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その心臓に宿るもの  作者: ゼオ
二章 大会と陰謀
21/27

3話

「はぁ」


教室に来てみたはいいものの、無人


「集合場所間違えたっぽいな~。つうか思い起こしてみたら聞いてないじゃん!?」


静まり返った教室に声が反響する

1人しかいない教室は意外に寂しい


他を当たろうと扉に手を掛けたが


―ガラガラ


俺が力を込める前に突然扉が開く


そこにいたのはソフィー


走ってでもいたのだろうか、髪は乱れ服装が崩れている姿は昨日のキチッとした姿からは想像できないほど色っぽい。思わず目のやり場に困ってしまうほどに


「丁度よかっ「ここにいたのね。早く行くわよ」


動揺を隠そうと声を出そうとするがソフィーはそう言って俺の右手を握り走りだす。俺は引きずられるようにしてついて行くしかない。生徒会長さんよ、廊下走って大丈夫なのか?と思ったがそれは口に出さなかった


「ゴメンね、集まる場所教えてなくて。編入してきたのを忘れてたわ」


「いいよ、でも次からちゃんと伝えてね~。まだこの学園のことあんまり知らないから」


「善処するわ」


「そっ。で、どこに向かってるの?」


「昨日ジルエスがドンパチした場所よ」


「ドンパチってなんかソフィーの口から出ると新鮮だな」


昨日も同じようなこと言った気がする…まあいっか


「そう?」


それにしてもまた闘技場か


会話が途切れ、無言で走る2人


そこで俺はなにか予感めいたものを感じる。それも悪いほうの


う~ん?このまま行ったらヤヴァイと感じるのは気のせいか?


とりあえず現状を確認してみよう


走っている俺とソフィー。2人の繋がれた手と手


はいココちゅうもーーーーく!


繋がれた(・・・・)手と手!!


こんな所見られたらどこぞの親衛隊とかが魔法とかぶっ放してくるような状況下にいることをわかって貰えただろうか


と、考えているうちに闘技場の入り口が見えてきた


これは性急に手を離して貰わなければ!俺は静かな学園生活をおくるんだ!


昨日の騒ぎでジルエスは学園で注目され始めているのに気づかずにそんなことを思っていた


「あの~ソフィー?」


「何?」


「手を離してもらえないかな~?」


「聞こえないわよ。今は急がなきゃ!」


結構な速さで走っているせいで起こる風切り音で聞こえないっぽい


「いやそういう問題じゃなくて…」


「うじうじ言わないの。口より足を動かしなさい!」


「はい!」


強い口調でソフィーが言うのに咄嗟に「はい」と返してしまった

闘技場はもう目前


ああ、終わった…


諦めた。思考を放棄した


「はぁ~」


俺は後々起こるであろう出来事を思い溜め息をつく

振り返ってそんな様子を見たソフィーは不思議がりながらも手を離さず闘技場のゲートをくぐった

そこには生徒が客席とかに座ったり立ったりしている

途端に集まる視線、視線、視線、…


俺には嫉妬ややっかみ等の負の感情とやらを纏った視線が注がれる。勘弁してくれ

「あの野郎ソフィスティアさんの手を握りやがって」「なんであんなヤツが」「殺す殺す殺す」


それに何処からか怨嗟の声もあってさあ大変。ってゆうか最後の怖いよ!


まだ編入してきて2日目なのに…。強引にでも手を振り払うべきだったか?


それを会場の上の方から聞こえる司会者の声が掻き消した


『最後の人が来たみたいですね。それでは各々楽にして聞いて下さい。これよりディリス学園魔術戦闘大会の開始を宣言します』


その宣言に会場が湧く


宣言をしている人は高い所にある賓客用?の席に座っている。隣にはシルビーさんも


それに俺とソフィーって最後だったらしい


そして1回戦の説明があった


主に期限は1日

得物はそれぞれで使っていいが、一度本部で刃引 きをしてもらうこと。自分で出来るならそれでも可


刃引きしても殺傷力はあるんじゃ?と思ったがそこは大会の間だけ学園全体に結界を張り、致命傷になりうる攻撃は威力が弱まるようにしてあるとの説明が


だが致命傷クラスの攻撃を受けた学生は戦闘不能になるので避けなければ敗退だ

1人1個ずつ配られたバッジを奪い合う。バッジは左胸に必ず付けること

奪ったバッジを左胸に翳すと収納できる


どうやったらそんな事出来るんだろなと思った俺はオカシイのだろうか


自分のも合わせて20個集め、最終日まで守りきると2回戦に進める

バッジを奪ったらその人が集めたバッジも数に含むことが出来る

場所は学園内なら何処でもいい


まあこれだけ広ければ大丈夫そうだけど。学園の広さは一辺500メートルの正方形ぐらいらしいし


それと仲のいい人達で組んでも可、闇討ちや裏切りも有りのえげつない戦い

ということだった


最後のとか、なんつう大会だよ。後々の怨恨とか勘弁なんですけど~


バッジは説明の途中で配られていた


外見は盾をバックにして真ん中に装飾の施された綺麗な剣があり、龍がその剣に蜷局を巻くようにして存在を示している。装飾の淵を黒く、その内側を白く精巧に造られているコレはそこらの武器よりよほど値が張るだろうと感じた


