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つれづれグサッ  作者: 犬物語
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神経細胞=ニューロン ってなんだ?

本日は生命が活動するうえで重要になる細胞、脳の神経細胞について書いていきます。意外とメンドk――工夫された独自の電気回路をもつニューロンの素晴らしさを伝えられたら幸い。

 本日も、例によって『池谷裕二』氏著作『記憶力を強くする』から、私なりの理解で得た知識をご紹介しようと思います。


 えー、全開記憶について重要な器官である『海馬』、そして『記憶の種類』について書きました。今回は記憶的なことではなく『そもそも脳神経ってどんな造りをしているの?』といったテーマでやっていこうと思います。




 みなさんご存知の方も多いかと思いますが、脳はたっぷりの脳神経でできております。まあじつは脳神経は半分で、もう半分は『グリア細胞』という脳のメンテナンス担当みたいなヤツらにまみれているのですが、それについては今回書くのはやめましょう。問題なのは脳みそのメイン部分。脳の神経細胞についてです。


 そのまえに、みなさん機械はご存知ですか? まあご存知ですよね。電子回路で電気を通していろいろなことができるようになった人類の文明の利器です。パソコン、ゲーム、インターネット……これらすべてこの電気回路がなければありえない技術です。たびたび、人間のみならず生物の活動も電気回路に例えられることがあります。たしかに、神経を伝うのは電気ですし、静電気でビビッとくるのは神経に余計な電気が流れることによる不快感ですし、身体に流れる電気が多ければ、例えば鉄棒に電気が走っていてそこに電気が流れていれば私達はたちまち感電してしまい、強すぎる電気に筋肉を操られ鉄棒をギュッと握りしめたままになってしまうこともあります。なので『神経とはすなわち電気回路だ』とするのもムリはないでしょう。私もわりと賛成です。


 しかし、生物の身体の中に流れている電気は、我々が機械で用いている電気回路とはまったく異なる方法を用いた回路を形作っています。それを要約してまとめてみましょうか。




 脳の神経細胞はいくつかの部位に分かれています。テレビなどで見た方もいるのではないでしょうか? いわゆる『ニューロン』と言われる神経細胞は、主に『細胞体』、『軸索』、『樹状突起』に分かれています。


 細胞体がニューロンの主たる存在で、核やおのおのの細胞に必要な部品、そして活動に必要なタンパク質を作る機構もここにあります。


 軸索と樹状突起はそれぞれ細胞体から伸びている突起物で、軸索はニューロンごとにひとつ。樹状突起は複数存在します。軸索が電気信号の出力、樹状突起が入力器官となって、他の神経細胞からの電気信号を受信および送信する機能をもっています。すべての順番を1から説明するためには、まず『ニューロンがどうやって電気信号を伝達しているか』を書く必要がありそうですね。そしてこれこそが『パソコンなどとは一線を画す素晴らしい伝達手段』でもあるのです。


 軸索と樹状突起はいわゆる『電線』です。とはいえ中に電気があるわけでなく、その電線には無数の穴が空いているのです。これを『イオンチャネル』というのですが、この穴は平時閉じています。


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 こういった電線の途中に穴『イオンチャネル』が空いており、普段は閉じているのですが、あるきっかけで穴が開き、その穴にマイナスの電荷を帯びた『ナトリウムイオン』が入ることによって『その場所だけ電位が変化』します。すると隣のチャネルも開きます。そこにイオンが入り、また隣のチャネルが開き――そして最終的に出口にたどり着くというわけです。これを著者は、まるでドミノ倒しのようだと表現していました。機械などの電気回路は電線の中を電気が通っていくのですが、ニューロンの場合は、電線の表面のある1点の電位が変化し、それがとなりにどんどん波及して伝わっていくということですね。


 なぜこんなメンドクサイことをするのでしょう? 例えば、電気回路はループしています。そして『ある1箇所が故障すると、全体に影響を及ぼします』。生命にてそんな自体になったらどうなることか、まあ想像したくないですよね。この仕組は生物としてやっていくのにメチャウマな機構だと言えるでしょう。


 著書に記されていることによると、このイオンチャネルの開け締めの速度が1000分の1秒。曖昧な記憶ですが、どこかで人間の知覚の限界は1000分の1秒とどこかで聞いたような覚えがあるのですが、もしかしたらこれを根拠にしているのかもしれませんね。ただし、ご覧のようにこの生物学的電気回路は『効率が非常に悪い』ので、受信した電気が伝わり切るまでの速度は秒速100キロメートルかかると言われています。電気はまあ光速、というほどではないにしろそのくらい速いですから、生態的な電気回路はあまりにも差があると言えるかもしれません。しかし熱いお湯に触れた瞬間の「アチッ!」と手を引っ込める程度には速いのでまあ生活にこまることはないでしょう。そもそも光速で動いたら身体が崩壊するわ。


