いまいちど書き留める『影響力の武器』
ちょっと個人的に忘れてきたかな? と感じたので、本日は思い出しがてら『ロバート・チャルディーニ』氏の『影響力の武器 第三版』にありました3つの商売テクニックについて書いていこうと思います。
アナタは騙されやすい人ですか? それとも頑なに心を開かない人ですか?
世の中は資本主義です。つまりお金を持っている人が正義です。いやそんなことないか。まあそんな議論はさておき、世の中はたくさんの商売が存在します。物を売ったり買ったりする世の中です。しかし、そこにはお金というものが必要で、商売人はそのお金を手に入れるためにたくさんの物を売っているわけです。
けど、ただ売ってるだけじゃ完売はしきれないでしょう、世の中は競争です。自分だけのオリジナリティーというのは稀でして、必ずどこかに競売相手がいるというものです。ですので相手よりも売れるように、たとえばより安くしてみたり、相手に対するサービスで差をつけてみたりと色々考えるわけです。しかし、そういったなかでもアタマが切れる方がいらっしゃいまして、そんな人はアナタの『心』をうまく操り、アナタに「買います!」と言わせるのが上手な人間もいるのです。
ウソだと思うのであればここから先の話を読む必要はないでしょう。ブラウザバックして他の小説を読んだほうがアナタにとって有益です。ただほんの少しでも心当たりがある方であれば、この先の文章を読む価値はあるかなと思います。
これは『ロバート・チャルディーニ』氏の『影響力の武器』にて紹介された手法であり、現在でも多くの企業にて利用されている『相手にYesと言わせる心理術』です。アナタが知らず知らずのうちに「Yes」と言わされないように、これらのテクニックについては認知しておいたほうが宜しいかな、と思います。
『ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック』
――さて、アナタはスーパーに買い物にやってきました。どうやらそのスーパーでは『新鮮な野菜』フェアをやっているようで、たしかに見た目が良い野菜がズラリと並んでいます。しかしどこに秘密があるのかどれも少しお高いらしく、アナタはちょっぴり躊躇しています。
と、それを見ていた店員さんがアナタに売り込みをかけてきました。「どうですか? この大根」――そういえば今日はおでんを作りために大根を買うつもりでいたんだと、アナタは思いました。「生産地が丹精込めてつくった大根でして、この季節では畑一面分も収穫できないような代物なんですよ」――それは間違いなく良いものであるでしょう。できればおでんの具にしたいものです。
と、そこでアナタは大根の値段を目にしました。『500円』。これはいかに良い大根と言えど、さすがに1本の大根で500円を使うのは、と思います。
そんなアナタの態度を見た店員さんは難しい顔をしました「うぅーん、やっぱり高いですよねぇ……けど、ほんとうに美味しくて、生産者さんもぜひともご家庭で食べていただきたいと思ってるんですよ。ですから……よし!」
と、店員さんが両手をパンと叩きました。
「これ150円にするよ! もってって!」
それはいい提案です。500円もする大根を150円で購入できるだなんて。アナタは迷わず大根を――まわりの100円の大根を気にもとめず――手に取りました。
――まあ、ちょっとストーリーチックな感じも否めませんが、こういった『流れ』はスーパーに限らず多くの商売で存在します。まさか、そんなコトありえないと『思っている人ほど』こうなりやすいのが現状でもあります。
ドア・イン・ザ・フェイスは『返報性の原理』を利用しています。返報性とはつまり『親切されたら親切を返さなければならない』という心理のことで、これはだれにも存在しうる心理です。アナタにも『してもらったんだから返さなきゃ』という心が働くことは日常的に存在すると思います。Web小説を書いている人であれば、たとえばコメントを『戴いた』ので返信するとか、ツイッターなどのSNSだったら、自分のつぶやきに返信してくれたアカウントに逐一コメントを寄せるとか……返報性は日常にくっついている心理学です。
これの恐ろしいところは『親切してもらったのだから、親切し返さないといけない』というある種の義務感に襲われるということです。これが何を意味するかというと、親切とは『相手に損をさせ自分が得をした』状態を指します。スーパーで言うならば、店員さんは「150円でいいよ!」と、350円ぶんの損を選択しました――と、アナタの心は無意識レベルで感じます。ですので「親切を返さなきゃ!」という心が発動し、つい「買います!」と言いやすくなってしまうのです。ちなみにですけど、現在は農協という組織がありますので、ここまで平均値から逸脱した野菜はそうそうないと考えたほうが良いでしょう。商売の世界にはあらかじめ値段を高く設定し、値引きしたよ! という『てい』で標準価格を見せつける手法をする輩もいます。
まあ、例に上げた大根が実際どのような値段が適切かなんて、アナタの胃袋に入ってしまえばだれにもわかりませんけどね?
