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お市の天下漫遊記  作者: 女々しい男
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後始末

真っ黒な鉄甲船が、肥前五島の港に停泊し、一人の女が降りてくる。

それを三人の男が出迎える。

「隆元、隆景久しぶりね。元気してた?」

女は微笑みながら、前に居た二人を見て話しかける。

「ご無沙汰しております。愚息幸鶴丸が、ご迷惑をお掛けしておる事。大変申し訳御座いません・・・」

俺の顔を見て、すぐさま謝る隆元。

「いやいいのよ。まっそれなりに馴染んできてるんでしょ?多分・・・」

俺は苦笑いをしながら話す。

「上様のご息女五徳様との縁談を取り持ってもらえ、毛利家当主としてありがたく思っております」

深々と頭を下げる隆元

「ちょっと頭なんか下げなくていいよ。駄目鶴もいい加減、元服もさせなきゃいけないと思ってるの。兄様に烏帽子親してもらって、名前も兄様から一文字貰えるようにしとくからさ。遅くなって御免ね」

俺は隆元の頭を上げさせながら話しかける。

「名誉な事で御座いますが、最初の名前が駄目鶴と聞こえたような・・・」

喜んでいた顔が、段々と青くなる隆元。

「あんまり気にすると禿げるわよ。隆元」

隆元は俺の言葉を聞いて、ブツブツと呟きながら現実逃避していた。

「これが改良した鉄甲船で御座いますか?真っ黒で御座いますな・・・」

兄隆元が脱落すると、隆景が話しかけてきた。

「ふふふっ、見た目悪いけど、錆びにくくなってるのよ。黒錆びでね」

俺は隆景に話しかける

「そのような重要な秘を我らに話して良いのですか!」

隆景は目を見開いて俺に話しかける。

「あんた達ならいいわ。今から色んな国を解放しに行くんだから、手伝ってもらわないと困るし、早く習得して船増産してね」

「「御意!」」

俺が話すと二人は深く頭を下げて了承していた。

「しかし、お市様は相変わらず、お美しいですな」

隆景が俺を見ながら呟いた。

「謀神の後継者に、そんなお世辞を聞かされると裏があるのかと、勘繰られるわよ?」

俺は微笑んで話しかける。

「後継者など、私には荷が重過ぎます。父上はお市様を後継者にしておりましたよ」

隆景はそう言って微笑む。

「あたしの考えを見抜いて、此処に着てる事で、貴方の才能は十分、謀神の域に達してるわ。それにあたしは後継者よりも、もっと元就殿と話がしたかったわ・・・」

俺は少し下を向き、暗い顔をした。

「父上はお市様と同じ気持ちであったようです。お市様と同じ時代に生きたかったと、天下平定は見れたが、もっと先が見たくなって、未練が残ってしまったと、最後まで悔やんでおりました・・・」

隆景は少し涙を浮かべて、下を向いた。

「じゃ、一番話したであろう貴方が、元就の変わりになって頂戴ね」

俺は涙を浮かべながら、隆景を見る。

「そのお言葉に勝る栄誉は御座いません・・・しかと承りまして御座います」

隆景は深々と頭を下げた。

その様子を二人の後ろから小さくなって見ていた男に視線を向ける

「あんたが、主君の暴走を止めれなかった男かしら?」

俺は先ほどまでとは違う、冷たい目で男を見る。

「返す言葉も御座いません・・・」

男は土下座をして頭を下げる。

「異国に、日の本を売り渡そうとする事を止めれなかった。極刑でも生ぬるいわ・・・」

俺は冷めた声で呟く。それを聞いて隆元と隆景が震えだす。

「私の命では補えぬでしょうが、決起した肥前の民にお許しをお願いいたします・・・御免!」

男は顔を上げると覚悟を決めた顔をして脇差を抜き、腹に刺そうとした。

「駄目!」

俺が叫ぶと男の脇差が火縄銃の玉で弾き飛ばされる。

「なっ・・・」

驚きを隠せない男

「その覚悟、生きて償いなさい。平戸、五島、対馬、壱岐を没収した肥前一国を、直茂、あんたに任せる」

俺はそう告げると直茂は呆気に取られていた。

「龍造寺家はあんたの所以外は、一族郎党根切りとする。異論は認めない・・・」

俺は冷たく言い放つ。

「・・・畏まりまして御座います」

肩を落とし、震えながら了承する直茂。


こうして肥前の乱と十字軍侵攻を防いだ俺は織田の船団を率いて台湾に向かい、在存していた十字軍の残党を駆逐した。

捕らえた十字軍、倭寇の兵に縄を巻いてから、台湾の民衆の前に放り出す。

「今日から未来永劫。この地、台湾は日の本の領地とする。今日よりこの地の民は織田の民となる!もはやこの地を異国に渡す事は無い!」

俺は民衆の前でそう宣言すると、民衆は歓喜の声を上げる。

「明日、開放してあげる。せいぜい自分達がした事の愚かさを知れ・・・」

そんな中、俺は捕らえた兵の前に行き、呟くと背を向けた。

捕らえた兵は理解出来ていない顔をしていたが、開放されると聞いて慶びの声を上げるが、一部の兵は顔を青ざめて震えだしていた。

「今、貴方達の目の前にいる者を、今日一日どのような事をしても織田が許す。好きなようにしていいわよ・・・」

台湾の民衆にそう叫ぶと俺はその場を去った。

俺の去った場所から、凄まじい悲鳴と許しを願う声、怒声と罵る声が入り混じっていた。

翌日、捉えた兵の場所に行くと兵は皆、恐怖を焼き付けられた顔をして、息絶えていた。

その後、同じようにルソンも攻略、同じ処置を行う。

これにより、台湾、ルソンは織田の支配地となって、暫くは復旧に全力を注ぐ事になるお市であった。

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