最後の説明の所で俺に注がれる視線の密度?威力?が増したのは気のせいだといいな~


説明が終わったとこで漸く俺は切り出した


「ソフィー?」


「何?」


「もうそろそろ手を離して貰えると助かるんだけど?視線が痛いし」


自分たちがどんな格好をしているのかと集まる視線に気付いたのか咄嗟に振り解くようにして手を離すソフィー


「いてっ」


「あ、ごめんなさい!」


そう言うソフィーの頬には朱が差している


「大丈夫?」


「だ、大丈夫だからちょっと離れて!!」


この態勢はヤバイって!


心配したソフィーが俺の手を大事そうに握るもんだから目前に女性特有の膨らみが晒されて理性が…

俺が大きな声を出すからもっと視線が集まってくる


暫くはそんな遣り取りが続いた


それから落ち着いて周囲を見渡すとアイラとスイを見つけたので合流した。そのときときアイラがソフィーをおちょくってまた真っ赤にさせたのは余談


「なんだか大変になりそうだと思うのは俺だけでしょうか?」


「あ~ヤバいかもね~。多分狙われてるよジルっち」


「…ガンバって」


「スイに同意ね」


「三人とも果てしなく他人事だな!?なんか心当たりあるか?」


「多分私達に囲まれてるからじゃない?端からみたら美人侍らせてるんだから」


「両手に華ってヤツだね♪まあ完璧に八つ当たりだと思うけど~」


「…美人?…私も?」


疑問に思ったのか首を傾げるスイ


「スイちゃんかわいい~。ギュッてしてあげる、ギュッて」


アイラはキョトンとしているスイに抱きついた。それでもスイはいつもの無表情を貫いている


「…苦しい」


「ゴメンゴメン」


アイラが離れると同時にスイは俺の目の前に来て言った


「…手、出して」


「こうか?」


言われた通りに右手を出す。するとその上にスイの握られた右手が置かれた


「?」


「…あげる」


スイが手を退けると俺の手の上にはバッジが1つのっかっていた


「いいのか?」


「…戦い、キライ」


その短い言葉で理解した


「ほ~、去年は誰にもあげなかったにょに?」


「…ジルなら、優勝できそう」


「努力します…」


人に期待されるのはなんだかムズ痒い。でも特別嫌いな訳じゃない


「あ、そうだ。スイ耳貸して」


そこで思い出したことがあった


「…ん」


「スイと同じで髪が白いヤツ見つけたぞ」「!!」


驚いてる驚いてる


「アルビノって知ってるか?髪が白い人は他にもいるんだから、まあそこまで気にするなよ」


「うん!」


いつもしているだろう無表情が消え去り満面の笑みを浮かべるスイ


突然だった


ソフィーとアイラも呆然としている

俺に注がれていた視線、怨念のような声も一瞬だが意識から追い出される

それほどスイの笑顔は強烈だった


スイが無表情に戻り我に返ると、先ほどの倍以上の視線と怨嗟に晒されたけど


そんなことをしているうちに第一回戦開始のカウントダウンが始まる


『5』


「じゃあ私は離れてるわね。ジルエスの近くにいると大変そうだから」


意識を取り戻した(といっても気絶していた訳ではない)ソフィーが俺から距離をとる。俺に向けられるその瞳は心なしかさっきより冷たいような気がする。俺なにかしたかな~?と考えたが分からなかった


『4』


「じゃあ私はジルっちの近くにいよっかな~。楽しそうだし」


本当に楽しそうにアイラ


『3』


「…私も、離れる…ガンバって」


「りょーかい」


スイは一言言うと俺から離れて行った


『2』


「戦いだったら合法的にアイツ始末できるんじゃ?」「よし、協力してアイツ葬り去ってやろうぜ」「リア充は死ね!」


周囲の怨嗟がさっきより酷くなってるよ…。始末とか言ってるし


『1』


「はぁ」


俺は今日で、多分一番深い溜め息をついた。あとカウントは1つ、周囲にいる人たちの殺気が膨れ上がる


『0』


今ここに戦いの狼煙があがった

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