プロローグ
だいぶ前に思いついた話を書いてみました。
ただ今後の展開を全く考えていないので、どんな話になるのやら…
拙い文章ですが、どうぞよろしくお願いします。
「ふっざけんなあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
そんな声が森に木霊した。
なぜ、私がこんな状況にあるのかというと、事の発端は今から数時間ほど前まで遡る。––––––––––
ここ最近死ぬほど忙しかった仕事が漸く終わり、帰路についていた時のことだ。
家までもう少し、着いたらこの前買った小説でも読みながらゴロゴロしよう、そう思って足を一歩踏み出そうとした瞬間、足元に大きな穴が広がった。
驚く暇もなく穴に落ちていく。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」
きゃあ!なんて可愛い悲鳴が出るはずもなく、そのまま真っ逆さま。
底が見えずどこまで落ちるかわからない恐怖についに意識を手放した。
ふと、気がつくとこちらを覗き込んでいる影がある。
『あれ、ここどこだ?確か帰る途中だったはず…。はっ、もしかして、ここ最近の忙しさで帰る途中に寝ちゃった?いやいや、そんな訳ないか、さすがに…』
なんて考えながら視界がはっきりしてくると、覗き込んでいるのは真っ白な口髭をたっぷりと蓄えたおじいさんであることがわかった。
「おぉ、目覚めたか。とりあえず、お前さんの質問に答えるとするかの。ここはな、儂等神々が住む空間じゃ。」
「は?」
いや、思いっきり素で答えてしまったが、きっと私は悪くないだろう。
寧ろこれが普通の反応である気がする。
そんな反応は御構い無しにその老人はペラペラと喋りだした。
「いやぁ、とりあえずお前さんには謝らにゃならんことがあるんじゃよ。儂の手違いでな、お前さんを間違えて転生システムに組み込んでしまったんじゃよ。まっこと、すまんことをした。」
そう言って老人は頭を下げるが、とにかく意味がわからない。
「ちょ、ちょっと待って…ください。転生システムってなんですか。そもそも神って…」
「お?あぁ、そうじゃった、そうじゃった。今の人間はそこから説明せんといかんのじゃったわ。忘れとったわ。わはははは。いやぁ、昔は神じゃ、と言うたらそれこそ皆こぞって平伏しておったのに、なんと情けないことか…「あ、あの、昔のことはいいんで、とにかく現状を把握したいのですが…。」
途中で口を挟むのもどうかと思ったが、口を挟まなければそれこそ、永遠と昔語りが始まりそうな予感がしたので、話をぶった切ると、いかにも不服そうな顔をこちらに向けてくる。
そのまま、無言で先を促すと、渋々と言った体で話し始めた。
「…フンっ。仕方あるまい。説明するとするかの。と言っても、いきなり神について説明しようにも、お前さんには理解できんことじゃろうからな。しょうがない。まずはじめに、魂について話をするかの。魂とはつまり一つの命のことじゃ。生命全てに魂は宿っておる。動物や植物、ちっさい虫なんかにも宿っておるぞ。普通の人間の目には見えんがな。その魂はそれが宿っていたもの、つまり宿主、人間で言うところの肉体じゃな。これが死ぬと、次の宿主を探して新たな生命として生まれ変わる。この時、それまでの記憶を刷新するというのが主な神の仕事じゃな。それからもう一つ、お前さんは地球に住んでおったから、知らんじゃろうが、この世界は一つでは無い。沢山の世界があり、それを管理する神々がいる。といっても、一つの世界に一人の神というわけではないぞ。流石に管理する人数が多すぎて一人だけでは手に負えんのでな。世界の規模にもよるが、かなりの人数が一つの世界で神として働いておる。まぁ、分かりやすく言えば、神とは世界の管理者と言ったところかの。ここで魂の話に戻るがの、魂は基本的に一つの世界の中で生き死に、つまり、輪廻を繰り返しておる。しかし、時には世界を超えて魂の行き来をする必要があるのでな。確か、らのべ、とかいう若いもんの間で流行っとる書物の中に出てくる、異世界転生というやつだな。といっても、通常はその魂の記憶を儂らが消すでな、あんな事にはならんがの。大体これが神についての説明かの。
