捨身
友達が多い人が羨ましい。
友達が沢山居た、幼い頃を思い出してつい、涙が出そうに成る。
でも、其の思い出に靄が掛かる。
そして、自分に問い掛ける。
“私は元から独りだったんじゃないか”
“本当の友達なんて居たのか”
そう問い掛けられた私は、今迄の記憶を思い返す。
すると、記憶の中でよく残っているのは 自分が独りで居る ものばかりだったのだ。
真逆と思って他の時の記憶も探ってみると、友達と遊んだり、話したりしていた記憶はほんの僅かだけ。
本当にそうなのかも知れない。
だとしたら、何故私は此処まで生きて来る事が出来たのだ?
人間は独りでは生きて行けぬ筈だ。
なのに、何故。
偶然か、奇跡か。
私には解り得ないが、何方にせよ
此から先は生きるのがもっと辛く成るだろう。
“ならば、いっその事死んでしまおう”
掠れた声でそう云って、私は足下の椅子を蹴落とした。