記憶は捏造されるもの
ちょっとした忘れ物、アレはどこに置いたっけ? そういえばそうだったかも……
世の中にはたくさんの『記憶違い』が存在します。ではこういった現象は止めれられるのでしょうか? 本日は記憶に関する権威の研究と、記憶に関する『7つの大罪』について書いていきましょう。
注意:本日アップしたこの文章は『ノベルアッププラス』さんの方で私のアカウントになります『つれづれグサッ』と同じ内容を同日同時間にアップしています。わりと『今回の話は個人的に重要かな?』と思いましたので……。
記憶というのは『脳の神経回路』であり、シナプスに対して電気信号がどのように通ったかによって記憶などの情報が保存されていきます。シナプス=脳の神経細胞はいくつかの神経細胞と強力してある『ルート』をつくり、そのルートに電気が走った時にそこに保存した記憶が蘇る、という考え方でおおまかに間違いないでしょう。これらは『いっぱい使う』、『本能的危険と絡む』、『感情と深い関係になる』ことによって『強化』され記憶としてより定着しやすくなるということもセットで覚えておきましょう。
ここまでは記憶のしくみの話。でもって、今回メインにやるお話は『記憶ってわりと頼りない』ということです。
そもそもこの神経細胞。複数で一定のルートをつくるということですから『ひとつのニューロンちゃんが複数の記憶を担当する』ことは普通にあります。っていうかわりと100通りくらいの保存情報に関係しているようですね。脳には『可塑性』というものがありますので柔軟ではあるのです。だからこそ脳のある部分が死滅してしまった場合でも他の部位がそこで担っていた機能を引き受ける、なんてこともしれくれます。脳の構造は『生物が生活していく中での記憶』としてはメチャクチャ優秀な司令塔だったりするのです。なのでたまにはご褒美あげてね?
しかし、こういった優秀な機能だからこそちょいとザンネンな状態に陥ってしまうことがあります。それこそが『記憶に関する7つの大罪』なのです。あ、ごめんなさい誇張表現しました。
正確かどうかはわかりませんが、だいたいは『記憶の7つのエラー』の名前で知られています。まずはこれを発表した偉人について学んでいきましょう。
『ダニエル・ローレンス・シャクター』はアメリカの心理学者です。1952年に誕生し現在はハーバード大学の教授として教鞭をとっており、主に人間の記憶と健忘症の心理的、生物学的側面を研究しているようです。74年、ノースカロライナ大学チャペルヒル校にて学士号、77年にはトロント大学にて修士号、81年に博士号を取得しています。なんかアメリカの大学ってこういうパターンが多いのよねぇ。あっちこっちの大学で学位を段階的に取得していくっていうの……。アッチの文化的な話なんでしょうかねぇ。
閑話休題。彼は脳の記憶に関する機能の権威であり、これまでにいくつかの本を出版してきました。でなくとも200以上の論文を発表しているようですのでその熱量は相当なものでしょう。そして、数ある出版物のなかにこの『記憶の7つの罪(アメリカでの出版は2001年)』があります。日本語版は無かった気がします。
『7つの罪』は、シャクターさんが「7つの大罪に似ている」としたことから命名されました。なのでここでは『7つの大罪』として扱っていきます。彼が発表した7つの要素は以下のとおりです。
・物忘れ――Transience
時間の経過とともに記憶が劣化していくことを表します。これはみなさんも実感が湧く『罪』だと思います。よく『エピソード記憶』というのがありますが、これはすぐに情景が思い浮かぶような強い記憶を指しますが、時間を追うごとにそれは知識的な『意味記憶』になり、さらに使わないまま時間がたつと脳の神経回路の繋がりが弱くなり、最終的には思い出せなくなっていきます。ちなみにこの『エピソード記憶』も想起するたびに微妙に記憶が変化する可能性がある、とかいう困ったちゃんでもありますのでお気をつけください。
・不注意――Absent-mindedness
我々の脳みそちゃんは『情報の優先度を取捨選択する』という特徴を持っています。ですので物事を記憶するには『何度も復習する』とか『重要なことなんだ!』と脳に知らしめる必要がありますが、さすがに日常生活にまでそういった意識付けはできないもの。だからこそみなさんは「あれ? 車の鍵ってどこ置いたっけ?」とか「ヤベッ! このあと友人と飲みに行く約束してたの忘れてた!」みたいな状況に陥ってしまうのです。まさに『罪』ですね。まあ『すっぽかしたらころされる!』的な発想で本能に記憶させりゃちっとは……やめときましょ、脳がパンクしてしまいます。
・妨害――Blocking
脳が記憶を取得したり呼び起こしたり、あるいは『エンコード』しようとした時に、別の記憶がそれを阻害してしまう場合があります。目標の記憶に一時的にアクセスできなくなってしまうこの状態はよく「あれ? あれなんだっけ……アレだよ、くそっ、もうノドの手前まで来てるのになにか思い出せない!!」みたいな状況に陥ってしまいます。で、似たようは発音や意味の言葉ばかりを口にしてしまうのですよねぇ……。ヒジョーに『罪』です。
・混乱――Misattribution
