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大和が師範〜キラーマウンテンと呼ばれた陰陽師〜  作者: 疾風迅雷の如く
序章 陰陽師復活
16/40

第16指導 始まりの終わり

ご視聴ありがとうございます!

▲▼▲▼☆☆☆☆▼▲▼▲


翌朝、学園都市に着くと二人は別れ、雄山はそれまでのことを学園長に報告していた。

「雄山先生、おかえりなさい」

「学園長…」

「滝河君の件は残念だったが…無事に戻ってきたということは鴨川弁当を潰したきたのかね?」

学園長は嬉しそうにそう尋ねた。

「はい。ですが鴨川は黒幕ではありませんでした。本当の黒幕は妖魔連合会という組織です」

「妖魔連合会…?」

「早い話が人妖平等を唱えるテロリストといっていいでしょう」

それを聞いた学園長は鴨川の事件もあってかテロリストという言葉に過敏になっており、焦った。

「何だと!? では至急その組織妖魔連合会について調べる必要が…!」

雄山が学園長の言葉を遮るように学園長の電話の電源を切ると首を振った。

「雄山先生?」

「その心配はありません。妖魔連合会の長や幹部5人は死に、残りの残党も陰陽師協会の方で調査中です」

「それは良かった…! 流石、雄山先生ですな」

学園長は学園都市に平穏な日々が戻ったことに安堵し、笑った。


「それで報酬の件ですがこれを受け取って貰えませんか?」

「…雄山先生、本気ですか?」

学園長はそれまでの笑いを消し、雄山から渡されたものをマジマジと見る。

「本気です。俺は引退した後、陰陽師協会の方と契約しています。もし万一陰陽師として復職する時、陰陽師協会専属の陰陽師として働くようにと」

「まさかそんな契約があるとは…」

学園長は納得した。これまで雄山が陰陽師として活動しない理由がここにあり、皮肉にも教師としての生活を奪うことになってしまったことに後悔した。


「もっとも陰陽師協会専属とはいえ仕事でここに来るでしょう。西智学園都市はまだ創設されてから二十数年と間もないのに関わらず、面積は大阪府、人口300万人を超える世界最大級の学園都市です…が圧倒的に陰陽師の数が足りない…今回はまだ大騒ぎにならずに済んだものの滝河のように買収されたら西智学園都市は大混乱する事態は避けられません。専属の人間であっても学園都市を知っているならばここに駆り出されるのは目に見えています」

「しかし雄山先生、まだ4月です。せめて次の学期まで待っていただけませんか?中学部の方の国語教師から取り寄せるにしても時間が足りません」

「俺はその言葉にイエスとはいえません。一刻も早く陰陽師として戻らなければならない時が来てしまったということなんですよ」

雄山は哀しげに答えると学園長が眉を寄せた。


「わかりました。…しかしせめてオカルト部に挨拶してきてもらえませんか? オカルト部の部員達も雄山先生を慕っています」

「幽霊部員がかなりいますけどね…」

雄山はそう言って苦笑した。それだけオカルト部は幽霊部員が多いのだ。

「ですが今年入った新入生は違うでしょう?」

「ええ。矢田と長門は毎日部室に来ていると佐竹先生と伊崎先生から聞きました」

「もし、そんな真面目な生徒達に何も告げずに去って行ったら雄山先生に何かあったと勘違いされます。そうなれば雄山先生も活動しにくいでしょう」

「…確かにそうですね。それと今日から5日間程、東堂を陰陽師協会の方へ連れて行かねばならずその間公欠にしてもらえませんか?」

「東堂君に何か問題でもあったのか!?」

雄山の話を聞いて学園長は驚き跳ねた。もし雄山がミスをしたのであれば失敗を押し付ける…のではなく、学園都市の陰陽師では手がつけられない事態である。

「学園長落ち着いて下さい。少なくとも命に関わることではありません。むしろ逆です…陰陽師協会の後ろ盾を得る為に東堂を式にさせる必要があります。その為の手続きをしなければなりません。親御さんに外泊の理由を伝えておいてください」

