音楽をつくろう!
マリンバ奏者として有名な『フランソワ・デュボワ』氏の著作『作曲の科学』から、今回は音楽をつくるための第一歩的な話をしようと思います。
音を楽しむ、そう書いて『音楽』と読みます。本日は『フランソワ・デュボワ』氏著作『作曲の科学』から、以前に引き続き、今度は基礎的な音楽理論をご紹介しようと思います。著者に関しては前回ご説明しましたのでそちらを参照ください。
著者は作曲を『足し算と掛け算』としました。まずはこのうちの足し算について書いていきます。
足し算とはすなわち楽譜の横軸を表します。みなさんも学校で習ったように、楽譜は左から右に時間が進んでいきます。そこに『音符』という、どの音階の音を鳴らすかというサインを置くことでその時間軸にて音が鳴ります。それを連ねていって、時間の経過とともに美しいメロディーが語られる。これが著者が説いた『足し算』の考え方です。
さて、ここでひとつ問題があります。その音、どの音ですか?
いえ、決してバカにしたとかそういうわけではありません。たとえば楽譜には横に5つの線が並んでいますね。これの下から2番めと3番めの間に音符を置くと、だいたいの方は『ラ』を想像するかと思います。しかしこれは『ラ』ではありません。これをラとするにはまだ足りない要素があるのです。
『音記号』の存在です。
音記号とは、楽譜を書く上で『このラインのこの音が○ですよ!』と指定する記号になります。有名なのは『ト音記号』ですね。というよりは、音楽に一生縁がない方はこの記号しか知らないと思います。小説家になろうでは環境文字ということで表記できませんでしたが、まあ、楽譜の端っこにあるグルグルしたヤツだと思ってください。
『ト』音記号ということで、これは記号に書かれる●の位置が『ト』の音を表します。トです。ドじゃありません。西洋音楽じゃドレミファ~でしょうが、日本にもちゃんとした音階を表す言葉があるのです。それは『ハ・ニ・ホ・ヘ・ト・イ・ロ・ハ』。ハがドに対応してます。え? これってイロハニホヘトじゃん。なんでハからはじまるの? という方いたらたいへん鋭い質問です。昔の音階は『イ』から始まっていたのですが、時代を経るごとに変化があり、現代ではドの音を基準にしましょう、ということになっています。詳しい歴史は私も詳しくないので省きますが、知りたい方は西洋音楽史を調べてみてください。ドレミ音階の生みの親『グイード・ダレッツォ』から中世音楽をたどっていけばどこかで見つかるはずです。
さて、この音記号を置いたことによって音符の『高さ』が決まりました。じゃあ弾き始めましょうかってところでちょっとまってください。このまま弾き始めるとすると、では音符を4つ並べたとしてどういったリズムで鳴らしていきましょうか? たんたんたんたん? たん、たん、たん、たん? たたたた?
そうです、こんどは『速さ』を決めなくてはなりません。ここで用いるのは『拍子記号』と『速度記号・メトロノーム記号』です。
まず拍子の説明からいきますか。音楽はけっこうな長さがありますね? 5分とか、短くても1分以上は確実でしょう。クラシックなんかをフルでやれば普通に1時間なんて超えていきます。そんななかで区切りのない5つの横棒をただずぅ~~ッと追っていくのはプロ演奏者でも目が痛くなると思います。そこで、楽譜には『小節』という小さいまとまりを作る工夫が生まれました。みなさんも音楽の授業中はそれを意識させられたかと思います。だいたい4小節で区切って下に移るのが定番ですね。小中学校の音楽の教科書はだいたいそんな作りだったかなと思います。その小節のなかに『置くことができる音符の数』を指定するのが『拍子記号』です
先程紹介したト音記号の左横に、なんか分数が書いてあることに気づいたことはありませんか? というより音楽の授業で習ったことあるでしょう? 3拍子とか4拍子とか……。まあ分数で理解したほうがわかりやすいのでそうしましょう。まず4分の3拍子というのがあります。これは『4分音符』が『ひとつの小節に3つあるよ!』という記号になります。8分の4拍子ならば『8分音符』が『ひとつの小節に4つあるよ!』ということ。2分の4拍子なら『2分音符』が『ひとつの小節に4つあるよ!』ということになります。これで横軸の『整理』がつきました。こんどは具体的に速度を決めていきましょう。
速度記号は言葉通りに速度を定めるための記号です。代表的なのはアンダンテ(Andante)やモデラート(Moderate)あたりでしょうか。それぞれ『歩くような速さで』や『中くらいの速さで』という意味があります。
いやちょっとまってくれよと、そんな曖昧な指標で分かるはずねーだろという言葉があちこちから聞こえます。そうですね。わたしもそう思います。まあプロの方は違うのでしょうが、私のような素人ではハッキリとしたリズムがほしい所です。
そこでメトロノーム記号の出番です。これは、楽譜の一番最初の、ト音記号や拍子記号の分数が書かれている少し上に書いてあります。ある音符を書いて、それを『=自然数』という法則のもと書きます。たとえば『♪=60』などですね。もしかしたら音符記号がバケてるかもしれないので漢字表記にすると『8分音符=60』という形です。この場合は『8部音符を1分間で均等に60回鳴らす速度にしてね』という意味合いになります。1分で60回なのでつまりは1秒で1回ですね。