情報は正しいものの、その情報の出どころについて誤った記憶を伴う場合があります。例えば『ほんとうは父親に言われたなのに母親に言われたことだと記憶していた』とかですね。コレに関してはシャクターの実験に面白いものがあって、ある被験者に『ソーイング』、『ピン』、『シャープ』といった単語リストを読ませていきます。まあ『裁縫』に関係ある単語ばかりですね。ただしこの中には『針』という単語はありません。次に被験者に対して別の単語リストを与え、初めに読ませたリストにあった単語を選び出してもらいました。そうするとほとんどの被験者は自信をもって「針はあった!」と主張しました――被験者は『これは裁縫セットについての単語が並べられている!』という記憶の仕方をして、のちのリストには『針』という単語があったのです。これは被験者が前提とした『裁縫セットについての単語』に合致しますから、当然『針』も以前の単語リストにあったはずだ! と記憶が判断してしまうのです。人間の脳はわりと『法則性』というものが大好物で、これが『混乱』というエラーを引き起こしてしますのです。いやぁ『罪』ですねぇ。
・暗示――Suggestibility
記憶は記憶でしかなく現実ではありません。なので想起――思い出すときに他者や本人の心情などによって記憶に変化をきたすこともあります。たとえば『誘導尋問』などはあからさまですが良い例です。○○したんだろ? それって○○ってことだよな? といったように記憶に関してルートを用意すると、人間の記憶はわりと「そういえば確かに……」みたいなことになります。ある人間が赤毛の男の犯行をあいまいながらも偶然目撃して、その翌日新聞には『茶髪の男』と書かれていた時、「そういえばわたし茶髪の男見たかも」と『記憶にある情景』を思い出すのです。いやぁ『罪』ですねぇ。
・バイアス――Bias
これは言うまでもありませんね? 暗示と似てなくもないですが、これは自らの『思い込み』が強く影響させてしまう記憶のことを指します。記憶は感情を伴うと強烈に残りますが、そのなかで感情の部分が膨らみ上がってしまうとその感情の都合の良いように記憶が改ざんされてしまうことが多々あるのです。これも『罪』ですねぇ。まあ個人の感情が伴う記憶変化であるので、すなわち個人の都合の良い改変が行われているというわけで、場合によってはこれは『幸せ』な罪かもしれません。
・つきまとい――Persistence
一言で表すならば『忘れたくても忘れられない』。たとえばアナタの『黒歴史』なんていかがでしょう? ほら、すぐに思い出せたでしょう? しかも一度思い出したらなかなか離れられないでしょう? いいんですよ、ほら、そこにマクラがあるからギュッと顔をうずめて「あ~なんで俺はあの時あんなことを!」みたいな感じで突伏していてください。私もそうします(自滅)。言うまでもなく『罪』です。スポーツ選手などはこれを回避するような精神的訓練をする必要がありそうですね。昔の失敗を引きずるとか、過去の栄光に引きずられるとかイロイロ表現はありますが、これは仕事中の軽い失敗からトラウマレベルのそれまで多種ありまして、こいつが原因で『心的外傷後ストレス障害』的な精神疾患に陥ることもあります。
いやあどれもこれも『罪』ですねぇ……。とはいえ、ここまできて「記憶ってこういうエラーがるんだよ? こわいね!」で終わらせるのもアレですし、考えられる『対策』的なことも考えてみますか。注意ですがこれは『私個人の見解』です。確かに参考にするデータはありますがそれらをまとめて『こうしたらええんでない?』という私レベルでの考えであることをご理解ください。
英語版の『7つの記憶のエラー』Wikipedia記事によると、シャクターさんがある軍事関係者らにこの発表を行った時、ある人がいくつかの役立つ行動を開発したようです。(翻訳ミスの可能性有)
・記憶を素早く定着させる
・記憶の優先順位をつける
・貴重な情報はメモする
・自信にとって重要な事柄を毎日日記に記す
・情報収集の際は『中立的な言葉』を用いる
・情報提供者らの『根拠や視点』を理解する
・PTSDの症状を理解し、認識する
つまりは『自分の記憶したいことはなにか?』をしっかりと認識しつつ、情報を『客観的な正しさのもとで』取得し、それらに関して『常に興味をもっていること』が重要です。これは以前までに記憶に関する内容を書いたものとほぼ同じ内容ですね。つまりは『情報を正しく、そして強く記憶する』ことが、人間の記憶に関する『7つの大罪』を回避する有効な手段となり得るわけです。
いかがだったでしょうか? 人間の脳ってわりと不可解な仕組みをしていますね。しかしこれこそ脳には必要な機能だったりします。たとえばこういったある種の『柔軟性』があるからこそ脳は『長期記憶』が可能ですし、じゃあデジタル回路にすればいいじゃんという意見もありますが、デジタルは1箇所が停電したら全部『パチン』です。みなさん、試しにデジタル生命体になって小指をタンスの角にぶつけてみてください。万が一小指の神経が停電したらそれでアナタの身体はすべて『バチン』ですよ?
記憶の7つの大罪はある意味で宿命だと思ってほうが気が楽なのでしょう。そして、そんなあいまいな存在である脳みそちゃんをヨシヨシしてあげてください。アナタたちの頭に鎮座するそれは、毎日アナタのためにたくさんの情報を取捨選択しつつ、アナタに生存するべくたくさんの欲求を与えてくれているのです。そう考えれば、たまには休ませてあげないとなって気持ちになって睡眠時間を増やしてあげたり、たまには頭に良いとされる生活習慣をしてみようと思いませんか?
みなさんの記憶に大きなエラーが起こりえませんように祈りつつ、私は私の脳をいたわって生きていこうと思います。
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