「そういうことか…よし。そちらの方も手続きしましょう」

そして学園長が書類に書き手続きをしながら話しかけた。

「後、雄山先生。退職金に色をつけて口座に振り込んでおきました。君の実家からすればはした金かもしれないが私達なりのお礼です…学園都市やその他多くの犠牲者を救ってくれてありがとうございます」

「…では失礼します」

そして雄山はその場から出て行き、放送室に東堂を呼び出すように指示した。


【高等部2年の東堂美帆さん。至急職員室の大和雄山先生のところへ来てください】

これを聞いた東堂は友達との話を切り上げて雄山のところに向かった。

「(ユーザン先生から呼び出されるって何の用なんだろう?)」

東堂はそれだけを不思議に思って職員室へ向かうと雄山がそこで待機していた。

「東堂、来たか」

「ユーザン先生、一体何の用ですか?」

「まあここで話すのも何だ…生徒指導室に行くぞ。そこに行けば椅子もあるしな」

「はい」


▲▼▲▼☆☆☆☆▼▲▼▲

生徒指導室の空気は重く、沈黙の状態だった。

「東堂、呼び出された理由わかるな?」

「いえ…」

「わからねえか? 簡単に言う。お前を陰陽師協会に登録する」

「陰陽師協会…?」

「ああ。まず陰陽師協会ってのを知らねえのか?」

「はい」

「陰陽師協会は妖怪退治等の裏の仕事をこなす陰陽師を中心とした組織団体だ。世間一般的には法人って体制でやっているから誰でも実力があれば所属出来、どんな経歴も問わねぇ」

「妖怪もですか?」

「まあな…色々条件があるが後々説明する。…組織団体に勢力があるように陰陽師協会にも勢力がある」


「勢力?」

「陰陽師協会のトップ…陰陽師協会会長の勢力と陰陽師協会最大内部組織を持つ大和一族の二つの争いがある」

「最大内部組織ってなんですか?」

「世の中には親戚全員がその会社に勤め、会社に影響力を持つ場合がある。その親戚共のことを内部組織と言っている。その中でも最も大きな影響力を持つのが最大内部組織だ」

「じゃあユーザン先生の大和一族も?」

「そういうことだ。俺の実家も陰陽師協会に所属していて、その多くが大活躍…いや大暗躍しているおかげで陰陽師協会にも影響力がある。しかも陰陽師協会の最大のスポンサーが大和財閥…つまり大和一族の金を陰陽師共が毟っているってことだ。だから会長や恐れを知らない馬鹿幹部以外は全員大和一族の傘下に入っているって訳だ」

「でもそれだったら何で大和一族は陰陽師協会から独立しないんですか?それだけ影響力があるなら抜けても問題ないと思うんですが」

「陰陽師協会を作ったのが大和財閥の創設者だからだ」

「えっ!?大和財閥ってあの大和財閥ですか!?」

「そうだ…大和一族が陰陽師協会を抜け出せば何を言われるかわかったもんじゃない。大和財閥とは全く関係ない奴らに陰陽師協会を乗っ取られたことになって面目丸つぶれになって大和財閥諸共終わりってことだな。だからこそ大和一族は権力を持って影響力を持ったんだ」


