乖離
爺に少し反抗心がある少女がバイクを通して成長する話です。
初投稿なのでコメントもらえるとうれしいです(酷評価もええぞ、どんとこい、やっぱやめてくれ)。
『・・・ビリビリビリビリビリビリビリビリ』
遠くの方からエンジン音が聴こえてきた、配達が終わったお爺ちゃんが帰ってきた音だ。
少女はベットから起き上がり、工具類が散乱した部屋を横切ってガレージを開けた。
11月だというのにとても冷え込んだ空気が少女の鼻を赤らめた。ビルが林立する中心部から郊外の自宅までやってくる一つのライトを見て、少女は「おかえり」とつぶやいた。
スーパーカブ
爺はハンドル下についたエンジンキーを外し、ガレージの中にスーパーカブを入れ点検整備を行なっている。
少女はネジやレンチが散乱したガレージの棚から旧式の魔法瓶を取り出し、そこからお茶を出して爺に渡した。
「爺ちゃん、これ」
爺は油まみれの作業手袋をしたまま、それを受け取りそのまま飲み干した。
少女はそのへんに転がっているタイヤに腰掛け、爺の整備する姿を眺めるのが毎朝の日課だ。
「爺ちゃん、好きだよねーカブの整備」
爺は手を止めることなく黙々と作業している。
「年代物のバイクにそんなにこだわらなくても別にいいじゃない、今ならモーター式のelectric ジョグとか馬力とかブレーキ性能良いのに」
爺は17レンチを取り出し、身をカブの下に滑り込ませエンジンオイルのネジを緩めたまま言った。
「お前はまだカブの良さがわかってない」
少女は手に顎を乗せたまま言った。
「私のボルト400よりも?」
「フィーリング、エンジン性能ともにスーパーカブより断然上だが、カブにはそれを上回ったある性能がある」
「ある性能って何?」
「お前が気づくまでは言わんよ」
これ以上言っても何も意味はないだろうと思った少女は、ため息をついてガレージ奥の自室の方へカバンを持って制服に着替えてきた。棚に備えられた小綺麗なヘルメットをかぶってバイクにまたがる。その瞬間、皮膚に埋め込められた接触式ナノデバイスからの信号がバイクに伝わり自動的にエンジンが始動する。
「じゃあ、学校行ってくる」
爺は振り返らずレンチを振って見せたっきり作業を続けている。
「あんなオンボロなバイク、何に役立つっての」
少女はつぶやき、ボルト400のアクセルを捻り上げてガレージから飛び出した。