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魔法

「ふぅー、食った食った。ごちそうさまでした」


「ふふ、晴彦は食いしん坊だにゃ〜。シャミもごちそうさまでした」


俺とシャミは作った料理を全て食べ終わると、テーブルの上に残っているお皿を全て台所に持って行ってそのまま一緒に洗い始めた。


「そんなことないぞ。飯がうまくてな、つい」


「そうかにゃ? ……でも確かに、一人で食べている時よりは美味しかったにゃ。」


シャミは食器を洗いながらそんなことを言っていたが、食器を洗う水の音で後半は聞き取れなかった。


「シャミ、今なんて?」


「にゃんでもにゃいにゃ〜。さぁ、さっさとこれを片付けるにゃ!」


妙に話をはぐらかされた気がするが、とりあえずは言われた通りに食器を片付けた。


しばらく洗っていると、俺たちが食べた分のお皿は全て洗い終えた。


「ふー、やっぱり二人で洗うと早いもんにゃ。晴彦はこれからどうするにゃ?」


シャミは食器洗いで濡れていた手を、近くに掛けてあったタオルで拭きながら俺にそう聞いてきた。


「そうだな。俺は、……どうしよう。シャミはいつも、この時間は何してるんだ?」


「シャミかにゃ? シャミは……、たいてい本を読むか魔法の修業をしてるにぁね」


「なるほど」


本はともかく魔法の修業か……。せっかく魔法が使える世界に来たんだ、使ってみたい。シャミに頼んでみようか。


俺はしばらく考えた後、シャミに魔法を教えてもらえないかどうか聞いてみることにした。


「シャミ、よかったら俺に魔法を教えてくれないか?」


「シャミがかにゃ!?」


それを聞いたシャミは驚いた顔をして、俺にそういってきた。


「うん。あぁでも、無理ならいいんだ」


その時は仕方ない、また別の誰かに教えてもらうことにしよう。


「いやいや、シャミは別にいいにゃよ? でもシャミにゃんかでいいのかにゃ?」


シャミは心配そうな顔をして、俺にそう言ってきた。


「どういうことだ?」


「いやー、シャミが使える魔法は火系統の魔法か強化の魔法しかないにゃ。だから必然的に教えられるのはその二つしかにゃいにゃよ。……晴彦はそれでもいいのかにゃ?」


そういうことか。


「全然いいよ。その二つかっこいいじゃないか」


「そうかにゃ? なら、シャミが晴彦に修業をつけてやるにゃ! これからはシャミ師匠と呼ぶといいにゃ」


シャミは胸を張って俺にそう言ってきた。顔は凄く嬉しそうな顔をしている。


「ありがとう!えっと……シャミ師匠」


なんだかちょっぴり恥ずかしかった。


「ニャハ〜、にゃんだか照れるにゃ……。よし、それじゃさっそく修業を始めるにゃ! 晴彦。表にでるにゃ!」


「はい師匠!」


俺たちは、さっそく魔法の修業をするために庭にでた。


「それじゃ、始めは『イグニッション』の魔法から教えるにゃ! 火系統の魔法はこれが出来にゃいと、後に続く火系統の魔法は全部出来にゃいにゃ」


「そ、そうなのか?」


それじゃ、これが出来なかったら諦めるしかないのか。


「ニャハハ、心配しなくてもこの魔法を使えない魔族にゃんて魚人族とかの水系統を得意とする魔族ぐらいしかいにゃいにゃ。黒神族の晴彦は大丈夫だにゃ」


「なるほど。……って黒神族?」


黒神族ってなんだ?


「ん? どうかしたのかにゃ?」


「ちょっと待ってくれ、俺は人間じゃないのか?」


俺はてっきり自分のことを人間だと思ってたけど、違うのかな。


「にゃにを言ってるんだにゃ! 黒い髪に黒い瞳、どう見ても黒神族にゃ。今じゃかなりの希少種だけど、シャミは本で読んだことがあるにゃ。それに……人間だにゃんて……」


「そうだったのか……。って、シャミ?」


シャミが人間という言葉を口にした時、一瞬だが凄く怖そうな顔をしたように見えた。しかしそれは本の一瞬で、気がつくとすぐにいつものシャミの顔に戻っていた。


「いや、にゃにもないにゃ。 それより、やっぱり晴彦は世間知らずだにゃ〜」


「い、いやー。ははは……。」


なんだったんだろう……。


「まぁいいにゃ。シャミが読んだ本によると、黒神族は大抵の魔法は使えるらしいにゃ。だから晴彦は心配しにゃくていいにゃ」


「おぉ、それってなんかお得だな」


「んー、実はそうでもにゃいにゃ。大抵の魔法を使える種族は、一つの魔法を極めることが出来にゃいのにゃ。確かに多くの魔法を使えるってことは戦闘で有利にゃんだけど、それでもやっぱり一つの魔法を極めた方が強いもんなんだにゃ」


