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大和が師範〜キラーマウンテンと呼ばれた陰陽師〜  作者: 疾風迅雷の如く
序章 陰陽師復活
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第2指導 調査の始まり

陰陽師…それは日本における魔法使いであり、妖怪退治を専門とする職業のことだ。現代において妖怪が表の世界には出ず、裏世界の物となってしまい陰陽師は副業(裏稼業なので教師等の公務員も含む)として活動する者が多い。西智学園都市でも例外ではなく普段は教師として活躍している者の中に陰陽師がいる。それ故に暗黙の了解が出来た。


「では雄山先生…貴方も元陰陽師なら人型の妖怪がここの生徒としていることはご存知ですね?」


そう、人型の妖怪あるいは人に化けられる妖怪は無闇に殺さないというルールだ。その理由は簡単で殺してしまったら陰陽師としての収入がなくなるからだ。なので妖怪を無闇に殺せば他の陰陽師達から村八分にあうのは目に見えている。


その中で妖怪と共に生活している場所が西智学園都市だ。西智学園都市は妖怪と共に生活をすることで助け合いをして収入を得ている。もちろん妖怪を憎悪している陰陽師もいるが自らの生活の為に一緒に暮らしていくうちにその感情が消えてしまい性格で判断するようになるのが大半だ。


「…ええ。まさか生徒達が陰陽師を?」

しかしそれでも妖怪は人間を襲う。それこそが妖怪の本能だからだ。妖怪の中には人間に恐れられ、生まれる者やその恐怖によって生きられる者がいる。彼らはそのために実行しているにしか過ぎない。

「半分当たって半分は違う…それまで普通に暮らしていたのに妖怪の生徒達がいきなり暴れ出す…そういった事態が頻繁に起きるようになってしまい、我々としても手の打ちようがありません」

「何故です? 生徒達を取り押さえて尋問すれば良いだけの話でしょう?」

「それが厄介なことに暴れている時は妖力が増して力が強くなり、取り押さえようとしても抑えられません」

「一回もですか?」

「ええ…まさか生徒達を傷つける訳にもいきませんし、周りの被害を抑えるのが精一杯です」

雄山はこの状況に頭を抱えたくなった。何しろ生徒達は暴れてもそれを取り押さえることは出来ない。しかもそれが頻繁に起きるのだ。身体が3つあっても持たないだろう。


「それでその生徒達はどうなったんですか?」

「…ここにいる生徒達が皆暴れた者です。全て事情聴取しましたが皆暴れている間のことは覚えていないと言うのですよ」

「覚えていない…タチが悪いですね」

「おそらくですが私達は何者かが彼らに干渉して暴れるように操ったと考えていますが手がかりはなし…」

「…つまり、そこから解決しなきゃいけないってことですか?」

「本来であれば雄山先生の力を借りずに解決すべきものですが我々ではこれが限界です…」

「…なるほど確かに厄介な事ですね。それで私にその事件を解決しろと?」

「我々も全力でサポートします!」

「わかりました。では事情を聴きましょう。隣の部屋で構いませんね?」

「ええ。では諸君、隣の部屋へ」

妖怪の生徒達と雄山は隣の部屋に入って行った。


▲▼▲▼☆☆☆☆▼▲▼▲


「暴れていた時の記憶は全員ないんだな?」

「はい、これっぽっちも…」

「最近高校生以外で学部外の誰かと接触したか?或いは首を噛まれたり、性行為はやったか?」

全員が首を横に振った。

「(…確かに難航するな。手がかりが見つかりやしねえ…)」

雄山はメモを取り、とにかく一つでも手がかりを探す。

「それじゃ暴れる5分以上前に何か強力な力に引きずられたとか変な衝動に駆られたとかそんな感じの症状はなかったか?」

これも全員が首を横に振った。

「(…こうなってはアンサーに聞くしかないがもう繋がらないしな)」

アンサーとは10個の携帯電話を使い、それぞれが使われていない電話番号にかけると一つだけ繋がり、9つ質問をすることが出来、最適な答えを教えてくれる。ただし最後に質問され答えられなかったら命を落とすというオカルトだ。だが雄山はある事情から既にこれを使っており、裏技ともいえる方法でアンサーの最後の答えも答えてしまいそれ以降アンサーに繋がらないのだ。

