書くことで自分を知る
『書く』――この行為は脳内のあやふやな世界をハッキリさせてくれる効果があります。本日は認知行動療法の考え方を元にした、書く力をたっぷり盛り込んだふたつの技をご紹介しましょう。
『認知行動療法』は様々な精神疾患に効果を発揮している療法です。これは以前にも紹介しました『アーロン・ベック』氏が基礎を作り上げた素晴らしい理論で、まず精神疾患を患っている方に自らの『悩み』や『ストレスの素』などのある意味では病原菌になる存在を『認知してもらう』ことから始まります。ほかにも、例えば自らが『躁うつ病』なんだという自覚をもつとか、これを用語として『病識』というのですが、なにをもってもまず『自分がなぜ精神的にツライのか?』をしっかりと『認知』させることが必要となります。人は不安やストレスといったものをしっかりと認知できないから、その不安やストレスをより大きく、しつこく感じてしまうのです。例えば部屋でひとりきりで過ごしているのに妙な音がするとします。怖いですよね? ですが、それが風に揺れた窓は鳴っているだけだと気づくとその瞬間にホッとしたりするものです。しかし周囲にそれといった確証をもてる証拠がないとき、人はより不安に苛まれ、心のなかで(泥棒? だれか入ってきたの? ま、まさか――幽霊!?)なんて考えてみたり。このように、ある現象の正体がなにか分からない、という状況はそれだけで人間の脳をパニックに追いやることも可能なのです。まあ個人的な考えではありますが、幽霊とかは人間のこういった『不安』を払拭するために生まれたんでしょうかねぇ。この現象は幽霊の仕業だ! なんて。まあ、もしそうだったとしたら本来不安を和らげるための存在である幽霊がみなさんの不安をより煽る存在になっているという現状はおいしくない気がしますが……。
閑話休題。本日はそんな認知行動療法の『認知』を大きく前進させ、その後に続く『行動』へつなげてくれる大きな武器を、以前から『メンタリズム』という技を用いたスーパーテクニックにより多くのテレビで紹介され、現在はニコニコ動画やYoutubeなど、様々な媒体で動画投稿をし、企業アドバイザー、大学教授、作家などアクティブに活躍しまくっている『メンタリストDaiGo』氏の著書『人生を変える 記録の力』から引用しつつ、独自に調べた内容も交えてご紹介したいと思います。
これを実践するにはまず『ノートとペン』が必要です。なんてったって『記録の力』ですからね。わざわざノートに書くなんて、と思われるかも知れませんが、ノートに書く、自分の頭の中をノートという媒体にアウトプットするという行為は、実は脳の考えを整理して、その考えをある意味ではコピーする、という作業になるのでとても良い効果があるのです。心の中で実は曖昧になっていた、という心を自覚することはつまり『認知』にも繋がりますしね。ということでやっていきましょう。
なにも認知行動療法は精神疾患がある方だけしかやらない、なんてことはありません。それどころか、日々たくさんの情報にさらされ、たくさんの判断をし、たくさんのストレスと戦う方にこそこういった手法をたっぷり利用するべきだと思います。そのなかで、まずは『自分がやりたいことを見つける』といった内容から紹介したいと思います。なんにしても、まずアクティブに動こうとする『心』は強い味方になりますからね。それを「なんとなくやりたいなぁ……」で終わらせるのは実にもったいない。アナタには無限の可能性が隠されているのですから、この際遠慮なく花開かせちゃいましょう。
まずご紹介するのは『行動ダイアリー』です。これは冒頭の『アーロン・ベック』氏が考案した手法で、要約すると『自分が日々何気なくやっていたけれど、実はとても幸せや達成感を感じていた事を見つけよう』といった内容です。
まずはエクセルなどの表計算ソフトを利用し、日付を横軸、そして縦軸に『1時間ごと』の欄を作りましょう。なんでしたら『行動ダイアリー』で画像検索するとサンプルがたくさんありますので、それをダウンロードしても良いでしょう。
記入するべき内容は以下の通りです
・企画会議、スマホゲーム、スポーツ……などなど、簡潔で構いませんので活動内容を書きます。「何もしなかった」なんてことはありません。例えば『ふとんでグータラしてた』なんてことも『行動』として記述します。なんらかの行動を必ず記入するようにしましょう。
・『達成感』と『喜び』を10点満点で採点します。自分の心に正直になりましょう。主観的に自分が感じたありのままの感覚を10点という幅に納めます。「めっちゃ達成感あった!」のなら『達成感』の欄に10点。「あまりうれしくなかった」のなら『喜び』は3点といったところでしょうか?
――これをすると、アナタが『本当に幸せに、そして充実したと感じていた事柄』を客観的に知ることができます。ペットと遊ぶことが、実は自分にとって最高の時間だったという場合もあるでしょうし、実は何気なく仕事を楽しんでやっていたんだなと気づく瞬間があるかもしれません。ここで重要なのは『達成感』と『喜び』のバランスです。達成感があったとして喜びがなければ「なんか虚しいなぁ……」と感じてしまう瞬間が必ずやってきます。例えばゲームのガチャを100連回しきった!! という達成感を味わっても、そこに『喜び』がなければ、最後には虚しさが残るだけです。その逆もまたしかり。このダイアリーを記録して、このように達成感と喜びの幅があまりにも大きいものに対しては、おそらく控えたほうが良いのかもしれません。
これを日々繰り返していると、アナタの性格まで浮き彫りになっていきます。「あ、実は私は人と接する時間を喜んでるんだぁ」とか「行動的だと思ってたけど、じつは家でゆっくりしてるほうが好きなんだなぁ」なんてことまでわかるかもしれません。まあ、こういったプライベートなことが判明してしまうので、行動ダイアリーは大切な場所に保管しておきましょうね。なんでしたら、某新世界の神が仕掛けたアレのように、ノートを取り出そうとすると着火するみたいなのを仕込んでおいても良いんじゃないでしょうか?