「そ、そうなのか……」


まぁ、大抵使えるってことは中途半端ってことか。


「まぁ元気だすにゃ。ささ、修業修業」


「そうだな。よし、それじゃ教えてくれ」


まぁここで落ち込んでいても仕方ない。やってやるか。


「わかったにゃ〜。まずはシャミがやってみるにゃ」


シャミはそう言って手を体の前に出した。


「イグニッションだにゃ!」


一呼吸おいた後シャミがそう言うと、シャミの手のひらの上にはちょうどソフトボールぐらいの火の玉が出来ていた。


「おぉ!」


これが魔法か……。改めて見ると、やっぱり凄いな。


「ニャハハ。それじゃ次は晴彦がやってみるにゃ。コツは手のひらに意識を集中させてから、魔法を唱えた瞬間、頭で石と石とがぶつかり合うことをイメージすることにゃ。成功してからも、意識を途切れさせたらダメにゃよ」


「わかった」


俺は目をつむり、手をだすと、そこに意識を集中させた。そして、俺が頭の中で石と石とがぶつかり合わせた瞬間、魔法を唱える。


「イグニッション!」


ボッ!


次の瞬間、まぶたを通してでもわかるほどの光が俺の視界を埋め尽くした。心なしか、手のひらには温かさをかんじる。


「す、凄いにゃ……」


シャミがそう言ったので、俺は自分の手のひらよりシャミの方を先に見ていた。シャミは唖然とした表情で俺の手のひらの方向を見ている。


そして、俺もゆっくりと自分の手のひらを見てみた。……するとそこにはさっきのシャミよりもずっと大きい、バスケットボールぐらいの大きさの火の玉が出来ていた。いや、火の玉というよりは炎の塊だ。


「晴彦凄いにゃ!!」


俺がそれに見とれていると、横にいたシャミが興奮した声で俺にそういってきた。


「そ、そうなのか?」


正直俺にはわからない。魔法を使ったのも始めてだったし、この炎のことを怖いというよりも温かく感じていたからだ。


「これは凄いにゃ! 普通は最初でこんなに大きくなることはないにゃ! 大抵はこれぐらいで、何回もやっていくにつれてどんどん大きくなるんだにゃ」


そういってシャミは指でゴルフボールぐらいの輪っかを作った。


「なるほど……」


「晴彦は凄いにゃ……。これじゃ、シャミが教えることはすぐに終わりそうだにゃ」


シャミはそう言って笑っている。しかも、なんだか嬉しそうだった。


「それじゃ、せっかくだからそのまま次の魔法もやってみるにゃ。次は、『ファイヤーボール』だにゃ。この魔法は、『イグニッション』によって起こった火を球体にして相手に放つ攻撃魔法にゃ。ちにゃみに、火系統の魔法で『イグニッション』の次に簡単なのがこの魔法にゃ。それじゃまたシャミが手本を見せるにゃ」


そう言って、シャミは『イグニッション』によって火を起こし、魔法を唱え、遠くにあった岩に向けて放つ。


「ファイヤーボールにゃ!」


岩にシャミの放った魔法があたると、表面には黒い焦げ跡が出来ていた。


「さ、次は晴彦の番にゃ。コツは、手から火が離れていっても意識を途切れさせにゃいことにゃ。そこで途切れさせてしまうと、火は途中で消えてしまうにゃ」


「わかった」


俺はさっきから手のひらの上で浮いている炎を、同じくシャミが『ファイヤーボール』を放った岩に向けて放つ。しかし、俺が投げた炎は岩の元に辿りつく前に、シュンッと消えてしまった。


「惜しかったにゃ〜」


それを見ていたシャミが、落ち込んだようにして俺にそういってきた。


「どうしてシャミが落ち込むんだよ」


俺はそういいながら笑ってしまった。


「弟子の失敗は師匠の責任にゃ。シャミのお師匠様もそう言ってたにゃ」


「そうか。なんだかいいお師匠様だな」


「そうにゃよ〜。シャミにとって大事なお師匠たちだったにゃ……。まぁ、気をとりなおして、もう一回にゃ」


たちだった?


シャミの顔が凄く寂しそうになったので不思議に思ったが、俺は聞けなかった。


「わかった。……その前に、もうちょっとコツみたいのはないのか?」


あまりシャミを落ち込ませたくないので出来れば次で成功させたいと思った俺は、聞いてみた。


「そうにゃね…。それじゃ、手から離れていく火に糸がついているようにイメージしてみるにゃ。もちろん、糸って言ってもあの糸じゃにゃいにゃ。自分の意識と火を繋ぐ糸って考えるにゃ」


「糸か……。わかった」


俺は再び『イグニッション』を唱え、炎に糸がついている感じをイメージしてもう一度向こうの岩に放つ。


ドンッ!!


俺が放った炎が今度は途中で消えずに岩にあたると、その瞬間凄まじい音がして土煙が舞った。しばらくして土煙が収まると、そこから現れた岩は粉々になっていた。


「にゃは〜、やっぱり凄いにゃ……」


シャミがそれを見て、また感心していた。


正直これには俺も驚いていた。シャミの魔法では焦げ跡がついただけだったのに、俺は岩を粉々に砕いてしまったからだ。


「きっと晴彦にはそうとうの魔力があるんだにゃ……。」


ポツリと、シャミがそんなことを言っていた。


















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