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お市の天下漫遊記  作者: 女々しい男
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混沌

「姫さん・・・まさか、倭寇があっちに付くとはな」

遠眼鏡を覗きながら、呟く鴉。

「不味いわね。倭寇が異国に付くとはね。遠征軍の不利な条件が埋められる。異国の船数は予想通り、少ない数だったけどね。それを数も補給も倭寇で全て埋めるか・・・」

俺は遠くで燃え上がる、台湾の町を見つめながら呟いた。

「どうする?異国の船団はそれほどの数じゃないけどなぁ・・・倭寇の数がはんぱねぇ、琉球にいる船だけじゃもたねぇ」

鴉は俺を見て呟く

「すぐには琉球には動けないでしょうけどね。明も馬鹿じゃないわ。それなりの動きはするはずよ。その間に本国から増援を手配するしかないわね」

俺は頭を抱えるように鴉に話しかける

「明か、それなりには動くとは思うけどよぉ・・・あんま期待できそうにないぜぇ・・・あの体たらくだとなぁ」

燃え上がる明の船を見ながら呟く鴉。

「それでも期待したいわね・・・」

俺は無理だと分かった上で天に祈っていた


ルソン、台湾を占領した十字軍はすぐさま、明国の福建沿岸部を侵攻して占拠し、支配してしまう。

明は十字軍を恐れて、停戦の使者を出す。十字軍は福建沿岸部の返却を条件に、ルソン、台湾を十字軍の領地として認めるように打診して、明国はその条件を呑む。

それに怒った信長は明国に遺憾の使者を派遣するが追い返されてしまう。

これにより十字軍は周りを気にせずに、日の本に侵攻が出来る状況になってしまった。

これに呼応するかのように、肥前でキリシタンや織田の政策に、不満を持つ武士が一斉に決起した。

このような状況を読んで動いていた者がいた。

「流石はお市様か、この状況を読んでいるとはな。敵に回さずに良かったな。兄じゃ」

歳久が義久に話しかける。

「お前の忠告を聞いて良かった・・・」

義久はそう呟く

「争えば、消えていたでごわすな。」

義久の呟きに義弘は答えると。隣のいた家久が静かに頷いた。

「あの方は、見ている物、見えている物が我らと違う。我らの予想を超える。弱い民の為に心を砕く・・・」

歳久が呟くと三人は空を見上げた。

「お市様は今、琉球から動けない。それに・・・」

「我らは留守を任された。その信頼に答えねば、薩摩隼人の名が地に落ちる」

「それもあるでごわすが、我ら・・・皆、姫様に惚れておるでごわす」

「「「そうだな・・・はっはっはっ」」」

笑いながら話す四人は兵を率いて、肥前に向かって進んでいた。


「賀茂殿、朝廷が無くなって、日の本は、織田の天下で揺るが無いと思っておったが、わからぬ物だな・・・」

男が話す。

「隆信殿、倭寇の一件ではお世話になりました。異国の軍に借りも作れた事ですし、日の本の王と認められましょう・・・」

在昌は隆信に微笑みながら話す。

「小少将から話を聞いた時は、疑ったが・・・直茂の諫言聞き入れず、謹慎蟄居を言い渡して、良かったわ!」

隆信がそう呟く。

「朝廷が消えた時の、うろたえ様が嘘のようで御座いますな・・・」

在昌が嫌らしい顔をして、隆信を見る。

「その件は忘れてあげたら如何です?先代様も気が気では無くなるのもわかりますわ。現在の龍造寺家当主である政家も、私の虜なれば、肥前は異国の足掛かりとなれましょう」

そう言って隆信に腕を絡ませて、もたれかかる様に寄り添う小少将。

「しかし、決起したのは、時期尚早では無かったのか?」

隆信が不安げな顔をして、二人に話しかける。

「ルソン、台湾の領地支配を明に認めさせて、補給や戦力も十分で御座います。十字軍は琉球には攻め入らず、ここ肥前に向かっているとの由。それに織田の政策に、不満を抱く者は数知れず、その者達の合力あらば、日の本をまた武士の世に変える事も容易いかと・・・」

在昌は嫌らしい顔をして隆信に話す。

「あの女狐は琉球に貼り付けになってるし、肥前の対応は確実に遅れるわ。その間に九州を落として、信長と分断したら終わりよ」

小少将は怪しげな笑みを浮かべる。

そのような事を話している時に、伝令が焦りながら飛び込んでくる。

「有馬晴信殿、織田の旗印を掲げ!決起致しました!」

伝令の報告を聞き、三人は驚きを隠せない。

「なっ!何を申しておる!あの有馬が織田に付くと言うのか!」

隆信が叫ぶ。

「晴信殿は熱心なキリシタンだぞ!異端である、織田に味方するだと、ありえぬ・・・ありえぬわぁ!」

うろたえ狼狽する在昌。

「なんで、嫌な予感がするわ・・・」

不安げな顔をする小少将。

「くっ、他の者達の士気にも関わる。直ちに鎮圧してくれるわ!兵を集めよ!森岳城にいる有馬晴信を討つ。急げ!」

隆信が叫ぶ。

「おっお待ちを!私が行って説得してまいります!」

在昌は隆信に直訴する。

「うっ、ならば賀茂殿にお任せするが・・・時間はかけれないぞ!」

そう言って小少将と共に奥に消える隆信

それぞれの思惑が絡み合い、混沌としていた。

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