吸血鬼
登場人物
司教
神父
局長(??)
吸血鬼
衛士
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司教「さぁ、みんな。お休みの前に神に祈るのです。Amen」
神父「Amen...今日はこれで終わりですね。」
司教「ええ、そうですね。また、今日もですか?」
神父「もちろん。では行ってきますね。」
司教「お気をつけて。最近、奇妙な噂があります。子供達もあなたのことを慕っておりますから、ちゃんと帰ってくるのですよ。」
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吸血鬼「すぅ...はぁ...ん゛ん゛、臭いな...。ここは人間の匂いに溢れている。すぐにでもと私の体が血を求めている...」
衛士「主人殿、お気を確かに。飲まれてしまっては計画が頓挫してしまいます。」
吸血鬼「ふふっ、分かっている。相変わらず過保護だな。」
衛士「これでもあなたの3倍以上は生きておりますので。」
吸血鬼「ふふふ...年の功とでも言うのか?」
衛士「私はあなたの僕ですので、とやかく言うつもりはありませんが。ついついお世話していたときのクセが出てしまいますね。」
吸血鬼「そうか...頼むぞ。この先も。」
衛士「御意」
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神父「局長!局長はいるか!」
局長「はいはい、いますよいますよ!はぁ、大体ここでダラダラしてるんですから、そんな大声ださないでくださいよ。」
神父「ダラダラしすぎて私の武装の発注を忘れていたのは何処のどいつだったかな...?」
局長「うぐっ!わ、分かりましたよぉ...」
神父「で、今回は大丈夫だろうな?」
局長「もちろんですよ。さすがに2回もやりません。」
神父「だといいがな。金はすでに払ってあるんだ。持ってきてくれないか?」
局長「はいはい、ここに。」
神父「ほぉ...?こいつが」
局長「ええ。聖十字架、聖釘、聖槍、聖骸布、聖杯、ことごとくローマから失われた聖遺物の1つ。『聖槍ロンギヌス』」
神父「なるほど...」
局長「まぁ、今のところ見つかっている聖遺物がこの槍だけなので。上層部からしたらさっさと適合者を探して化け物退治をしてほしいのでしょうな。」
神父「そうして見つかった適合者は私なわけだが...こいつは、いささか」
局長「『似ている』ですよね?」
神父「ああ...あまりにも状況がな。」
局長「あの話は、あの神父が残された最後の聖遺物である『ヘレナの聖釘』を使い、吸血鬼に討たれた。という記録がありますが、確かに似ている...。」
神父「まぁ、残された聖遺物は違うわけだが...はぁ、なぜ聖遺物は1つしかないのか。化け物を一掃するための聖遺物ではないのかね?」
局長「それは未だに解決されてない謎ですね。前回の改造人間事件では聖骸布のみが現れましたから。」
神父「これはゲームではないのだぞ...」
局長「向こうからしたら楽しい楽しいゲームでしょうよ...」
神父「.........そうか、では。」
局長「お気をつけて」
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衛士「...これで30」
吸血鬼「100年前より力が落ちたか?」
衛士「申し訳ないことに、そのようで。これは足手纏いになるかもしれません。」
吸血鬼「よい。その分着実に行こう。急ぎ過ぎも良くないからな。」
衛士「感謝の極み。」
吸血鬼「そう堅くならなくともよい。それよりも、だ。此奴らはどこの使いだ?」
衛士「そうですね...この腕章は、正教会のものか?いや、武装からするとカトリックか...」
吸血鬼「結論は出たか?」
衛士「...ええ、確実なものではないですが...この腕章は偽装のためのもので、正体は聖ガリル空挺騎士団のようですね。よいしょ、この死体の右腕には聖ガリル勲章があります。これが証拠と言いますかね。」
吸血鬼「なるほどな。偽装された側は何だ?」
衛士「恐らく、英国国境騎士団のものかと。」
吸血鬼「ふむ...どうやら100年前と同じことを繰り返したいみたいだな。この首謀者は。」
衛士「と言いますと?」
吸血鬼「私の力の源泉とも言えるあの吸血鬼。アーカードとか言ったか?あいつと神父の戦いは知っているな。あれを再現しようとしている。今度は吸血鬼が負ける結末でな。」
衛士「なるほど...ならばこちらに差し向けられている神父もいるわけですな?」
吸血鬼「ああ、大方そうだろうよ。聖遺物を持ってな。」
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神父「こいつは...」