「とりあえず解散だ。何かわかったら事情を聞こう」

「ありがとうございます!」

その場で解散となり、雄山はオカルト部の手続きを済ませてから書類をまとめて帰った。


▲▼▲▼☆☆☆☆▼▲▼▲


「(今日は手がかりなしか。大人しく帰るか)」

肩と肩とぶつかる音が雄山の頭の中に響く。


雄山が思いつめた顔をして考えていると誰かとぶつかってしまったのだ。

「すみません大丈夫ですか?」

強面な顔つきをしている癖に常識がある雄山は咄嗟に謝り頭を下げる。が、ぶつかったのは金髪にピアス、DQNの格好を突っ走っているチンピラだった。

「どこ見て歩いてんだゴラァ!?」

謝ったのに雄山に絡んでくるチンピラは殴ろうとするが雄山は当然避けた。

「避けんじゃねえよ!」

チンピラは唾を飛ばし、雄山の顔にかけた。

「(仕方なし…か。)」

雄山は流石にキレ、顔を凶悪な面にした。

「ひっ!?」

チンピラは雄山の異変に気付いたのか悲鳴をあげる。チンピラといえども雄山の凶悪な顔には敵わない。

「おい!」

ドスの効いた声がチンピラの耳に届く。それだけでもチンピラを萎縮させるには充分だ。

「はいっ!!」

「さっきは悪かったな…兄ちゃん。だけど俺は謝ったよな?」

雄山はチンピラの肩に手を置き、教師としての自覚はないのか脅し始めた。

「全くその通りです!」

「そう言えばさっき俺に唾がかかったんだが…まあそれはいい。わざとじゃねえからな。だけどよ今やったように堅気に言いがかりをつけていたのを見かけたら…潰すぞ」

チンピラは何を潰すかは理解出来なかった。だがこれだけは言える。この男に絡んでしまったことを後悔したということだ。

「ひぃぃぃーっ!! た、助けてくれーっ!!」

雄山に絡んだチンピラはすぐさま逃げて一瞬で消えてしまった。

「あの程度の脅しに屈するくらいなら絡んでくるんじゃねぇよ」

雄山は若い頃…つまり陰陽師時代の時は力をつける為にマフィア狩りという悪趣味極まりないことをやっていたのだ。マフィア狩りをしていた男がチンピラにビビる理由は全くない。


「(しかしどうすっか…妖怪の奴らは妖力を潜めて見分けがつかないようになっているし、そもそも門限云々の問題で外に出回っているのは夜行性以外はいねえ。大を救う為ならば小を切るなんて政治家みたいな汚い真似だけはしたくねえし、やらせねえ。…となれば暴れた原因を突き詰めるしかないが…それもこれも無能なあいつらのせいだ。なら経済的に圧迫させんのが一番いいか…)」

そのあいつらとは学園長などの陰陽師であり、雄山はいかにして経済的に圧迫させるか考えていた。経費として払わせるのか、雇用費を出させるか…

「(まああいつらのことなんぞどうでもいいがな)」

雄山は自分でもくだらないと思いながらも駐車場に足を運んでいた。


「おい! 待て!!」

そして数分が経ち、雄山は駐車場に着くと同時に後ろから声をかけられ後ろを振り返った。

「あ…?」

今度こそ帰れる…そう思っていた雄山は不機嫌だった。ドスの効いた低い声で雄山は返事をしてそちらをみると2人の不良の少年がそこにいた。

「さっきはよくも恥かかせてくれたな!」

「さっき…?ああ、あん時の兄ちゃんか。」

雄山は先ほどチンピラに絡まれたのを思い出し、頭で整理する。

「で? それで何の用だ?」

「決まっていんだろ! てめえをボコしに来たんだよ! さ、兄貴! こいつをボコして下さい!」

チンピラはまたもや唾を吐き、汚らしく顔を歪めた。だが同時にその兄貴分が不機嫌になるを見て雄山は気付いた…こいつただのバカだと。


「てめえ…俺に命令してんじゃねえぞ! ボケェ!」

チンピラの兄貴分はチンピラを殴った。そのことがわかっていた雄山は苦笑していた…

「ウヴぅ…ずみまぜん兄貴…!」

「それだけで済むと思っているのか? あ!?」

兄貴分は横たわったチンピラを蹴っ飛ばし、立たせると往復ビンタならぬ往復パンチをしてチンピラの顔を血塗れにする。


「そこまでにしておきな」

雄山は兄貴分の腕を掴み、往復パンチを止めさせると兄貴分は睨みつけた。

「カッコつけてるんじゃねえぞ! 俺はてめえみたいにヒーロー気取りの奴が一番大嫌いなんだよ!」

「その為にこんなことをしているのか?」

「ああそうだ!! ヒーロー気取りの連中の絶望に染まった顔を見るだけでも楽しいね」

雄山はため息を吐き、一言。

「小せえ男だ。そんなこと女でも出来る」

「あ…?」


「お前は自覚していないようだがヒーロー気取りの奴らの絶望した顔を見るのが好きなんじゃねえ…自分よりも出来の良い奴らを力でねじ伏せ見下すのが好きなんだ」

「んだとゴラァ!!」

兄貴分は殴りかかり、雄山に攻撃するがあっさりと避けられてしまう。

「わからねえ奴だな。ようするにてめえは力任せに人殴って嫉妬を無くす…嫉妬に狂った人間だってことだ」

「ぶっ殺す…!」


兄貴分はメリケンサックを取り出し、本気で雄山を殺すような勢いで殴りかかって来た。

「親御さんに教わらなかったのか?少しでも危ないと感じたらすぐ逃げろって…」

右ストレートが当たる寸前、雄山は兄貴分の右腕を掴み、捻る。至って単純なことだが兄貴分には十分有効な手段で兄貴分が焦り始めた。

「てめえ離しやがれ!」

左フックで雄山の顔を殴りにかかるが雄山は右腕を更に捻った

「ぐぁぁぁっ!」

兄貴分は悲鳴を上げ、体勢を崩し地面に倒れるが雄山は御構い無しに腕を捻る。

「そういえばお前、ヒーロー気取りの連中の顔が絶望に染まるのは楽しいって言ってたよな? 俺も似たようなことが好きなんだよ…なぁ? それがなんだかわかるか?」

そう語りかける雄山の目は完全に笑っておらず、一種の狂気すらにも見え、兄貴分とチンピラを怯えさせた。

「てめえらみたいに力任せに来る連中を完膚なきまでに力尽くで潰す。こればかりは昔からの性根でなぁ…未だに治っちゃいねえんだ」

「ゆ、許してくれ!」

「許す? 何バカなこといってやがる。これから俺のお楽しみが始まるんだ。どうしても止めさせたいなら…今後俺の顔を見たらすぐにその場から消え失せろ…もし俺が見かけたらそのお楽しみをする。もちろんてめえもな」

雄山はケケケ…と不気味に笑いながら兄貴分とチンピラにそう宣言すると2人は悲鳴を上げて逃げていった。

「さて塵掃除も終わったし、良い飯屋でも探して帰るか…」

そして車を走らせ、雄山はこの日収穫なしで寮へと帰った。

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