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その心臓に宿るもの  作者: ゼオ
二章 大会と陰謀
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6話

空中で腰にある剣の鞘口に左手を添え、右手で柄を握るアイラ。眼を細め真剣に言葉を紡ぎ始める



「其の本質は焦滅

 天上に仕えし龍

 託されぐぎゅっ」


蛙が潰れたような声とはこういうことを言うのだろうか。ん?原因は何だって?


俺が引っ張ったけど?

それも襟を思いっきり

さぞかし苦しい事でしょうね(笑)


「な、何しちゃってんねんジルっち!」


頬を膨らませていらっしゃるが



「どんだけぶっ放すつもりじゃボケ!!」


俺はそのアホ面に向けて怒鳴った



魔術を相殺するのにどんだけ高度な魔力練ってんだよ!下手したら校舎の半分から上が吹っ飛ぶぞ!?



「え?なに?馬鹿なの。馬鹿なんでしょ?」


「ジルっちが怒った。キャ~♪で、どうするのこの状況」


俺は黙って襟を掴む腕に力を込める


「え゛?ちょっまっ…何するつもり笑い方おかしくない笑うっていうか嗤ってるし」


「オシオキだ」


アホな子を刻々と近づく地面に向け投擲


「ギャーーーー…」


落ちていったがちゃんと着地した。チッ

それと女の子があげていい悲鳴じゃないでしょそれ



さてさて目下魔術による追撃を受けている&落下中の俺は邪魔な人(アイラ)が居なくなったとこで呟く


【雷】

あらかじめナイフに内包しておいた雷の魔力を呼び起こす


それを魔術に向けて放射状に放った


─バチイィィイイ!

ナイフは紫色の残像を残しながら飛来する魔術を切り裂く


俺はその様子を見ながらアイラの横に着地する。投げたナイフは鋼糸を柄に巻きつけておいて回収


「よくも投げてくれやがっちゃったなジルっち。後で痛い目見せてやるぅ~」


「はいはい。後で、な。今は目の前に集中しろよ~アイラ」


走り出す



さっきの放送の限りだともうそろそろ予選は終わるはずだ。それまで戦うのめんどいから逃げ切ろう


そんなことを考えながら校舎の間を駆け回っていたら建物の陰から誰かが出てきた


白い髪が目に映る



咄嗟に地面を蹴り上げて飛び越え、着地点で停止した。振り返り際に声をかける


「適当に負けるもんだと思ってたけど?」


「そうも言ってられなくなった」


建物の陰から出てきたのはカイルだった


「その人だ~れ?」


「…ああ、いたんだアイラ。同じ部屋の人だよ」


「扱いが酷い!?白い髪ってスイちゃんと同じだね~」


「そうだな。で、何で負けられなくなったんだ」


「さっき部屋に来たリーンがいただろ?」


「あのツインテの子か」


「アイツはあれでも1年の首席なんだが…」


「はは~ん成る程。ここでは落ちこぼれって言われるDクラスの兄貴にベタベタしてたら何かいちゃもんつけられた、と」


何の脈絡もなくテンブレ乙という言葉が頭に浮かぶ。どういう意味だ?


「そんな所だ」


「で、これからどうすんの?」


「後少しで予選は終わるだろうから適当に歩き回るさ。ノルマは果たしてるからな」

カイルの左胸に付いているバッジは既に色づいている



─ピィィィィィィィイイイイイイイ


話している最中に甲高い音が鳴り響いた


『今の音は予選終了をお知らせします。現在戦闘中の人達は戦闘を止めて下さい。止めなければ失格とさせていただきます』


─ズドォォォオオン



その言葉が言い終わると同時に雷が落ちたような音が鳴り響いた

っていうか雷だろ今の、オイ


『なお、この学園の戦闘は魔術によって監視されているので悪しからず』


…ひでえ。普通それを先に言うだろうと思ったのは言うまでもない


俺の心情をよそに放送は続く


『あ、今ので何人か脱落してしまったみたいですね。予選を通過したのは114人です。それでは皆さん一度闘技場に戻ってください。勿論戦ったりしたらさっきのより威力を倍にしたのが飛んできますよ?では』



「こえ~鬼畜だなありゃ」


「ふぇ~。放送の人恐いね」


「急ぐぞ」


「へいへい」


俺たちは闘技場に向けて走り出した


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