほど『だれもが必ず"1回"は協力する』選択肢を選びます。だってわたしたちは人間ですもの。
さて、今回の論理パズルどのような感じだったでしょう? アナタの身近にこのようなジレンマがあるかもしれません。ぜひ探してみてください。
協力する、しないはべつに善悪と繋げられるものじゃありません。アナタがどのような道を選び、歩んでいくかはアナタ自身が決めることです。どうか後悔することなく、アナタ自身がやりきった顔をできる道を歩んでいってください。
アナタの人生に幸多からんことを。
実際のゲームでもわりとあるパティーンよね。




