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お市の天下漫遊記  作者: 女々しい男
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朝廷の仕置き

誠仁親王の邸宅に一人の女が面会を申し出ていた。

「そちが、織田参議市か?余に話があるとの事じゃがなんじゃ」

目の前にいるこの男を説得できなければ、後世でどのように罵られるか。

その覚悟さえしなければならない。

俺は覚悟を決めて口を開く。

「織田の政策を如何お思いか?」

俺は、誠仁親王に話しかける。

「・・・・・・」

顔色を変えて沈黙する誠仁親王。

「他の公家が言うように、朝廷を蔑ろにし、日の本を駄目にする織田の独裁と考えますか?」

俺は冷たい目で見つめる。

「・・・・・・」

何も喋らず俺を見る誠仁親王。

「天皇家はこの日の本にて、長きの時で神格化されたお家。帝は神であるからこそ、民に尊ばれるのです。神はこの世に干渉はしませぬ。見守るだけに御座います。」

俺は目を逸らさずに誠仁親王を見つめる。

「それは、帝に何もするなというのか?」

誠仁親王が俺を睨んで話す。

「いえ、帝には神として、日の本の象徴となって頂く。民の心の拠り所として見守って頂きたい。いずれ、織田は民に政権を移譲いたします。」

俺は覚悟を決めて話す。

「なっ!民に・・・」

誠仁親王は目を見張り、俺を見る。

「この事は我が兄、信長も了承しております。しかし今はまだ無理であることは分かっております。長き月日はかかるとは思いますが、緩やかに政権を民に譲り、民の中から統治者を選ぶようにします。民が考え、自分達で統治者を選び、共に考え、政治を行う。そんな世を作ろうとしております」

俺は目を逸らさず、誠仁親王を見る。

「そのような事が出来る訳がなかろう!」

誠仁親王は俺を睨む様に話す。

「信じて貰えないかも知れませぬが、私はこの時代から300年以上後の時代から、輪廻転生した者で御座います」

俺が話すと誠仁親王は目を見開き、驚きを隠さない。

「そっそのようなこと・・・」

「私が前いた時代の日の本は、民の中から選ばれた者に統治された。皆人権を守られた。戦の無い世で御座いました。笑顔で子を育て、生活するそんな時代があるのです。私はその時代を早く実現したいのです」

俺は誠仁親王の目を見ると疑心に溢れた目で俺を見ていた。

「信じられないのも仕方ありませぬ。この事は兄信長すら知らぬ事。親王様にしか話しておりませぬ」

俺は覚悟を決めて見つめる。

「何故?余に話した?」

誠仁親王は首を傾げながら話す。

「全てを話し、理解して頂けねば、朝廷を消す事のみならず、神殺しすら私は覚悟しております・・・」

俺は冷たい目で話す。

「なっ・・・」

誠仁親王は体を震わせて不安を露にする。

「複数の公家が、この日の本を異国に売り渡そうとしております。その計画に帝も同意しておりまする。織田はそれを許せませぬ!」

俺は怒りを露にして叫ぶ。

「そんな馬鹿なっ・・・」

誠仁親王は震えて顔を背ける。

「帝には禅譲して頂き、誠仁親王様に帝になって頂きたい。それしか天皇家をお守りする事は出来ませぬ」

俺は頭を深々と下げて嘆願する。

「帝のお命は助けて頂けるのか・・・」

誠仁親王は俺に声をかける。

「私の提案をのんで頂けるのであれば、帝のお命、奪う事は御座いません。民の為にお覚悟を・・・」

俺は強い視線で見ると誠仁親王は覚悟を決めた顔をして頷いた。


数日後、織田信長の命にて、帝を含めた官位を持つ公家に安土城に集まるように通達が出された。

この通達に殆どの公家が難色を示し、抗議の文が信長に届く。

この抗議文を信長は反逆罪という名目で兵を集め、お市に兵権を預け、京に向かわせる。

お市率いる織田の兵は御所を取り囲み、逃げ込んだ公家達を引き渡すように、お市自ら御所に入り、帝に拝謁し上奏する。

「お上、近衛前久、山科言継、一条内基以下織田に叛意する公家の引渡しをお願い致します」

俺は簾の向こう側にいる帝に話しかける。

「ならぬ・・・朕の御所にこのような狼藉、許さぬぞ!」

帝は怒気を含んだ声で俺に話す。

「参議殿、お上がこのように申しておじゃる。下がって兵を引かせるでおじゃる」

内基が俺に命令する。

「このような暴挙、許されざる行為ぞょ!早く下がるでおじゃる!」

前久も内基に追従して話す。

「この件には強く織田家に抗議いたす!震えてまっておれ!下がれ!」

言継は俺の前に来て、見下しながら叫ぶ。

「お上、どうあっても引き渡しては頂けませぬか」

俺は頭を下げたまま、冷たい声で話す。

「ならぬ、下がれ・・・」

帝が俺に話す。

「このような者達の言を聞いて、異国に日の本を売るつもりですか」

俺が冷たく発言すると近衛、山科、一条の体が震えだす。

「なっなにを言っておじゃるか・・・」

一条が震えるように話す。

「なに・・・どういうことじゃ」

帝が俺に疑問を投げかける。

「お上はご存知無いのですか?近衛、山科、一条の三名が主犯で異国の軍を日の本に向かわせている事に・・・」

俺は冷めた目で三人を見た後に帝を睨む。

「朕は・・・あずかり知らぬ。気分が優れぬ、少し休む」

そう言って奥に下がろうとする。

「逃げるのか!日の本を守護する朝廷、帝が異国に国を売るとは恥を知れ!民が嘆き悲しむ事を何故しようとする。民を疎かにすれば、国が滅ぶと何故分からない!民の為にならぬ者の末路。散々見せ付けていたものを、自分達は当て嵌まらないとでも思ったか!縄を打て!」

俺はそう叫ぶと織田の忍びと大伴の忍びが現れる。

「御意!」

忍び達は公家達に次々と縄で縛り上げる。

「なっ!何故、大伴が我等を・・・裏切ったのか!」

一条内基が叫ぶ。

「否、我らは帝にお仕えする者、帝を守る為ならば何でも致す」

滝川一益は答える。

「あんた達の一族郎党は全て捕らえる。織田を甘く見るな!連れて行け」

俺は三人に話すと、失禁して許しを請う声を発しながら、連れて行かれる。

他の公家も捕られ、御所から連行されていく。

「お上、誠仁親王様に禅譲なさいませ。さもなくば・・・」

俺が冷めた声で伝える。

「・・・わかった」

肩を落として話す帝。

この後、正親町天皇は軟禁され、誠仁親王が新たな帝となる。

朝廷は解体されて、織田の政権に組み込まれる事となる。

帝は任命権すら取り上げられて、完全な象徴として神になった。

捕らえられた公家は、全て国家反逆の罪にて、御所の前で斬首となり、墓すら作られず、討ち捨てられる事になる。

これにより、織田は諸外国から見て完全に日の本の王となった。しかし日の本に忍び寄る、異国の脅威がすぐ其処まで来ていたのであった。

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