1/1
分からない世界に触れて
(また送られてきたか…)
息子の名義の小包を配達員から受け取り、うんざりとその箱を玄関に投げた。今月で二回目。
誰に似たか分からない息子の趣味に頭を抱えながら義彦はテレビのある部屋に座布団を二枚に折り畳み、枕にして寝はじめた。
トタトタ…ギッギッギッ
一段一段階段を踏みしめる音が近くなり、息子が降りてきた。
「誰かきたの?」
息子が私の背中に声をかけた。何いってんだ。分かるだろ。頼むのはおまえくらいだ。
「配達員だよ、また、おまえの」
「ああ、もう来たんだ 早いな」
ある日、息子の人形を叩き壊した。集められた人形は部屋のあちこちにおいてあった。義彦は頭にきて毎日息子に怒鳴っていた。
それが、激しいテレビのチャンネル争いだけでついに沸点が壊れてしまい、気づけば息子の部屋で全てを壊していた。
息子は呆然と私を見ていた。
その顔が忘れられなかった。その日、息子は消えた。
警察に駆け込み、捜索願いを出した。
失意の中、私はテレビの電源を入れた。
映りこんだのは、私の知らない世界だった。