次に転生システムについてじゃが、さっき儂が言うたように、神の一番大事な仕事は輪廻する魂の記憶を消すことじゃ。そして、この魂が次の宿主を探す手助けをすることじゃが、いかんせん、人数が多すぎてな。昔は神々の手で直々に行っておったのじゃが、なかなかどうしてこれが面倒でな。機械化してしまおう、ということで、誰じゃったかのぅ…。転生お任せましんとやらを作りおったわ。そのことを転生システムと言うておるんじゃよ。これがまた便利な機械でな、魂の記憶を消すと同時に、次の転生先を探して来て、魂を転生させてくれるんじゃよ。魂はそれに見合う宿主でなければなかなか定着できずに、すぐに離れてしまうんじゃ。つまり、死ぬということじゃな。これを昔は儂ら神々が直々に行っておったのじゃが、見合う宿主を探すのが大変でなぁ…。それはそれは苦労したわい。
まぁ、それは置いといて。
先ほども言うたが、生けるものは全て、地獄に行った者以外、死ねば必ず転生することになっておる。魂は解脱せん限り、転生し続けることが義務付けられておる。と、ここまでが転生の話じゃが、なぜお前さんがここにおるか、ということについてなんじゃが、さっきも言った通り、儂の手違いじゃ。機械化したと言っても、最初の操作は儂らがせにゃならん。死んだ者の名前を機械に入れる作業があるんじゃが、間違えてお前さんの名前を入れてしもうた。
ここが難儀なポイントでな、間違いを修正できんのじゃよ。ということで、お前さんは転生するしかないんじゃが、それも可哀相ということで、事前に説明を、と特別に此処に呼んでやったと言うわけじゃ。転生することは変えられんが、転生後に便宜を図ってやろう。ほれ、言うてみぃ。お前さんの望みを叶えてやるぞ。」
ほれ、ほれ、と言いながら顔を近づけてくる。
茶目っ気たっぷりに言われても、腹が立つだけなのだが…。
「正直、その話が信じられるかと言われると信じられませんが、置かれている状況を見るに本当なんでしょうね。」
ため息をつきながら周りを見渡すが何もない。
地面は雲のようだし、因みに最初から神様だというおじいさんは何もないところにプカプカと浮いている。
これは、信じないという方が難しいかもしれない。
「今、私が置かれている状況はなんとなく把握しました。ですが、転生が手違いだということは私は死ぬ予定でなかったのに、死んだという事ですか?そもそも、間違いを修正できないなんて、ありえないと思いますが。それに、転生後の便宜と言われても…。」
「ふむ。間違いを修正できん事についての文句は作ったやつに言うてくれ。まぁ、手違いを起こしたんは儂じゃし、そこは申し訳なく思っとるよ。それで、お前さんの転生先じゃがな、いわゆる異世界というところじゃよ。お前さんが今まで生きてきた地球ではない。全く別の空間にある世界じゃ。因みに、そこは魔法があるぞ。まぁ、生活水準としてはお前さんが生きとった日本に比べるとかなり劣るが、生きていけんこたぁないじゃろ。しかし、弱肉強食の世界じゃからな、強くなけな生きてはいけんわ。儂に出来んことはないぞ。世界最強に、でも良いし、お前さんも女じゃからな、世界一の美女に、という願いも聞けるぞ。今なら、願い事はいくつでも構わん。」
私はしばらく考えさせて欲しいと言って、一人にしてもらった。
私にも家族がいる。
27歳という事もあり、実家を出て一人暮らしをしていたが、それでも親や兄弟の事を考えると死んだという事が信じられない。いや、信じたくない。
普通に仲の良い家族だった。
自分で言うのもどうかと思うが、きっと私が死んだとなれば、あの人達は私の死を悲しんでくれるだろう。
それを思うと、とても辛い。
「…せめて、家族の記憶だけでも…消せないかな…なんて…。」
思わずポツリと出た言葉は返答を期待したものではなかったが、それに答える声が上がった。
「お前さんがそれで構わんのなら、お前さんの家族含め、お前さんに関わった人達の記憶を消すことは可能じゃよ。」
びっくりしてそちらを見ると、神様がそこにいた。
