第21指導 犯人の要求
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雄大、裕二に連絡してからおよそ二時間が経過し、雄山の端末に非通知の電話がかかってきた。
「誰だ?」
【キラーマウンテン、大和雄山だな?】
「名を尋ねる時は名乗るのが流儀だろうが!」
【そう急くな…だが今の声で貴様が大和雄山だとわかった。私は貴様が探しているものを預かっているぞ】
「詐欺師みたいな電話をしても無駄だ。第一俺が探しているものって何なのかわかっているのか?」
【無論、貴様の探しているものはこれだろう? テレビ電話にしたまえ】
言われるがままにテレビ電話に変えるとそこには縛られている東堂の姿があった。
「…東堂!」
【これで信用してもらえたかね?】
「てめえ…どこにいる!?」
【落ち着けキラーマウンテン。まあ凡人たる君の単細胞な頭では落ち着けといっても落ち着けないか】
電話の相手は雄山を挑発し、煽る。そうすることで冷静さを失わせ交渉などを有利に働かせる。
「喧嘩売ってんのか?」
【でなければ誘拐してもデメリットの大きいへっぽこ吸血鬼なんか攫わないし、殺した方がマシだ】
東堂がそれに反論しようと暴れるが無駄に終わる。
「東堂、お前がへっぽこ吸血鬼なことは事実だろうが。それよりもてめえの用件は俺を挑発するだけか?」
【いやいや。私の本命はそれじゃない。あくまでついででしかないのだよ。このへっぽこ吸血鬼を返して欲しくばそこから北の方向に見える山の頂上に来い。もちろん貴様一人でだ】
へっぽこ吸血鬼と何度も言われ東堂が落ち込んでいるのを無視して二人は話を進めた。
「北の山…到来山か」
【そうだ。ちなみにこの吸血鬼の持っている携帯や私の電話番号を使って居場所を探そうとしても無駄だ。電波が届かないように管理しているからな】
「通りで裕二が手間取っているわけだな」
【何度でもいうが一人で来い。さもなければこのへっぽこ吸血鬼は解放しない…わかったな】
「…わかった。その要求は呑もう。だがこれだけは覚えておけ…てめえが誰だかわかった時、俺はお前に執着して殺る…覚悟しておけ。」
【くくっ…面白い。やってみせろ】
電話が切れ、雄山は怒りのあまり地面を殴り、地割れを起こした。
「あのクソ野郎が…東堂に何かあったらタダじゃすまさねえ」
雄山の怒りは只ならぬものであり、かつてないほどだった。雄山の逆鱗に触れる行為は『弱みに付け込む』『守るべき存在が危険に晒される』『油断する』のいずれかであり、今回の東堂誘拐は全て当てはまっていた。
最後の『油断する』に限り雄山自身に対する怒りであるが、そもそも電話の相手が東堂を誘拐しなければ怒ることもなかったので、誘拐犯の所為ではないとは言い切れないのだ。
「(だが報告しておくか。過ぎたことをああだのこうだのといってもどうしようもねえしな。…となれば大兄貴よりも先に裕二に連絡した方が良さそうだな。大兄貴に誘拐したと連絡したとは言え東堂の行方を捜索を頼んだ訳じゃねえ)」
雄山は冷静に頭を働かせると端末から電話をかけ、これまでのことを裕二に報告した。
「…という訳だ。裕二。東堂の電波は届かないようになっている」
【それは妙だね…】
「ん…? 何がだ?」
【確かにその誘拐犯の言う通り、僕が幾らやっても美帆ちゃんの携帯電話の電波は受信出来ない。でも雄山はテレビ電話で縛られている姿を見たんだろ?】
「それがどうした?」
【僕の会社と契約するとどこでも電波が必ず届くようになっている。詳しく説明すると宇宙空間や地球、その他大勢の星にはUJっていうある電波Hを感知する物質がある…その電波Hを感知したら別の電波Iを発生し、反応するようになる。だけど面白いことにその電波Hを少し弄ってUJに反応すると電波Iが特定のものになって特定の携帯電話に繋がるようになる。つまり処理も早く終わるから回線も問題ないし、宇宙空間であってもUJがあるからどこでも繋がる。ここまでわかる?】
「…さっぱりわからねえ、わかりやすく頼む」