いちおう、個人的に『行動ダイアリー アーロン・ベック』を英語で検索したりなんだったりしてみましたが、同じような表が見つかりませんでした。一応それらしいものを見つけはしました。『活動ダイアリー(Activity Diary)』というものですが、これは上記の『達成感・喜び』を省いたバージョンですね。アメリカではまたテキストの形態が異なるのか、それともどこかにDaiGo氏のオリジナル要素があるのか、はたまた私が個人的にもっと調査しろという話なのか、まあそれは定かではありませんが、ひとまず自らがした『行動』を日々記録するというのは、ある意味では自分はこういう人間だという『アイデンティティ』と、実際の行動の『差や矛盾』を教えてくれたりするのでやるに越したことはないかもしれませんね。
『ACTバリュートレーニング』を紹介しましょう。この『ACT』というのは日本語訳すると『受容とコミットメント療法』となります。要約すれば『自分の心との付き合い方を身につける』ということ。それのバリュー(価値)ですから、つまりは『自分の価値観を見つめるトレーニング』とすれば良いでしょう。
たとえば、アナタが『仕事』に求める価値観とはなんでしょう? 給料? やりがい? その会社の将来性? 人脈? ――人それぞれ価値観がありますね。これも記述するわけですが、例によって『ACTバリュートレーニング』で画像検索するとそういったサンプルがたくさんあるでしょう。
このトレーニングには、以下の要素の『価値観』を記述します。さらに自分にとっての『重要度』と『成功度』も10点満点で記述しましょう。
・家族 ―― 家族とどのような関係を築きたいか? 例えば、自分は弟に対しどのような『兄』になりたいだろう? これは家族親戚に対して意識しよう。
・パートナーシップ ―― 自分はどんな『恋人』、『夫』、『妻』でありたいのか? どのような恋人関係、夫婦関係でありたいか?
・親としての責務 ―― アナタの理想とする『親』とは? 自分はどのような『親』になりたい? 子どもにどんな『親だ』と思ってもらいたい?
・社会関係 ―― 親しい人、親しくない人、友人とどのような関係でありたい? どのような人間だと思ってもらいたい?
・キャリア ―― どのような仕事をしたい? 自分にとって重要な仕事は? 仕事においてどんな人間関係を築きたい? 仕事を通して達成したいことは?
・個人的成長 ―― 人間としてどう成長したい? どんなスキルを身に着けたい? 自分にとって『学習』、『訓練』のもつ意味は? 知りたいことは?
・娯楽・楽しみ ―― 本当に楽しめることはなんだろう。遊び心を刺激してくれたり、リラックスさせてくれたりするのはなんだろう?
・精神性 ―― 理屈抜きで『スゴイ!』と感じるような物事はなにか? それとどう関係していきたいか? アートや自然、著名人など候補はたくさんある。
・市民性 ―― 自分が所属する組織、集団、あるいは国に対しどのような貢献がしたいか? その集団においてどのような存在でいたいか?
・健康 ―― 自分の身体の健康はどれくらい重要だろうか? 身体をどうケアしていきたいのか? どんな体調を手に入れたいのか?
先程の『行動ダイアリー』と同じように、自分に正直になって、ありのままの心を記述してください。他人からの評価なんて気にしてはいけません。アナタが「子どもはいらない・だから親としての責務は必要ない」と感じるならそのまま記述してください。その逆もしかりです。他人からすれば顰蹙を買ってしまうような内容でも、自分の心がそう感じるというのならどんどん書き込んでください。例によって着火装置を仕込んで机の引き出しにしまっておきましょう。
その後、それらの要素に『重要度』を10点満点で採点します。順番にしなくても良いです。これとこれとこれが9点というのも可能ですし、これとこれとこれは0点ということも可能です。これも自分に正直になってください。子どもが必要ないと記入した場合、その『想いの強さではなく親としての働きの重要度』ですので、この場合は「0点」とするのが良いでしょう。
この表はただ書いたら終わりではありません。その後1ヶ月ほど時間をおき、またこの表を眺めつつ『この1ヶ月、ここに書いた想いに見合った行動をとれていたか?』という成功度の評点をしましょう。ここで更に重要になってくるのが、この表を見返した時に『自分の価値観に変化があったかどうかを見る』ということです。価値観というのは日進月歩で変化していくものです。衝撃的な出会いだって充分にありえます。そういった場合はそこに修正してみるか、欄がなければ新しい表を作ってください。それらを保存して眺めてみることで、過去から自分がどのように価値観を変遷させてきたのかもわかります。
「へぇ~、あのときの私ってこう考えていたのかぁ」 ――なんてことをつぶやく日が来るかも知れませんね。
英語で検索してみても『What's ACT?』みたいな動画や画像ばかりでこれについて説明しているものが見つかりませんでした。ただ調べてみるとすごくたくさんの欄がある画像がたっぷりあったので、おそらくこれは簡易版、もしくは入門版だったり、さらに研究が進んでフォーマットが変化した可能性もありえますかね。なんにしても、これらの価値観を自覚すればその後の人生の目的や優先順位は判別しやすくなるでしょう。
さて、本日は『自分がやりたいことを知る』というテーマに関した技術をご紹介しました。メンタリストDaiGo氏は数多くの著作を誇り、常々『使える』手段をみなさまに提供しています。もしこれらのお話を読んで面白いと思っていただけたのなら、ぜひ書店にて『人生を変える 記録の力』を手にとってみてください。
アナタが本当にやりたいこと、見つかると良いですね。見つかっている人はおめでとうございます。
アナタがやりたいことはなんですか?




