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奇病社会  作者: 松井渚
1/1

始まり

ここに出てくる病気はネットで説明されているものではなく、オリジナルのものです。

ご了承ください。

この小説に出てくる病気はネットで説明されているものではなく、オリジナルのものです。

ご了承ください。



















1:花吐き病の発症



「ずっと前から好きでした。私と付き合ってください!」


「ごめん…

白鳥とは付き合えない。僕には好きな人がいるから。」




高1の夏の終わりのころ、学校の屋上に伊藤君を呼び出して、勇気を振り絞って告白してみたものの、あっさりと振られてしまった。何が何だか分からなくなって悲しいとか、泣きたいとかなんて、全く思わなかった。


それなのに、まだ諦めきれてない自分を殺したい。伊藤くんが近くにいたら目で追ってしまったり、彼の名前を聞くと、反応してしまったりする。一体どうすればいいんだろう?



そんなある日の休み時間、突然気持ち悪い感覚が襲ってきた。喉の奥からモサモサした何かが、飛び出して来そうな勢いだった。堪えきれず、そのまま床に吐き出してしまった。


「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!

ねぇ!白鳥さん!口から花がでてるよ?!

どういうこと?!大丈夫?!」

いつも賑やかな源さんが叫んだ。


うるさいなぁ。こっちは気持ち悪いんだよ…

え? 今私の名前言った?

口から花が出てるって?


「とりあえず、保健室に行こう!白鳥さん!」

私のことを振った伊藤くん、こういうときに、僕優しいでしょ?っていうアピールいいから…そこだけは好きになれなかったんだよね…

あれ?なんだか瞼が下がってきたな…







目が覚めたところは保健室ではなかった。とても焦ったことは言うまでもない。

「あ、目ぇ覚めましたかぁ?」

突然、少し高めの癖のある声がした。声がしたほうを見てみると、30代半ばぐらいの男の人がいた。眼鏡に指紋がついていたり、髪型がボサボサだったりしたせいか、不潔な感じが漂っている。そのせいかは分からないか、まだ口の中に気持ち悪い感覚が残っている気がする。

「一体ここはどこなんですか?」

「ここはぁ、緊急病院ですよぉ。あなたがぁ、急に倒れたという連絡がぁ、学校の方からぁ、きたのでぇ、こちらに搬送されたんですよぉ」

「そうだったんですか…私が倒れた原因ってどういったものなんですか?」

医師さんは眼鏡をくいっとあげた。

「え〜、あなたはぁ、花吐き病にぃ、かかってしまいましたねぇ」

今度は髪の毛をいじりながら言った。

「あの、花吐き病ってどういう病気なんですか?」

「言葉の通りぃ、花を吐いてしまうぅ、病気ですねぇ」

まぁ、そりゃそうか…

「はぁ…そうですか…

治す方法はないんですか?」

医師さんは気まずそうに目線を自分の足元のほうに向けた。

「ないんですね…私はどうすればいいですか?」

「あるにはぁ、あるんですけどぉ、治る確率がぁ、低い上にぃ、大変なんですよねぇ」

は?私はいち早く治したいんですけど?!

「大丈夫です!なんでもします!教えてください!」

「ではぁ、まずぅ、あなたがぁ、花吐き病にぃ、かかったぁ、原因をぉ、教えてくださいぃ」

やっぱり聞きにくい…

えっと、なんでだったかな…?

「確か、クラスメイトに告白して一瞬で振られたから、ですかね?」

「あ、ふっ…ぷっ、あはははは!!」

「笑わないでくださいよ!!」

「いやぁ、ははは!やはりぃ、そうでしたかぁ。おそらくぅ、そのクラスメイトくんはぁ、私のぉ、息子ですねぇ。」

え?思わず口が開いてしまった。不潔な感じの医師さんと私が恋した伊藤くんのどこが似ているんだろう?

「え?そうなんですか?」

「この人でしょぉ?」

そう言って医師さんは、ある1枚の写真を出てきた。やはり、あの伊藤くんの写真だった。こちらに向かって笑顔でピースをしている。

「どうして分かったんですか?」

「……それがね、」

その途端、何もかも酷かった医師さんの雰囲気が一気に変わって見えた。いや、話し方が変わって、眼鏡を外したからだろうか?

さっきとは違い、とても伊藤くんに似てる。よくよく見て見たら、医師さんの胸のあたりに「伊藤」と書かれたプレートが付けてあった。

「私の息子が高校に入学してから、花吐き病にかかる人が増えたんですよ。しかも、みんな息子と同じ高校の女子。少し気になって息子に最近のことを聞いてみたら、数人に告白されたと。さらに何人か具体的な人数を聞いてみたところ、患者さんの人数と見事に一致したんですよ。」

そこで1度大きなため息をついてから、医師さんは私と視線を合わせてきた。すると、突然喉の奥から気持ち悪い感覚が立て続けにきた。堪えきれず、近くにあったエチケット袋に手を伸ばし、口にあった違和感を全て吐き出した。しかし、思っていた以上にエチケット袋には重みがなかった。

「やっぱりそうなっちゃいますよね。ちょっとそれを貸してくれるますか?」

医師さんが微笑みながら言った。無論、とても抵抗があった。しかし、これは完治する1歩だと戸惑いを捨て去り、医師さんに思い切ってエチケット袋を手渡した。

「はい…」

「どうも。ほら、やっぱりね。」

そういいながら、医師さんは、ゴム手袋をはめた右手でエチケット袋の中身の1部を取り出した。そこには、吐き出してしまったとは思えないような、淡いピンクのきれいな花があった。

「これはあなたが恋してる大きさをあらわしているんですよ」

再び空いた口が開いてしまった。花吐き病は恋の気持ち吐く病なのか…?

「すみません!ちょっと思考が追いつかないです…」

医師さんは、あ、そうかそうかと頷いてから鼻で笑った。思わず殴ってやろうかという感情があらわになるところだった。もちろん、実際に殴ってはいないが。

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