ばいあす!!
本日は人間が自動操縦的に行動してしまう心理学、バイアスを題材にしていきます。人間はわりと操られやすい、というより自らが自らを操っているのだと分かるちょいと怖い話です。
これまで心理学を解説していったのですが、そういえば『バイアス』とはなんだろうと思い至りました。それは単純な言葉でいえば『思い込み』という思考回路のことを指すのですが、ただ「こうだよ」と説明するだけではちょっと足らないかなと個人的に感じました。ということで、本日はこの『思考バイアス』についてちょっと深堀りしていこうと思います。最近私が書いている心理学についてのイロイロは、おおよそ『トム・ジャクソン』氏著作『図鑑心理学 ~歴史を変えた100の話~』を大いに参照しておりますので興味がおありでしたら書店にて手にとってみてください。普通の本ではなく図鑑みたいな大きなサイズで、ちょっと薄めですが内容は非常に濃ゆいですよ。
認知心理学の専門家は、以前までは人間は可能性に重みをつけてもっとも有り得そうな可能性を選択する心理がある、といったある種の合理的判断をするのだとしていました。しかし1974年のことです。『ダニエル・カーネマン』と『エイモス・トベルスキー』が共同研究した結果から、そんな合理的な判断をするはずの人が、物事の判断に関して全く合理的でない行動をとることが明らかになりました。それはどのような人間であれ同じで、私達はある判断に対して『ヒューリスティック』に依存し、その情報が誤っているために判断も誤ってしまうことがあるというのです。ヒューリスティックというのはいわば『経験則』のようなもので、自分がこれまで得た経験や知識などを元に、起こった現象に対して半ば自動的に「こういうことが起きたのならこういうことだ」、と判断してしまう指標のことです。彼らはこの法則をまとめて『認知バイアス』と称しました。
まず偉人たちの紹介からいきましょう。
『ダニエル・カーネマン』はアメリカの心理学者です。生まれは1934年のイスラエルですがパリで幼少期を過ごし、エルサレムにて心理学と数学を学びました。けっこうあちこちに移住しているのですね。
後にイスラエルの国防軍にて心理学部門に務めた後、1958年にアメリカに移住したようです。カリフォルニア大学にて心理学の博士号を取得した後、イスラエルにて大学講師となり、そこで様々な研究に着手しました。彼は行動経済学という『経済学に心理学の要素を足した学問』というジャンルを生み出し、今回紹介するバイアスにも関係ある『プロスペクト理論』なども開拓した偉人です。現在もご存命であり、アメリカとイスラエル両方の国籍を持っているようです。
『エイモス・トベルスキー』はイスラエルの心理学者です。1937年にイスラエルで誕生しました。それからアメリカやスウェーデンの大学で次々と博士号を取得し、最終的にヘブライ大学で学士号を取得して同大学で教鞭をとった後、1978年にスタンフォード大学の教授となりました。ちなみにですが、彼は若かれし頃イスラエル国防軍の空挺部隊員として優秀な成績を残して勲章も授与されていたようです。心理学分野の部隊で活躍しつつも勇気ある人だったのですね。
残念ながら彼は1996年に病死してしまいましたが、彼は生涯を通してカーネマンだけでなく様々な人と共同研究をしていた顔の広い人物でもあります。そのおかげか、彼の研究は他者の研究からも引用されることが多く、ある出版物によれば、2002年に20世紀で最も引用された心理学者ベスト100にランクインしてもいました。個人的な感想ですが、彼の協力がなければダニエル・カーネマンは2002年にノーベル経済学賞を受賞することはなかったでしょう。
彼らは共同研究のなかで、人間が思考をする上で『バイアス』をもつことを明らかにしました。認知バイアスは『10種類』存在し、それらはさも『自動スイッチ』のごとく切り替えられ人の心を動かしてしまうのです。
ここで認知バイアスを並べてみて解説してみましょう。簡潔に説明しますがちょっと長くなりますのでご注意を。
・アンカリング
最初に目に入ったものを基準に判断してしまうバイアス。身近な例を出すとフィギュアスケートの評点などがあるでしょう。1番めに登場した演者の演技を基準にして後々の演者の雰囲気や演技などを評点しがちになってしまいます。対策として審査員は『技術点』などディジタルに判断できる基準をもってはいますが、これで完全にバイアスを排除できたかどうかは人それぞれが思うことです。
・利用可能性ヒューリスティック
容易に頭に浮かぶことを基準に判断してしまうバイアス。問題を眺めて想像しやすい現象を元に答えを導いてしまいます。例えば"k"というアルファベットが1番目にある単語、もしくは3番めにある単語のどちらが多いか? と問われると、1番目に"k"がある単語のほうがたくさん浮かんできます。それに導かれて思わず1番目と答えてしまうのです(ちなみに答えは3番目です)。
・バンドワゴン効果
他人と同じ行動をしようとしてしまうバイアス。スーパーなどにあるバンドワゴン(セール品が山積みになっているアレ)がネーミングの元です。大安売りのワゴン品に手を伸ばして、必要かどうかはわからないけどとりあえず買う! とか、なんだかわからないけど人気があってみんな並んでるから私も並ぼう! なんて経験をしたことはありませんか?
