書斎
「ただいまにゃ〜」
「ただいまー」
シャミの家へと帰ってきた俺たちは、この後特に何もすることがなかったのでとりあえず寝る準備をした。
「晴彦はここで寝てにゃ。」
「わかった」
シャミに指示された所は、食事をしたテーブルのすぐ横だ。そこにシャミが下に敷くようなものを持ってきて、簡単だけど布団が完成した。
「ありがとな」
「いいんだにゃ。晴彦は、そろそろ寝るかにゃ?」
「ん、どうしようか……」
外はすでに暗いが、なんせ時計がないので今が何時なのかわからない。
「シャミは眠くにゃってきたから、そろそろ寝ることにするにゃ……」
シャミを見ると、眠そうな顔をしてあくびをしている。
てかシャミって確か、昼間あの野原で寝てたんだよな……。
「ふぁ〜。おやすみにゃ〜」
「おやすみシャミ」
最後に大きい欠伸をしたシャミは、そう言って奥にある部屋へと歩いていった。俺もそれに対して答え、シャミを見送った。
服を取りに行った時もあの部屋だったな。あれがシャミの部屋なのか。
俺はそんなことを考えながら、シャミに敷いてもらった布団に倒れるようにして横になる。
今日一日だけでいろいろあった。異世界にいったり、魔法を覚えたり、シャミと温泉に入ったり……。
いかん、シャミの裸を思い出しそうだ……。とりあえずもう寝よう。
俺は思い出しそうになったシャミの裸をかき消すようにして、無理やり寝ることにした。やはり疲れが溜まっていたのか、まぶたを閉じていると思いのほか早くに睡魔がやってきた。
明日もシャミにいろいろ教えてもらおう……。
最後にそんなことを思いながら、俺は眠りについた。
……ん。
目をさますと、周りはまだまだ暗かった。時間はわからないがまだ夜中のようだ。
「と、トイレ」
しばらくそのままぼーとしていると、突然尿意を感じてしまったので、布団から起きた俺はトイレを探すことにした。
シャミに教えてもらえばよかった。
とりあえず探しているとトイレは見つかった。
俺がようをたすと、再び眠るために布団にもどろうとした時、途中でドアが開いている部屋をみつけた。
シャミの部屋……じゃないな。
シャミの部屋は、俺が寝ていた所から見える位置ある。しかし、この部屋はちょうど死角になっていて見えない場所にある。
き、気になる。
トイレに行く時はさほど気にならなかったが、今は凄くこの部屋に何かありそうな気がしてならなかった。
入っては駄目だと思っても、やはり好奇心に負けてしまい、俺はその部屋に入ってしまった。
「暗いな」
部屋の中は当然明かりなどついておらず、暗かった。一度戻ってランプを持って来ようとも思ったが、俺には今魔法が使えるということを思い出した。
修行以外で始めて使うのがこんな時になってしまったのは笑ってしまうが、とりあえず使ってみることにした。
「イグニッション」
俺が修行の時と同様にして魔法を唱えると、手のひらには大きな炎が現れた。
「うわ」
そうだ忘れてた。
俺は出てきた炎をすぐに小さくした。火の大きさを変えるには、魔力の量を調整すればいいらしい。魔力の調整は結構簡単にできるらしいので、修行の時シャミに教えてもらっていたのだ。
さて……。
俺は小さくした炎で周りを照らした。
どうやらこの部屋は書斎のようで、並んでいる棚にはたくさん本が収められている。
なんか凄いな……。……これは。
俺は部屋の中をいろいろ見ているうちに、中央に置かれている机の上にある本が、開きっぱなしになっていることに気ずいた。気になってその本を少し見てみることにする。
「新魔法……?」
その本の表紙にはそう書いてあった。
「火系統の魔法を研究し、一つの魔法を考えついた、私はこの魔法を『エクスプロージョン』と名付ける……か」
開いてあったページには、『エクスプロージョン』のことと、その発動方法が書かれていた。
その本の見た目が古いので新魔法ってこともないだろうけど、どうやら魔法について書かれた本のようだ。
「この魔法は魔力がある一定以上高くないと発動できない。今この魔法を発動出来ると考えられるの魔王、勇者の両者である……」
やっぱり勇者もいるんだな。
本当に俺が魔王なのかどうかはまだわからないが、勇者も存在するようだ。
俺はその後もその本を読み進めてみた。しかし、どのページを読んでみても字が書かれていない。字が書かれていたのは最初に見たページだけだった。
結局その本でわかったことは、まだシャミにも教えてもらってない『エクスプロージョン』という魔法のことと、勇者のことだけだった。
そろそろ戻るか。
俺は開いていた本を閉じると、そっと部屋からでて再び寝るために戻った。
シャミもまだ起きていない。
『エクスプロージョン』……、勇者か。
まだシャミにも教えてもらっていない魔法のことや、勇者のこと。考えていると心が踊ってしまう。
でも勇者に対しては俺の敵になるのか……。一体どんなやつなんだろう。
そんなことを考えながらだったので、なかなか眠気はやってこない。
結局その後、俺はシャミが起きてくるまでずっと起きていた。