これで『速度』も『高さ』もバッチリです。おそらく著者であるフランソワさんも手放しで喜んでくれると思います。では曲の『足し算』ができたということで、さっそくみなさんで作った曲を鳴らしてみてください。
いい響きですね。しかしどこかものたりなかったりするでしょうか? ではもうひとつ、こんどは『掛け算』をやってみましょう。
やりかたは非常にシンプルです。ただ『同じ時間軸に複数の音を鳴らす』ということですね。応用編として、同じ時間軸に鳴らそうとしていた音の『一部をあえて次の時間軸にズラしてみたり』、『非常に短い時間で連続して鳴らしてみたり』することも素晴らしいでしょう。とはいえこの掛け算。注意しなければならないことがひとつあります。
音を重ねると『ヘン』になるものと『良く』なるものがあるのです。例えば『ドミソ』。これはみなさん普通に『良い音の響き』だとわかるかと思います。では『ドレミ』を同時に弾いてみてはどうでしょう? ――ちょっとひねくれた方を除いて『素晴らしい! 美しい! 完璧だ!』と答える方はいらっしゃらないと思います。
では、美しく聞かせるためのテクニックがどこかにないでしょうか? 任せてください! 長い音楽の歴史上、それをバンバンやってくれた方はたくさんいらっしゃいます。そしてこれからご紹介する『対位法』に関しては、ひとまず「バッハさんすげぇ」と言っておけば通っぽく思われること間違いなしです。
音階には良い響きに聞こえる法則がいくつかありますが、その代表的なものが対位法だと言ってもさしつかえないでしょう。これは音楽を志す方でしたら基本中の基本(でも使わない、なぜだ)とされる素晴らしい技法です。率直に説明すると、とりあえず、ある基準の音から『3度・5度・6度・8度』離れた音を重ねると良く聞こえるとされています。
おっと、急に『度』なんて言葉が出てきましたね。じゃあ説明します。
簡潔に言えば『音をどのくらいずらすかの差分』と考えてください。1度であればそのまま、2度でひとつズレます。なので3度はド→ミになり、5度であればド→ソを表すことになります。わかりやすい言い換え方をすると、つまり『ド』を基準として響きが良くなるとされる音は『ミ・ソ・ラ・ド』ということになりますね。そして2度、4度、7度の『レ・ファ・シ』はよろしくないとされます。
これでふたつの音を同時に鳴らす美しさを提供することができました。しかしこれでは現代音楽らしい『華』がないですねぇ。じゃあ『3和音』の紹介をしましょう。
端的に言えば、さきほどの『ドミソ』そのものです。『レファラ』『ミソシ』……これは数ある和音のひとつの表現であり、対位法もそうですが、音楽の世界は深いのでここの説明では言い切れない世界がたくさんあります。しかし、まずはシンプルに考えて、和音とはおおむね『ドミソ』のような集まりのことなんだな、と思っておいてください。
ただしここも一筋縄ではいきません。とりあえずここで『半音』の説明をしましょう。
ずっと『ドレミファソラシ』の7音で説明していますが、実は音はすべてで『12個』用意されているのです。まずみなさんピアノを想像してください。想像できないかたはこめんなさい。ピアノには白い鍵盤と黒い鍵盤があります。この黒い鍵盤は楽譜に表記できない『隠れた音』です。しかしそれでも表記する方法があります。例えば『ドとレの中間』にある音を出したい場合は『ド#』か『レ♭』と書きます。それぞれが『半音上げる』と『半音下げる』という意味になります。
半音とはなんでしょう? ここは深く考えずに『となりの音との差』と考えてください。ここでいう"となり"とは、この隠れた音も含めてです。なんでこのような説明をするかというと、この『和音』というのは『基準の音(根音)から4半音上げた音と、そこからさらに3半音上げた音』を奏でる音だからです。2半音で『全音』と言うので、『根音・2全音上・1全1半音上』ということになりますね。
『ドミソ』の例でいきます。『ド』を基準(根音)として、ミは『ド#・レ・レ#・ミ』と2全音上がっています。そしてソはそこから『ファ・ファ#・ソ』と1全1半音上がっています。これで正しいことが確かめられました。すべての『3和音』の基本はこの『根音・2全音・1全1半』のルールがあると考えてください。
ここでは基本のさらに基本、音楽の世界に触れ始めた方たちが知る事柄をまとめてみました。どうでしょう? ちょっと作曲に興味をもってきませんか? なんだったら今からでも白紙に5線を引いて書き始めてみるのも良いかも知れません。
音楽とは楽しむもの。それは聴くにしても歌うにしても演奏するにしても、そして創るにしても同じことだと思います。世の中の音楽に関わる方たちは、これからも楽しい気もちでこれからも音楽の世界を歩み続けるでしょう。私もね、気持ちよく音楽を聴いて、犬と歩きつつ歌を歌って、犬に不信な目を向けられる毎日でいたいものですね。
散歩中に熱唱する姿。我が家のわんこはもう慣れたようです。