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その心臓に宿るもの  作者: ゼオ
二章 大会と陰謀
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8話

それは何処か仄暗い一室


「第一段階は突破、か…」


高級そうな椅子に背を預け、そんな言葉を呟く男がそこにはいた。その姿は計画の邪魔をされ、醜態を晒した時のことが嘘のようだ。


「ああ、それと…」


男は机にある羊皮紙にすらすらと文字を書き並べていく。


「これでいいだろう。ハッ、これを読んだときのあの人の顔はどう歪むんだろうな~。楽しみだ」


嬉しそうに言うが、言葉にされた文字は物騒だ。瞳の奥には欲に満ちた狂おしい光が宿っている

ふとその男は首を巡らせ、ある一点を見た。


「役に立って貰いますよ。あの人の友達さん」


その視線の先には手足を拘束され猿轡を噛まされた女性がいた。今は眠っている。


「ああ、待ち遠しいですねー。あの人が僕の前に這い蹲るのを想像するとゾクゾクしますよ」


「外面は良いのに中身は下衆ですね貴男は」


蔑みの言葉と共に扉を開けて入って来たのは背の高い女性。


「君も変わらないだろう──。」


「否定はしませんわ。私だって同じ様なものですし、──。アイツから受けた屈辱を果たす為に協力してんですから」


突然変わった口調は元々の性格に起因するものか、それとも"アイツ"という言葉が指す人物の話をしているせいからかはわからない。


「女性は怖いねー。口調、変わってるし」


「失礼。つい苛々してしまいました」


どうやら苛つきから一時的に地が出ていたようだ。つまり先程の両方が当てはまるということか。


「さっきアイツをチラリと見ましたが、近くにいる男…かなり厄介そうですわよ?」


「ああ、そうだな。まあそこは何とかするさ。気づかなければ処置の施しようもないだろう。慎重に進める」


「そうですか。やっと念願が叶おうという時なのです。順調にいくことを願いますわ」


「大変だね君も」


「貴男こそ。このことが明るみに出たら大変でしょうに」


「「………」」


2人が互いに牽制するように視線を合わせた無言の応酬の後─


「ははははは」

「ふふふふふ」


不気味な笑いが謀ったように重なった。






******************************






とある一室


そこには決闘の時にジルエスが目を向けた方向に結界を張っていた人たちの姿があった。


「あの編入して来たコ、なかなか面白いな~。戦ってみたいな~」


背もたれの方を前にし、椅子に座って(?)いる小柄で如何にも快活そうな緑の髪をした女生徒が言う


「私の結界も見破られたわ」


腰まで垂らした金髪を指先で弄る女生徒。背が高く、その立ち姿はスラリとして気品が漂っている。


「ウム、儂も勝負を挑みたいと思うんだが」


学生とは思えないようなゴツイ体格に少々老け顔の男生徒。


「みんなやる気あっていいね~。僕は見学だけでいいや。疲れるのヤだし」


そう言うのは平均的な身長の男生徒。顔立ちも庶民的で地味だ。他の人とは違ってインパクトというものが足りないような気がする。まあ他が個性的過ぎるだけかもしれないが。


それから暫く、談笑する幾人かの声が明るい部屋に響いていた。







******************************





こうして大会一日目の夜は更けていく。

様々な思惑をその暗闇に紛れさせて。

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