局長「うへぇ...おぇ...何ですかこれ、てか何で私が付いていくハメに。さっき、お気をつけて。とかめちゃくちゃカッコよく決めれたのに...うぇ。」
神父「ハズレのクジでも引いたと思っててくれ。それより、こいつだ」
局長「うわぁ...断面が。おぇ...」
神父「いや、そうじゃなくて。武装だよ武装。武器に詳しいあなたならどこのものか一目で分かるのではないか?」
局長「まぁ、確かにそうですけど...うぅ、臭い...これは、聖ガリル勲章?けど、腕章は国境騎士団のもの...」
神父「やはり、か。」
局長「うぇ?」
神父「どうやら私たちは嵌められていたようだな。」
局長「え?どういうことです?」
神父「つまりはこうだ。英国国境騎士団を私が攻撃すると再び正教会とプロテスタントの宗教戦争が始まることは目に見えている。それを引き起こすために、偽装をし、ここで待ち伏せていた。しかし、何者かによって殺害された。ということか。」
吸血鬼「そう、その何者かがこの私だ。」
局長「だっ、誰だ!」
神父「おいおい、盗み聞きとは。タチが悪いぞ?誰かは知らないが、私すら気づくことが出来ないとは...。」
吸血鬼「いい夜だ。血が騒ぐ。...それに私たちは嵌められて、歴戦の再戦と洒落込むらしいしな。」
神父「そうかい、そりゃ結構なことだな。...局長、逃げれるか?」
局長「...いや、違うぞ。」
神父「何してる、早く」
局長「あ、ああああの!お、おおお聞きしてもよろしいでしょうかぁ!」
吸血鬼「何だ?ニンゲン。ふっ、ふはははっ、よい!その勇気をもって免罪の処置とするぞ。」
局長「え、あ、ありがとぉございますぅ!で、では、失礼して、えっと、先ほど歴戦の再戦とおっしゃっておりましたが、あれはどういう...」
吸血鬼「ほう?先ほど貴様らも推理をしていたのではないかね?衛士、軽く説明を。」
衛士「御意。先ほどあなた方の推理にもありましたが、騎士団の偽装、他の組織の陰謀、などは確かに我々と同じ。しかし、その先が見えておりません。」
神父「その先、だと...?」
衛士「ええ、騎士団同士の潰しあいの後に起こる、吸血鬼アーカードと神父アンデルセンの再戦とも言うべきでしょうかね。要は、我が主人とあなたが戦い、あなたが死ぬのです。」
神父「あの話か...だが、私はアンデルセンではないぞ...」
吸血鬼「ああ、私もアーカードなどというものではない。だがな、状況は同じだ。分からぬか?」
神父「なるほど、つまりは私とあなたは首謀者からするとここで殺し合いをしているはず、か。」
吸血鬼「そうだな。だが、ハッキリ言おうか。私は争う気はない。逆にだ、共闘しようではないか。」
衛士「んなっ!共闘ですと!」
神父「ほぅ...これは、面白くなってきたぞ。」
局長「き、き、吸血鬼側からのき、き、き、共闘の申請...これは歴史的事件だぞ...。」
吸血鬼「どうかね?私としてはこんな掌で遊ばれているような状況は最も嫌うのでね。早急に解決したいのだが。」
神父「1つ、確認したい。」
吸血鬼「何かね?」
神父「あなたは何者だ?」
吸血鬼「ふははは...これはこれは申し訳ない。ご紹介が遅れたようだ。我が名はアルカード。しがない唯の吸血鬼だ。」
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司教「A、men...あぁ、AmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAmenAメェェェェェン!!」
??「そうです。祈りなさい、祈って祈って祈るのデス...」
司教「あ、ぁぁ...」
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局長「それで、なんで私の執務室で集まってるんです?」
神父「いやー、吸血鬼お二方を泊めることが出来る場所なんてほぼ無いですから。」
局長「だからって、私の部屋になんて」
吸血鬼「ほぉ、こいつは珍しいな。私の館にも飾りたいものだ。」
衛士「主人殿、これはすでに倉庫の方に大量に置かれております。」
吸血鬼「そうだったかな?」
衛士「全く。」
吸血鬼、衛士「ハッハッハッ!」
神父「な。」
局長「確かに...。すでにいっぱいですし。」
吸血鬼「フッフッフッ、すまないすまない。ここに置いてある物で話に興が乗ってしまったよ。それで?所謂、作戦会議というやつかな?」
衛士「こちらの席でよろしいですか?」
局長「ええ、どうぞ。」
神父「まぁ、そうだな。作戦会議ともいかないが、誰が首謀者であるのかということを確かめる、だな。」
吸血鬼「ふむ、そうか。ならば単刀直入に問うとするか。」
神父「何を、ですか?」
吸血鬼「貴様のところの司教は本当に、白、か?」