【ようするに僕の会社と契約していれば余程特殊な環境でもない限りは携帯電話で場所を特定することが可能ってことだ。だからテレビ電話で繋がる場所の近くに電話はない】
「何かその特殊な箱にでも入っているんじゃないか?」
【確かにその可能性はある。けれどその電話の相手の番号はわからないとなれば感知できないし、何よりも美帆ちゃんがそこにいるとは限らない。後数年すれば過去の電波を逆探知してやることも出来るけど今は無理。犯人から電話がかかってくるまで待つしかないし、専用の道具も必要だ。何にしても罠である可能性が高い】
「まずその前に一つ尋ねるが裕二が誘拐犯なんてことはねえよな?」
【ないよ。雄山の居場所に目星がついたとしても僕から雄山に電話をかけてからもずっと会社にいたんだし、会社からそこまで移動して車を使っても山道だらけで誘拐どころじゃない。よしんば誘拐したとしてもメリットがまずない】
「…確かにそうだな」
雄山は確信した。裕二は東堂を誘拐した主犯でも共犯でもない。その理由は誘拐犯であれば誘拐犯の特徴である大柄な男と自分を比べて無罪であることを主張してしまうものだが雄山は犯人がどんな特徴なのかは伝えていない。つまり裕二が誘拐犯だとしたらすでにボロを出している。だが裕二はその点に関しては何も言わなかった。裕二がその事をわかって言っているならば話は別だが何よりも裕二にはその動機がなく、東堂を誘拐しても何の役にも立たない。
【とにかく美帆ちゃんの映像は合成の確率が高い…雄山を誘き出す罠だ。いくら雄山がキラーマウンテンって呼ばれた陰陽師でも危険すぎる! 止めておけ】
裕二は雄山が優秀な陰陽師であることを理解していた。確かに知能面で言えば雄大や裕二に劣るが雄山の強さは知識ではなく知恵だ。つまり未来を切り開くのに必要な発想力と応用力。その力が雄山に備わっており、今までの事件もこれで解決してきた。だが今度ばかりは雄山に足りないもの…つまり知識が必要になってくる。
「んなことはわかっている。だがこのままじゃ何も進まないだろ?」
【…ああ、もう! 雄山は相変わらず頑固だな。今、雄山は…那須脇旅館にいるのか?】
「そうだ」
【そこまで4時間程で行けると思うから少し待ってろ。そこで僕も合流する】
「…わかった」
そして裕二の電話が切れると雄大に電話をかけたが出なかった。
「大兄貴が電話に出んわ…くだらねえ駄洒落言っているよりも何とかしねえとな」
雄山は端末をしまい、ポケットの中に入れて手を出し、途中でそれを止めた。
「…その前に東堂が本当にそこにいるのか調べればよかったんじゃねえか?」
雄山は誘拐犯に交渉すべき点があったことに気づくが、後の祭りである。しかし何もかもがと言われればそうでもない。東堂の携帯電話に電話をすればいいのだが電話に出るかどうかは不明である…しかし雄山は少しでも可能性にかけて東堂の携帯電話に電話をかけた。
【…この携帯電話の番号は電波が届かない状況にあります。しばらく時間を置いてから電話をおかけしてください】
「(…どうやら奴らは本物の誘拐犯のようだな。こっちからは干渉出来ないが向こうからは干渉が出来る。これほど望ましいことはねえ。だが…)」
あまりにも準備が良すぎる、雄山の頭の中でその考えが過ぎり裏切り者を探す。
「(大兄貴か? いや東堂を誘拐するメリットよりもデメリットの方が遥かに大きすぎる。それにその時大兄貴が俺の居場所を知っていたとは思えない)」
少なくとも那須脇旅館に雄山達が居ることを知っているのは雄山達自身や他の宿泊客だけであり、雄大は雄山を売りたくとも売ることが出来ない状況であり、売ったとしても何の得にもならないので雄大も裕二と同じく候補から外れた。
「(…これ以上ウダウダ考えても仕方ない。応援が来るまでの間自分なりに調べてみるか)」
雄山は裕二や応援が来るまでの間、何が起こったのかを整理し始めた。
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