 ちなみに、フグに含まれる毒『テトロドトキシン』は、このイオンチャネルのフタをずっと閉じさせてしまうという効果があります。なので電気が伝わらずにマヒしてしまうのですね。




 さて、ニューロンがどうやって電線を用いて電気を流しているかを説明しました。次に気になるのは『どうやって電気信号を別のニューロンに送っているか』ですよね? これに関する答えは『神経伝達物質』がカギとなります。俗に言う『ドーパミン』、『セロトニン』、『アドレナリン』などですね。まあぶっちゃけこいつらは数ある物質のほんの数%でしかなく、ほとんどは『アセチルコリン』と『グルタミン酸』なんですけどね。とくに、世の中に旨味成分として名高いグルタミン酸が大きな神経伝達物質シェアを誇るようです。


 さて、ニューロンには軸索と樹状突起があります。軸索はひとつですが、この軸索こそが電気信号の出口に繋がっています。軸索のさきっちょは少し膨らんでいまして、これがみなさんおなじみの『シナプス』です。そこには様々な神経伝達物質が『シナプス小胞』という袋の中に詰まっています。対して、樹状突起の先端にはシナプスから放たれる伝達物質を受け止めるための『受容体』が存在します。このふたつの間の距離は20ナノメートルしかありませんが、当然ながら繋がっていないので電気信号は遅れません。だから、軸索が神経伝達物質を受容体にぶちこんでいくスタイルをとるのです。


 まず、細胞体からの電気信号が軸索の先端まで至ります。すると、シナプスが反応してシナプス小胞を先端まで送り出し、穴が開きます。穴の中に入っていた物質が外に放たれ、すぐ目の前にある受容体へと誘われるわけですね。


 ただし、受容体にはふたつの問題があります。『受容体は神経伝達物質を取り込む器官ではない』ことと『対応した神経伝達物質にしか反応しない』こと。ではどうして神経伝達物質が必要なのでしょうか?


 イオンチャネルについて思い出してください。ニューロンの電線は、空いた穴にイオンが入り込むことで電位変化を引き起こさせるのでしたね。これと同じことを受容体でもやります。アセチルコリンの例を書いてみましょう。


 受容体にはそれぞれ対応した物質しか働きません。手のひらには熱さ、痛み、感触など様々な感覚機能が備わっていますがそれと同じようなものだと思ってください。大きな受容体ひとつに、それぞれ対応した物質に反応する受容体が密集しています。アセチルコリンにはアセチルコリン用の受容体があり、その受容体がアセチルコリンに反応するとチャネルが開きます。そこへイオンが突入していくのです。こうしてはじめて受容体の中に電位変化が発生し、受容体近くにあるはじめのイオンチャネルが反応して、電線の最初の穴を開けるわけですね。ここからは個人的な考えですが、神経伝達物質により送り込めるイオンサイズ、つまり電気的なサイズが異なるので、細胞体は電気の強さによりどの神経伝達物質がアクセスしてきたのかを理解するのでしょう。そうすると、例えばドーパミンに反応して侵入したイオンだから興奮しよう! と細胞体が判断できる材料になるかもしれません。ニューロン個別に意志があるとしたら面白い話になりそうですね。




 これらのすべてのお話から御理解いただけるように、ニューロンの電気信号は『一方通行』です。機械の電気は反転させることができますがニューロンはできません。そして、リアルだとメンドウですが、ニューロンは『各駅停車で乗り換える必要がある』電気です。機械の電気回路は電線をつなげたらその間を停止せずに乗り換えずに新幹線のごとく走り抜けますが、ニューロンは地方のローカル線のごとくゆったりしています。それも仕方ないのでしょう。機械は電気を簡単に伝導してくれる物質でできていますが、生物はだいたい非伝導なので、ニューロンの電線がもし機械のそれと同じ用だったら、電線を走る途中で溜め込んだ電気が弱くなる、または消えてしまうことだってあるでしょう。イオンチャネルなんてまどろっこしい手段を用いる理由は、我々生物が非伝導体であるが故の工夫なのです。生物の神秘ってすばらしいね! なんてったって電気信号に用いる『ナトリウムイオン』は海に大量に含まれているから、生物の進化には利用しない手はなかったからね!




 いかがだったでしょうか? 今回は生命の神秘、生物の根幹である『脳の神経細胞』について書いてみました。まだ私も完全に理解できたわけではありませんが、私個人の記憶がてら、これからも続々と書いていこうと思います。

脳に針をぶっ刺してもあっ……あっ……とはなりませんので悪しからず。

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