神父「...ふふふ。すいません。私と同じ考えの人が、いや、吸血鬼がいてくれたとは...嬉しい限りです。」
吸血鬼「そうか、やはりか。」
局長「え、ちょ、ちょっと待ってくれ。司教様を疑ってるって...吸血鬼のあなたなら、まだ理解できます。恨んでいるとかそういう理由付きですが、しかし、あなたは、パトロン!司教様の下にいながら何故!」
衛士「落ち着きなさい。まだ、そうと決まった訳ではない。」
吸血鬼「確かにその通りだ。局長と言ったか?この私を前にしてよく立ち上がった。」
局長「あっ、いえ、それは」
神父「そうだ、確かに私は司教の下にいた。だが、これは警戒の意味もある。私は唯の槍だ。唯の聖遺物適合者だ。だからこそだ。司教は何も染まっていないものを望んでいた。それが私だっただけ。だから私は等しく断罪する。...それだけだ。」
局長「...」
吸血鬼「フッ、だそうだ。局長。後は我々に任せるといい。こいつは薄情らしいが、貴様への信頼は本物だ。」
衛士「では、パトロンさん?その司教とやらがいる場所へ案内できるでしょうな?」
神父「...ええ、行きましょう。あの施設へ入る裏道と鍵は私が持っています。それと局長。あなたはここにいてくれ。」
局長「そ、そんな。私も」
神父「正直に言おう。邪魔になる。」
局長「そ、そうか。すまない...。」
神父「では。」
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??「...さて、そろそろ演者が揃う頃デスね。」
司教「や、やめ、なさい...」
??「おんやぁー?まーだ喋れますかー。では、その舌をチョキッ!と切って差し上げマスゥ?」
吸血鬼「ぬんっ!...ふふふ、邪魔をするぞ?」
??「おお、これはこれは〜。ようこそ、皆様。お待ちしておりました、パトロン殿にアルカード殿。」
司教「あ、あぁ...」
神父「これは...」
吸血鬼「まるで、私たちがここに来るのが分かっていたかのような言い方だな。えぇ?」
??「もちろんデス。私がそう差し向けましたから。」
神父「何...?」
??「おや、どうやら気づかぬまま連れて来たようで?それはそれは右も左も分からず可哀想に...」
神父「我々がここに来た時点で計画は頓挫するはずではないのか?」
??「そうだといいですね。クヒヒヒッ」
衛士「不味いですね。」
吸血鬼「ああ。こいつは一本取られたな。」
神父「嘘...だろ。」
局長「ええ、そうですねぇ。一本取りましたよぉ〜?あぁ、一命取った。とも言いましょうかねぇ。クヒヒヒッ。」
吸血鬼「大方、我々の見ていた局長はすでに抜け殻なのだろうな。奴は人の体内で増殖し、体ごと乗っ取り成長をする。貴様ら人間のほうでは勘違いの名だが、改造人間事件で処理されている案件だな。」
神父「そうか、分かった。やつが全ての悪だな。」
衛士「まぁ、そうなりますね。」
神父「ならば、この槍を使っても文句はないだろう。」
局長「ハハハッ!そいつはロンギヌスかい!?ハハハッ!いいねぇ〜最高ダネェ!」
神父「黙れ」
局長「ウッ!...おお、早いなぁ。キミィ、私の右腕返してよ。というか、いきなり心臓狙うとか空気読めないねぇ...。」
神父「避けられた...だと。」
局長「ノーンノン、甘く見ちゃダメですヨォ?」
吸血鬼「なら鉛玉を埋め込んでおいてやるよ。」
局長「クヒヒヒッ!遅い遅い遅いなぁ!」
衛士「私をお忘れなく。」
局長「っ!?...イテテ、どっから湧いて来たんだい?キミィ...あーあ、せっかくのパーフェクトボディがー、なんてね?」
吸血鬼「ほう?我々ほどではないが、それなりの修復能力があるわけか。」
局長「そぉーだよー、アルカードくぅん。いやー、前のアーカードクンより聞き分けがあっていいねー。」
吸血鬼「ほぅ?なるほど、先代が、ねぇ?」
衛士「不味いですな。」
神父「はぁっ!!」
局長「えい、よっと」
神父「ぐはっ!ぐぅぅ...ふざけやがって...」
局長「えぇー、弱いなぁ...うーん、このあとやることがたくさんあるしなぁ...飽きた。」
神父「は?」
局長「私はやることがあるから、あ、そうだ。あと、勝手に人のテリトリーを荒らすもんじゃないぞ?ゴミめ。クヒヒヒッ。バイバーイ」
神父「なっ、ま、待て!」
吸血鬼「ふ、ふふっ、ずいぶんとナメられたものだが、先代との戦闘経験があるとは。しかも生きている...こいつは一筋縄ではいかんな....。」
衛士「しかし、先代とともに生きている私ですが、あのようなものは記憶にないですな。」
神父「やつは、笑っていた。ずっと、まるでお遊戯会でもしてるような顔だ。」
吸血鬼「それはそうだろうな。我々はそのお遊戯会で決められた通りの演技をしてしまったらしいからな。それは笑うだろう。凄絶にな。衛士、追うぞ。」
衛士「御意。」