濡羽の建国物語
私の名前はクズノハC-12-443689。皆は私達の事をクズノハと呼ぶ。
私達はキョウの都の守護者とでもいうべき存在である。キョウの周辺で冒険者達が暴れればすぐにでも駆けつけて事件を解決するのが私達の役割だ。
私達はキョウを守るために幾つもの能力を持っている。
「キョウの近くに冒険者が来れば、すぐに探知する能力」「冒険者と1対1で戦えるだけの戦闘力」「人として扱われない能力」「????????の能力」「キョウに事件が起きればすぐさま察知する能力」などなどだ。
「冒険者が来ないな。」
パチンと将棋をうちながら、私の同僚がそう言う。
「そうですね……この時期になると「スザクモンの鬼祭り」で冒険者達の一部が確認にくる時期なのに。」
そう言いながらも、私達はこの門を守り続けるのが仕事なのだ。
「……はあ……。」
そう言いながら、私達は門を守り続ける。そんな中1人の冒険者がやってきた。
「……何をしに来た? ここはキョウの都! 理由なき者は入る事が叶わぬ!!」
そう言って、私はその冒険者の姿を見る。
狐尾族だというのはわかるが、恐らく魔法使いだろうというのは装備からわかる事だ。
「……理由ですか? そうですね。キョウの都はもうそろそろスザクモンの鬼祭りが始まる時期だと思います。」
「それがどうした?」
「今のミナミはとてもひどい状況です。もしかしたらスザクモンの鬼祭りがあったとしても誰も来れないかもしれません。」
その言葉に我々は顔を合わせる。確かにその話は聞いたことがある。しかしながら、それとこの女が来たことと何の関係があるのだろうか?
「………少しお話をしましょう。
私は、ミナミの冒険者を何らかの手段でまとめる必要が出てくると思います。それも数か月でです。
それ以上に時間をかければきっとキョウの皆様にご迷惑をかけてしまうでしょう。
ですが、私には時間が足りません。ギルド同士の対立などそれどころではない状況が続いているのです。」
そう言ってその女性は指先を複雑に動かす。
「もし、ほんの少しでも心動かされたのなら、この事を貴族の方に伝えて欲しいのです。
その為の力が必要なのです。その為の案の一部をこちらに持ってきましたので、どうかお願いしたいのです。」
「わかりました。ですが規則ですので貴方をキョウに入れるわけにはいきません。
ここで待機していただけませんか?」
「はい、わかりました。」
「………それで、私に話を持ってきたとな。」
「はい、話を伝えるだけでよいとの事でしたので……。」
私達は直接の上司に声をかけると、上司はやや複雑な顔をして答えた。
「ふむ、お主達、このヤマトに冒険者の町は5つある事は知っておるな。」
「ミナミ、アキバ、ススキノ、ナカス、シブヤの5つですよね。」
「その通りじゃ。じゃがその中で最も多きな町はどこか知っておるかの?」
「……アキバです。」
「その通りじゃ! わかっておるか? このウェストランデを無視して冒険者はイースタルに集うておる!
正統性も力もこちらの方が上だというののじゃ! そして5番目のシブヤ……そこもイースタルの中じゃ!」
そう言ってその男は我々をにらみつける。
「わかるか? この屈辱が?? 何の魅力もないイースタルに2つも冒険者の町があるというのに、我々には1つしかない!」
「……我々にはわかりかねまする。」
我々のリーダーがそう言って、返事を行う。
「もしも、スザクモンの鬼祭りが始まれば、キョウの都は大混乱に陥るだろうと書いてある。
その上で、現状においては、ミナミの冒険者が兵を出さぬ可能性もあると書いてある!!」
「……申し訳ありません。我々はその書状を確認しておりませぬがゆえに………。」
「わこうておる。これは私一人では決められぬ所存じゃ。皇に聞いてまいるがゆえに、お主達はその冒険者の相手をしておくのじゃ。」
この報告書は一気にキョウの都に論争を巻き起こした。
「この金貨の量は何だ? 一体どれだけの金貨が必要になると思っている?」
「冒険者の持つ秘宝級装備1つを手に入れるのにどれだけの金が必要だと思っている?