『フット・イン・ザ・ドア・テクニック』
――先程は『妥協し(たと見せかけ)て相手に譲歩をさせる』というテクニックを紹介しました。次は『あらかじめ相手にYesと言いやすくなる舞台を整える』という手法をご紹介します。
人間には『一貫性の原理』という、これまたメンドウな心理があります。これはいうなれば『言ったことは最後まで貫かなければならない』という心理で、他者に「あいつは言葉と行動が矛盾している」という評判を恐れるために起こる心理です。面白い研究をご紹介しましょう。
ある研究者がボランティアを自称し住宅地をめぐり、全世帯に『安全運転者になろう!』という小さなシールを張ってほしいという依頼をしました。ほんの『ささいな依頼』です。それから2週間後、同じ家を訪れて『お宅の庭に安全運転についての大きな看板を置いてほしい』という依頼をしたところ、多くの方が「Yes」と答えました。ちなみに、2周間前に『小さな依頼』をしなかったご家庭の方はほとんど「No」だったそうです。
小さな頼みをすることで、後々の大きな頼みを聞き入れやすくするという心理テクニックは『相手を一度受け入れたのだから、ちょっとしたお願いだって受け入れなきゃ』という心理を見事に突いています。上記の実験の場合は『安全運転に関する主張をしたのだから、それに関するお願いを断れるはずもない』という心理です。人間の脳は『矛盾』を嫌います。もし、ここでNoと言えば、過去自らがやった『安全運転』に関する行動に矛盾が生じるので、ここは「No」という選択肢が自然と隠れてしまうのですね。
もっと深く『一貫性』を知りたい場合は『コンコルド効果』について調べてみてください。
『ロー・ボール・テクニック』
――こういった「Yes」と言わせるテクニックというのは、その商品が高ければ高いほどアナタの懐に大ダメージを与えてきます。特にこのテクニックは、アナタの懐をもぬけの殻にしてしまうことでしょう。
例として、アナタは車を購入するためにディーラーを巡っています。すると、同じ車種にも関わらず10万円ほど安いお店を見つけました。車という大きなお買い物であるからこそ、この10万円という差は大きいです。いやあ得した気分ですね! さっそく購入の手続きを始めましょう! 契約書の確認をして、オプションの選択をして、1日じっくり考えた挙げ句にやっと最終的なサインをする段階にまで到達しました!
と、ちょっとまってください。おもむろにディーラーの販売員が焦った様子で「ちょっとお待ち下さい!」とバックヤードに駆け込みました。なにか問題でも起こったのでしょうか? ――ほどなくして焦った様子の販売員と、その上司らしき人がやってきました。その上司が言います。「申し訳ありません! (アナタの担当)が計算上ミスをしまして、取り付ける予定のオプションの計上を安く見積もっていたのです」
計上ミス?
「はい。わたくしが正しい計算をしたところによると総計はこのような額となっております」
恐る恐ると言った様子で上司はアナタに訂正した金額を提示した。まさか店員さんが青ざめるようなほど高くなっているのか? 一瞬の不安を覚えたアナタですが、その額面をみてほっと安堵に胸をなでおろしました。
「なんだ、たったの10万円か」
――はい、茶番です。とはいえこういったテクニックは未だに使われてそうですね。いやぶっちゃけこれもう『詐欺』だろと思ったりするんですけど担当者が『ミス』って言ってるんでつまりは『故意じゃない』ってことになるわけでね?
良い忘れていましたが、各名前にはちゃんと意味があります。ドア・イン・ザ・フェイスは『門前払いする』という英語(shut the door in the face)が語源です。断られることを前提としてとりあえず顔を見せる、という営業者の動きをもじったものですね「こんにちわぁ~」。フット・イン・ザ・ドアはまあその動きの通りです。まずは足を入れてもらい、次に身体を入れてもらい、そして商談を聞いてもらって――どんどん段階的にずうずうしくなってくなこいつ。ロー・ボールははじめに『購入理由』という土台を作ってもらって、交渉を進めていくうちにその土台をローボール、つまり低めのボールが通り過ぎる際にその土台をぶっ壊すことからきてます。ただそのときには「こうサインの段階まで進んでる」とかいう他の土台ができているので別に商談に影響はないという、いやマジで詐欺だろ。
相手に「Yes」と言わせる心理学を利用した影響力はとても大きなものがあります。とくに日本人はわりと義理堅いとか恩返しとかそういう社会的な文化がありますので、わりとこういったテクニックに弱い側面があります。みなさんもこれらのテクニックにひっかからないよう気をつけてくださいね。
まあ、このテクニックを知ったということは『利用する』という選択肢もあり得るのでしょうが……アナタならどうしますか?
まあスーパーの例は『コントラスト』とか『希少性』とか色々混ざってるけどね。




