5話
あれから数時間が経過
「ふ~疲れた~」
「お疲れしゃま~。大人気だったねジルっち」
「全くもって嬉しくねえ」
逃げ回った末、校舎の屋上にたどり着いた俺とアイラ
「でも、バッジ沢山集まったよ?」
「は?」
その言葉に呆ける俺。逃げている間バッジは取っていなかった筈だ。それにどこにそんなものが…
「ほら!」
そう言って小さな袋をポケットから取り出し逆さにするアイラ。ジャラジャラと小さな袋からは有り得ないほどのバッジが溢れてくる
≪収納袋≫冒険者が多様する。見た目の小ささからは考えられないほどの物を入れることができる高価な魔具だ。間違っても学生が買える額じゃない…ハズ
「用意がいいことで」
「備え在れば憂いなしなんだよ~♪ジルっちが倒したのを他の人に取られるのも何かイヤだしね~」
得意げな顔でアイラ。どうやって手に入れたのかが気になるが…聞くのも億劫だ
「それで~どうする?いる?」
「じゃあ10個くれ」
バッジは全部で40に届くぐらいあった
(意外と倒してたんだな俺)
そんな事を思いながらも手は動き左胸の前に翳したバッジは消えた
これでノルマは達成。逃げ切れば2回戦に進める
「私も貰っていいかな?元はジルっちが倒した人のだけど…」
「いいんじゃ?アイラが拾わなかったらここに無いし」
少し遠慮がちに聞いてくるアイラ。意外と気にしている。何もしないで貰うのは後ろめたいのかもしれない
「やった!!ジルっちの近くにいると楽だと思ったのは間違いじゃなかったのさ~♪」
前言撤回、ぶち壊しやがった。呆れてものも言えないとはこの事か
「ん?どうしちゃったのジルっち。黙り込んじゃって」
「…はぁ」
頭を抱える俺
「あれ?私なんかしたかな~」
(何もしてないからだよ…)
そんな中、耳に飛び込んできたの はシルビーさんの声
『ピンポンパンポーン。現時点でのバッジのノルマ達成者は93人で~す。因みにバッジは20個集めたからってそれ以上集められない訳じゃありませーん。つまり沢山集めるほどノルマ達成者が減って、2回戦に進めなくなる人が多くなりま~す。さあじゃんじゃん集めて敵を減らしましょー。集め終わって無い人は時間も残り少ないから死に物狂いで頑張ってね♪追伸:バッジを20個集め終わると色が変わるよん♪目立つからお気をつけて~。以上!!』
なんかキャラ崩れてないか?それとも初対面の時は作ってたとか。教室での一件もあるしなー。…気にするだけ無駄か
気を取り直して―
「ホントだ色変わってる~。スゴーイ」
アイラが結構な声量で驚いていた
間の抜けた声に力が抜ける俺
思った矢先にこれだ。マジ緊張感ねえなアイラ
この時、俺の中でアイラはアホな子に決定した
アイラに促されるようにバッジを確認すると、盾は白銀、剣は黄金に、龍は蒼くなっている
無駄なところに金掛けてんなと思ったのは言うまでもない
と、なんか周囲に人の気配がたくさん…
「げ、見つかったか!!」
気付かないうちに攻撃する気なのか、魔力があちこちで練られている
「何で見つかったんだ?」
さっきから"俺の"気配は完全に消してるしわかるはずは無いんだけどな~。あれ?なんか見落としている気が…
そこで気付いた原因は…
「アイラか!!」
「ひゃっ!?なに?何か起きたの!?」
突然の声に肩がビクッと跳ねキョロキョロと周囲を見渡すアイラ
さっきの大声だな。今のも十分デカいけど
「あ~囲まれちゃったのか~」
「逃げるぞ。いちいち戦わなくても逃げ切ればいいんだから」
「正直言うと~?」
「面倒だ」
「りょーかいでアリマス、ジルっち」
「ふざけてる場合か」
俺らは小言を交わしながらも屋上から飛ぶ
「やっほーい」
声のする方を見れば俺に続いて飛んだアイラ。と、その後ろからも…いらないのがたくさんついてきた
魔術だ
それも空中で当たるぐらいの絶妙なタイミング。これでは避けれない
狙ってたのか偶然かは知らないけど厄介だな!
脳内でこの状況を打開する策を探る
アイラは俺の顔を見て何を思ったのか後ろに振り向き、言った
「ジルっちに私の力を見せてあげるのさー」
「は?」
俺は自分でも間抜けだと思う声を出して呆けた