金だけで済む話ならば、それに越したことは無い!」
「……冒険者の町の支配……クニエ一族が黙ってはおらぬぞ!!」
「それについては、彼女に策があるという。どこまでうまくいくのかはわからぬがな。」
喧々諤々の論争が続く。
「…………会ってみようではないか。その女狐に。して名前は?」
「濡羽と名乗っておりました。」
「何じゃ普通の名前じゃのう。冒険者はもっと奇抜な名前の奴も多いからのう……。」
上座よりそのような声が聞こえる。
命令でなければ私達には関係のない事だ。
それからの話はトントン拍子に進んだ。
冒険者の町の支配については、冒険者に暴れまわられるリスクと、使用される金貨の枚数のリスクの比較が何度も何度も計算がなされた。
もしも何らかの形で冒険者が暴れた場合、その被害額を見て帝が気絶しそうになったらしい。
これは彼女ではなく、我々が計算した結果なので間違いない。
しかしながら、別のリスクも存在した。
「クニエ一族はどうする?」
その言葉に全員が黙り込む。
「あの町の支配者はクニエ一族だ。それを無視して我々がミナミを支配するといっても問題が出てくるはずだ。」
「……それについては、一つ私に考えがあります。」
そう言ってその女性はクスリと笑う。
「そうですね……彼女を連れて生きたのですがよろしいでしょうか?」
何故か、彼女は私を指さした。
「……こやつをか……。何かは知らぬがあいわかった。」
「……できればもう1人お願いします。」
「ここがミナミの町ですか?」
そう言って私は町の門を見る。
明らかにこちらを狙っている冒険者達がいる。
「3人か。」
「ああ、片方は付与魔術師……5人がかりでかかれば問題はねえ!」
そう言ってその冒険者達は私達目がけて襲ってきた。
「が…が…が……そんな護衛インチキじゃねえか……。ノーマルランクの……。」
詳しい話は省くが私達は襲ってきた5人の冒険者をぶちのめすと、一度休憩してから色々とやってミナミの町へと入る。
「……それで、ここからどう行けばよろしいのでしょうか?」
「まずは銀行ですね……そこで少し話をしましょう。」
そう言って濡羽様は私達を連れて町の中心へと向かった。
「……また貴方ですか。言ったはずです。ここのシステムを変える必要はないと。」
そう言って銀行の人間は、にべもなく濡羽を退けようとする。
「本当にそうでしょうか?」
「ですから、何も問題はありませんって!」
「では、少し見てほしい物があるのです。」
そう言って濡羽はバッグから『何か』を取り出した。
「サンドバッグ?」
それは冒険者がスキルの練習に使用する、サンドバッグと言うものだった。
サンド(砂)とついているがそれは木でできている。きっと何処かのサンドバッグと言う人が開発したアイテムなのだろう多分。詳しい事は知らないが。
「……事前に話した通り、お願いします。」
そう言って私に声をかけてくる。周辺を気にしつつ私は『変化』を開始する。
これこそが『クズノハ』の奥義。自らの姿を魔獣に変えて戦闘力を増加させる、我々の切り札なのだ。
これにより我々はキョウの都に不用意に冒険者が入る事を防いでいたのだ。
だが、これの何処に世界を変える力があるのかわからない。
わたしはサンドバッグを思いっきりぶん殴る。
「…はいアウト。衛兵が来ますのでしばらくお待ちください……。」
そう言って銀行の係員はやれやれと言った雰囲気で隠れる。
10秒ほど沈黙が続いたのだろうか。しかしながら衛兵とやらは来ない。
「そんな……召喚された生物が攻撃を行えば衛兵が召喚者を殺すために来るはずだ!」
「……さて、どうしてでしょうね?」
濡羽はそう言って係員の言葉に返す。
係員は机の下にしゃがみ込むとそのまま呟きだす。
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……。」
係員はそう言いながら、恐怖を感じている。
「都市防護結界は、モンスターのみはじく、衛兵はモンスターを襲わない。
ですから、このように防護結界を抜けられる、人間に変身できるモンスターならばこのように攻撃を行えるのです。」
「そんな! 殺さないでくれ!!」
衛兵の叫び声が銀行内に響く。
「……銀行の業務に関しては信頼の上でなりなっているのはわかっています……。
ですが、衛兵のルールに関しては本当にこれでよろしいのでしょうか?
現状のルールの問題点を1つずつ解決していきたいのです。」
そう言って濡羽はそっと指を動かした。
「わかりました。とりあえずここでお待ちください……上司に伝えておきますので……。」
「そうですね、4時間ほどここで待とうと思います……間に合わない場合は……キョウがどう動くかわかりかねますわね。」
これは本当の事だ。キョウとしてもなるべく早い段階でこの状況を打破すべくどのような行動をとるのかさっぱりわからないからだ。
かくして、衛兵の行動は変わり、ミナミの町は大きく様変わりをした。
それから先は色々と長くなるので省くが、こうして一大ギルドミナミPlant Hwyadenが完成した。
ややこの行動に反発している冒険者もいるがそれについては現在我々の活動中だ。
「………もしも濡羽様の行動が遅れていたらと思うとぞっとするな……。」
モンスター達の暴れた跡が残るキョウの都で我々はそう相談をしていた。
「……せめてこの恩を返さねばなるまい。」
「ならば、これは我々の力全て使い、情報を集めるとしようか。」
ちょこっとフォローしますと、ちょくちょく濡羽が指を動かしているのはコマンドを使っています。
<娼姫>のスキルで<一定時間ある町に滞在する事で、ちょっとした金額を得る+都市好感度上昇>の<秘密の会話>と言うコマンドを使って一時的に都市有効度を上昇させて交渉を有利に進むようにしている……と言う設定です。
色々とやらないのかというと、<エルダー・テイル>は全年齢対象のゲームの為そう言って描写は表には出ていませんのでそういう事をやらなくても好感度を上げられるっていうのが理由です。
それでは2016年もよいお年であることを祈っています!