・確証バイアス
『正解』は私が予想したものと同じだ! と判断してしまうバイアス。これに陥ると、自らに都合の良い情報ばかりを集めだし、自分の考えとは異なる情報や資料を遠ざけようとしてしまいます。こうなると理性的な議論すらままならなくなりますので多種多様な価値観に触れて自らの戒めとしましょう。深く理解したい方は『ウェイソンの選択課題』とググってみてください。
・クラスター錯覚
本来ランダムであるはずが、たまたま塊のように見えてしまったせいで「これには法則性がある!」と誤解してしまうバイアス。これは商品開発される方やデータを見る仕事をする方などは特に気をつけたいバイアスですね。人間はわりとランダムの中に塊を見出すとそれに大きな価値を感じやすい生き物なのです。
・情報バイアス
情報があればあるほど良いと判断するバイアス。確かに情報を集めることは優位に働くことがほとんどですが、なかには余計な情報が含まれていてそういった『雑音』に正しい判断を妨げられてしまう場合があります。ある判断を下すときに必要な情報はどれか。その判断に参考になる情報はどれか。余計な情報はどれか……。情報化社会となった現在において、ますますこの『クリティカル・シンキング』的な考え方が威力を発揮しそうですね。
・ダチョウ効果
明らかに危険な状況下にいるにも関わらずそれを無いものと扱ってしまうバイアス。もっとカッコイイ言い方では『オーストリッチ効果』といい、これは投資家が陥りやすいバイアスとしても有名です。あとは銀行口座の預金などですかね。利用して減っていく残高に対してはまるで避けるように目をそむけるものですが、銀行の振り込みがあってそれを確認する時はルンルン気分で預金残高を確認します。このバイアスが継続すると最終的には借金地獄的な未来が見え隠れするので非常に気をつけたいバイアスですね。
・ステレオタイプ
対象にあるイメージに引っ張られてしまうバイアス。これは個人的に最も身近でもっとも自然に起こり得るバイアスだと思われます。たとえば血液型占いとかありますよね? あれ実際科学的にちゃんと否定されているのですが未だに「A型は几帳面」とかイメージありますよね? あと『プロ野球選手だから100mくらいボールを投げられる』みたいなイメージもあるかと思いますが実際アマチュアより弱肩の選手もバリバリいますし、長い野球の歴史を紐解けば塁間すらアレだった選手もいらっしゃるほどです。みなさんも『職業』やら『仕事』やらに偏見を持たないよう気をつけましょう。
・結果バイアス(成果バイアス)
結果を過度に強調してしまうバイアス。これは非常に強力なバイアスであり、周囲への説得力もありますから余計にたちが悪いですね。言ってしまえば『結果が全て』のような考え方のことで、異なる見解があったとしても『過去に〇〇があったんだからこれで間違いない!』と結果が強調されてしまうのです。悪い結果が起きたときにそれを引き起こした(と思われてしまった)人を批難するのもこの結果バイアスのせいです。
・自信過剰バイアス
他人よりも自身の直感を信じ過剰に自信を持ってしまうバイアス。自分のもつ情報や経験などに絶対的自信をもち、周囲の意見をまったく聞き入れなく鳴ってしまいます。自らの過ちを認めるのは難しいということをこのバイアスが如実に表していると言っても過言ではないでしょう。「私は大丈夫」といったある種の油断的な思考もこのバイアスが絡んでいます。常に自分を客観視できる環境を作りましょう。
つ、つかれたぁ……。現在はこれらの他にも様々なバイアスが発見されており、それに倣って多種多様な理論やそのバイアスにいたる『フィルター』なども続々と判明しています。こういった知識を身につけるだけでも対策になったりします。興味がある方はさらにさらにバイアスの世界に自らを漬け込んでみてはいかがでしょうか?
とはいえ、こういったバイアスは人間が処理を簡略化するのに必要な機能でもあります。あまりバイアスに警戒し続けた生活をしていると身体に毒だったりもしますので、たまにははっちゃけてそれを振り回しても良いかもしれません。あまり脳みそに苦労をかけないのが一番バイアスを乱用されない工夫なのかもしれません。人の心とは『脳のあれこれ』なのですから……。
ひとむかし前のラノベタイトルみたいになった。




