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長門未来の六道輪廻  作者: 九JACK
第四の道 修羅道
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生き残るのは

 私は髪を伸ばせなかった。医者の言う実験のための素体として、私の髪が必要だったのだという。

 私はいつからか髪が伸びなくなった。医者はノートにその異常をこう綴っていた。「遺伝子異常」だと。

 まだ研究が途上である故、完全な人間にはなれていなかったのだ。

 私のコピーであるナガラは、コピーミスにより、私の持っていたものを失い、私が失ったものを得ていた。

 私の持ち物は少ない。失ったものの方が多い。そう、例えば『未来』とか。




 名は体を表すというが、私の場合は全くそれが当てはまらない。

 未来に辿り着けない私。それが長門未来で、未来に辿り着けた私が富井永良なのだ。




 私の手が止まった。

「どうしたの? 殺さないの? 殺気はどこに行っちゃったのさ」

 私の殺意の消失に気づいたナガラが問う。きっと、気づいているのだろう。この決闘の虚しさに、無意味さに。

 決闘を見守っていた阿修羅と夜叉に問う。

「この勝負、棄権はありなの?」

「……よく気づいたな」

 阿修羅は冷たい目をしていた。

「降りることは可能だ。別に魂を破壊するのは誰でもいいんだ。例えば、俺とかでもな」

「わざと黙っていましたね?」

 阿修羅は肩を竦める。

「そりゃ、な。スーからナガトミライという人物の話は聞いていた。お前らがここに流れてきたとき、とうとう来たか、と思ったもんだ」

「まだ黙っていることがあるでしょう?」

 私が追及すると、阿修羅は気まずそうな顔になる。そんな阿修羅と私の間に夜叉が割って入った。

「わたくしから説明致しましょう。

 あなたたちの決闘は、謂わば時間潰し。わたくしたちの退屈を紛らす目的と──」

 夜叉が続けようとしたところで、空間に揺らぎが生じる。夜叉が目を細めて、「来ましたね」と告げた。

 空間がゆらゆらと揺れて、黒い靄が発生する。その靄は徐々に形を得、やがて見覚えのある人物の姿になった。

 黒髪を項から三編みにして、青いチャイナ服を纏う、琥珀の瞳の青年──現在六道輪廻の(シェン)である、リウだった。

「お久しぶりです、ラオ様」

「様はいらん、お前も今はシェンなのだろう?」

 威厳のある空気を放つ阿修羅が、リウに楽にしろ、と告げる。リウは生真面目な面持ちで阿修羅に言った。

「この世界に必要であろうものを持って参りました」

「……ふん、早かったな」

 阿修羅はつまらなさそうだ。夜叉はいつも通り、無表情である。

「この世界に、というか、その二人に必要なものでしょう?」

 夜叉が指摘すると、リウは振り向いた。久しぶりのような気もするが、輪廻での時間軸はわからない。もう捻れに捻れてしまっているのだから、時間という概念を口にすることすらおかしいように思えた。

 リウは重々しく口を閉ざし、しばらくして阿修羅に目を戻して告げた。

「残念ながら、手に入れられたのは一人分のみです」

「まあ、予想はしていたが」

 阿修羅も苦笑いする。一体何の話をしているのだろう。

 そう思うのと同時、リウの腕の辺りの空間が揺らいだ。

 そこに現れたのは、



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