曰く、私という存在はなかった事になるが、私に関わった全ての人は、そもそも、私という存在がなくなるのだから当然と言えば当然だが、私の死を悼んで悲しむということはないらしい。
それを聞いてほんの少しホッとした。
結局私は、私に関わった全ての人から私に関する記憶を消してもらう事にした。
何とも言えない寂しさのようなものはあったが、もう地球には帰れないし、彼らに会うことも叶わない。
彼らも私の事を忘れてくれた方が、原因不明の突然死をした家族を見るよりは幾分も良いだろうと思ったのだ。
斯くして、私は異世界転生後に普通に生きていけるだけの強さを望んだ。
「ふむふむ。普通に生きていけるだけの強さとな。まぁ、しかしそれだけでは流石に申し訳ないからの。うぅむ。そうじゃ、転生すると記憶が消されるのじゃが、お前さんは特別に残してやる事もできるぞ。さらには、おぷしょんとして赤子からスタートなところを好きな年からにしてやろう。」
そう言って、勝手にふむふむと納得している。
別に記憶があって困ることはないだろうし、それも好きな年に転生させてくれるというのだから異論はないが。
仮にも30間近である。
記憶も全く役に立たないことはないだろう、そう思いそれで大丈夫だと伝える。
その後は、転生する為の準備だと言って神様が何やらしていたようだったが、私は特にすることも無かったので、ここ最近仕事によって忙殺されていた時間を取り戻すかのようにただひたすらぼんやりと過ごしていた。
気がつけばその準備とやらも終わったようだ。
「さて、残るは転生した後、お前さんの希望通りになるように設定するだけじゃ。転生する年齢はどうする?」
「うーん。今の年だと流石にちょっと体力的にしんどいし、かと言って、幼すぎるのもそれを取り繕うのが面倒だし…。15、6歳でお願いします。」
「ふむ。ポチポチっとな。容姿は?」
「えっと…、ザ・モブ顔。平々凡々でお願いします。」
「ふむ。欲のないやつだのぅ。…あ!むふっ」
今の不気味な笑いはなんだ?
変なことしてないでしょうね、と睨み付けると、態とらしく目をそらされた。
「こほん、後は強さじゃな。普通に生きていける程度じゃったな。ふむ…」
なんかまた最後の方、私の方を見てにまぁ、と笑ったが、つっこむのもめんどくさいのでそのままスルーすることにした。
「これでよし、他に何か希望はあるかの?なければこのまま転生作業に移るが。」
「いえ、特にありません。」
「あぁ、そうじゃ言い忘れておったが、転生しても言葉は分かるようにしておくでな。その辺は心配いらんよ。それと、転生後、困らんように最初だけ転生する世界の神に頼んでその世界の基本的な事については説明してもらえる様に頼んでおいたぞ。分からんことがあったら、胸の内で問いかけてみれば、恐らく返答が返ってくるじゃろ。こんな所でええかの?」
「あ、はい…、あ、そうだ、転生先は出来れば森の中とかじゃなくて、街に近い方がありがたいんですが…。(魔物がいるって言うし、ちょっと危ないところには転生したくないな…。)」
「む?そうか、分かった。そのようにしよう。…えぇと、確か、これをこうして…、ん?あれ、あ、こっちか。うむ、これで恐らく大丈夫じゃろう。
では、行って来るが良いぞ。異世界らいふとやらを楽しんでな。」
そう言って、神様は手を振った。
その瞬間、また再び意識が遠のいていった…。
––––––––––––そして、目が覚めた私は、森の中にいた。
周り360度幾ら見渡しても街らしき影は全く見えず、どこまで続いているのか気が遠くなりそうなほど深い、深い森の中に一人取り残されたかのように佇んでいる。
さらに悪いことには、ここが何処なのか、胸の内に何度問いかけても返事は返ってこず、遂には声に出して聞いてみたものの、それでも返事はなかった。
ここまで、目が覚めてからおよそ5分。
「ふっざけんなあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
こうして冒頭に戻るのである。
お読みいただきありがとうございます。




