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お市の天下漫遊記  作者: 女々しい男
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明からの要求

朝廷を廃止してから数ヵ月後、信長の元に明の皇帝、万暦帝からの使者が訪問した。

明からの要求は、台湾、ルソンは明国の領土なのだと、織田家に返還を迫ったものであった。

この要求を聞き、信長は激怒するが、周りにいた重臣達がその場を治め、返答は後日行う旨を使者に伝え、その場は納まった。

信長は怒りを露にしながら、俺のいる部屋に入ってきた。

「市!市!」

信長が俺の場所まで来ると、胡坐をかいて座り込む。

「何ですか?兄様、何度も言わずとも、聞こえておりまする。また何やらありましたか?」

俺は梵天丸と遊びながら、信長の相手をした。

「聞け、市。明の使者が来た!それが横柄な奴でな。腹が立って仕方なかったわ!」

信長は赤い顔をして俺にそう話す。

「台湾、ルソンを渡せとでも言ってきましたか?」

俺は信長には顔を向けずに話す。

「なっ!何で分かった・・・」

目をこれでもかと開き、俺を見る信長。

「明の今の皇帝は世間では聡明利発で大器の持ち主と考えられておりますが、それは宰相の張居正の功績。今、張居正の体調が良くないとも聞いています。化けの皮が剥がれてきてるのでしょう」

俺は梵天丸を膝に抱くと信長を見た。

「ふむ、では如何致す?明と戦をするのか?」

信長は俺に問いかける。

「いえ、返しましょう。明の物だと言うのです。丁度、良い時期ですし・・・」

俺はにやりと笑いながら信長を見る。

「異国と明を争わせるのか!」

信長は驚いたように話す。

「短い間とは言え、織田の直轄地となったからには台湾、ルソンの民は織田の民、守ってやりたかったのですが、異国との防衛線としての機能を持たせるには期間が少なすぎました。それに今は明と争うのは得策ではありません。明の領土だと言う風潮に、少なからず地元住民も靡いております。此処は一旦引き、後日手に入れるとしましょう」

俺は信長の顔を見て話をする。

「市は相変わらず、恐ろしいな・・・」

脅えた様な目をする信長。

「それに異国の船に明では太刀打ち出来ないでしょう。織田の鉄甲船しか勝てませぬ。しかしその鉄甲船も弱点が御座いますから・・・」

俺は目を伏せて話す。

「うぬ、足が遅し、長期間、海に浮かべれないか・・・」

信長が顎に手をやり、顎を撫でる。

「何とか、改良を考えておるのですが、今の所は造船所を重要拠点に作り、いざと言う時に運用するしかありません。台湾、ルソンには間に合いませんでしたから・・・」

俺は下唇を噛み締めて悔しさを現していた。

「この日の本は海に囲まれておる。市が言うように船の改良は最重要課題だな」

信長はそう言って俺を見る。

「明の使者には了承したとお伝えくださいませ。後、異国の侵攻があれば、助けるとの約定もお忘れなく」

俺は信長に呟く。

「わかった」

信長は頷く。

「では、あたしがルソン、台湾に行き、兵を引き上げて参ります」

俺は立ち上がり、信長にそう伝える。

「おぬしが行くのか!」

信長は驚いて俺を見る。

「私が行かねば、緊急時の際、打つ手が遅くなりまする」

俺は虎に指示しながら、立ち上がる。

「それはそうじゃが、犬達がまた困るじゃろうな・・・」

信長が哀れみを込めた様な表情をする。

「そんな、やわに教育しておりませぬ」

そう言って微笑む俺に、信長は苦笑いを浮かべるのであった。


こうして俺は堺から船に乗り、土佐に寄ってから、薩摩に向かう。

薩摩に着くと当主、義久を筆頭に四兄弟が揃って俺を出迎える。

「宰相様を薩摩にて、お迎えできるとは、光栄の至りで御座います」

義久が俺に挨拶する。

「んっそんな堅苦しい挨拶はいらないわ。お忍びだし、薩摩武士はそんな上辺は嫌いでしょ」

俺は微笑みながら話しかける。

「流石、姫様でごわすな。話が分かるでごわす!」

義久の横にいた義弘が豪快に笑う。

「戦が無いからって、薩摩武士の精強さは鈍ってないわよね?」

俺が茶化すように話すと義弘が目を見開いて否定する

「薩摩武士の力、まだまだ健在でごわす!」

にやりと笑う義弘。

「姫、そろそろ我らにも、出番が有りそうですな」

静かに聴いていた歳久が話し出す。

「流石、島津の知恵袋ね。異国が来るわ」

俺が顔色を変えて冷たく話す。

「ほう、腕が鳴りますな・・・」

家久が喋ると残りの四人がにやついた顔をする。

「それにね、多分。肥前に嫌な気配がするのよ・・・」

俺は不安な顔をする。

「探っておきましょう・・・」

歳久がそう呟く。

「上手くいったら、琉球の準統治権あげるわよ」

俺がそう言うと四人は目の色を変える。

「誠ですか!」

四人は戦人の顔に変わる。

「琉球は日の本を守る最後の防衛線、其処を任せる意味分かるわよね」

俺は四人を流れるように見る。

「この貧しかった薩摩が織田の治世で潤ってござる。餓死する民も激減し、薩摩大隈の民は喜んでごわす。島津は織田いや、日の本を守る先人となるでごわす!」

義弘は胸を叩いて決意を発すると、残りの三人も同じように、決意した顔を俺に向ける。

「期待してるわ」

俺はそれから数日滞在すると琉球に向かった。

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