「…複雑ですね」

「もっと複雑な事情もある。俺は一度陰陽師を引退した以上、陰陽師としての力があるかどうかを示さなければならない」

「どうやって?」

「その手土産用に龍造寺の二つの首を俺の車に積んでいる。それを見せれば流石の大兄貴も認める筈だ」

「大兄貴…?」

「俺達兄弟の長兄、大和雄大。陰陽師協会会長代行にして大和宗家当主…つまり現時点で陰陽師協会で最も影響力を持つ男とこれから会うんだよ」

「こ、殺されたりしませんか?」

東堂は自分が吸血鬼であることを自覚しており、陰陽師から敵視されている存在だと思っていた。

「安心しろ。その為のコレだ」

雄山が手紙を取り出し、東堂に手渡しするとジロジロと外袋を見た。

「…別に開けていいぞ。それはコピーだ」

「はい…えーと…」


【東堂美帆

上記の者を推薦者の式として推薦する。

推薦者 大和雄山】


「…お尋ねしたいんですが式ってなんですか?」

東堂はそれを見ても嫌な汗がダラダラと流れてきた。

「式神の略語…西洋風にいえば使い魔。要するにパートナー的な存在だ」

「な、何で私が式神なんですか!?」

東堂が声を荒げて机を叩くが雄山は涼しい顔をしていた。

「まあ落ち着け。妖怪で陰陽師をやるからには信頼ってものが必要だ。信頼されなきゃ依頼もされねえし、下手したら他の陰陽師に殺される可能性もある。しかし陰陽師の式となって働けば話は別だ。その陰陽師が信頼しているってことはその妖怪は安全な妖怪だって言っている証拠だからな。それにちゃんと仕事すれば依頼人から顔を覚えられて仕事にもありつける」

「つまり妖怪の保護目的ですか…?」

「そういうこった。でだ…そこから陰陽師になる方法は陰陽師になる試験を受けて合格するか、その陰陽師が推薦する方法、他にもあるがこの二つが一般的だ」

「なるほど…でもその陰陽師さんが式を意地悪したらどうなるんですか?」

「まあ徹底的に調べた上で黒だったら陰陽師剥奪。白だったら式が不満を抱いていると見なして他の陰陽師に式の所有権が移る」

「へぇ〜」


「他に質問はあるか? なきゃこれからのことを説明する」

「これからユーザン先生のお兄さん…陰陽師協会の会長さんに会うって言ってましたけど…それも説明が含まれてますか?」

「正確には会長代行だ。…まあそうだな。これから俺が説明するのは大兄貴と会う理由、何故お前が陰陽師協会に登録するか、とにかく説明することだらけだ。だがそんなことは後でも出来る。今説明しなきゃいけないのは3泊4日の外泊の準備だ」

「外泊…!?」

「そうだ。ここから陰陽師協会まで半日、さらに大兄貴に会うまで半日、陰陽師協会の手続きが終わるまで2日かかる…」

「2日も何しているんですか?」

「俺とお前の適性検査を1日かけてやるんだよ…俺は元陰陽師とはいえ陰陽師になる以上ある程度の強さが必要だし、お前も式ならそれをサポートする力が必要だ」

「でもまだ1日足りませんよ?」

「その1日は検査の受付の時間と俺が陰陽師として、お前が式として相応しいかどうかを判断するんだよ。これでも随分早い方だぜ?何しろ俺たち以外にも検査を受ける奴らは大勢いる訳だしな。そいつらも纏めてやるから時間がかかるんだ」

「なるほど…陰陽師協会も大変なんですね」

「学園長や親御さんにも話はつけてある。明日の午前6時、俺の車に荷物を積んだら乗れ。話は以上だ」

「はい。でも明日説明してくだざいね…色々と」

そう言って東堂は生徒指導室から出て行き、雄山が一人残された。

「勇姿、てめえは一体何してやがる…俺はてめえを守る為に陰陽師を辞めたのに上手くいかねえもんだな。大兄貴に伝えておくぜ。てめえはぶらぶらふらついているってな」

雄山が陰陽師協会に行く本当の目的は行方不明となった弟を探す為だった。雄山には兄が二人いる。しかし弟は一人だ。それ故に雄山は勇姿を可愛がり、勇姿もまた雄山を慕っていた。

「だからよ。俺の前に一度でも姿見せてみろよ。そうすりゃ大兄貴に大目玉喰らわなくて済むぜ」

雄山は窓を開け、日差しを浴びて少し経つと矢田と長門に別れを告げ、明日の支度を進めた。

ようやく次回、一章に入ります。長かった…

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