17話
「ここ」
スイは部屋の前で止まった
「ここが?」
「そう」
そう、状況がわからない方もいると思うがなにはともあれ俺は部屋の前にいる
ぶっちゃけ、屋根から降りた後、スイに風呂とか案内してもらったのだ
スイの説明によると、一階が施設とか教員の部屋で二階が男子部屋、三階に女子部屋があるらしい
そして俺は扉を開け
「ようこ「バタンッ」」
即座に扉を閉めた
「「・・・」」
「ここって俺の部屋だよな?」
「そのはずだけど・・・」
スイに確認を取るが、間違いないっぽい
俺は意を決して扉を開いた
「う~。どうして閉めたの~?せっかく待ってたのに。プンプン」
「その前に、なんであなたがここにいるのか教えて貰いましょうか?シルビーさん」
そう、目の前にはこの学園の学長であるシルビーさんがいるのだ。前腰に手を当て、プク~と頬を膨らませるという「いかにも怒ってます」的な姿勢付きで
「ジルエスくんが来るのを待ってたの♪」
切り替え早いな~
「ふざけるのは余所でやって下さい」
が、俺はにべもなく言い放つ。そしてこれから俺が住むであろう部屋を見渡す
「・・・なんじゃこりゃ・・・」
シルビーさんに意識が向いていたこともあり、驚きが隠せない。
廊下があんなに普通だったのはこういう部屋の豪華さが原因なんじゃね?
なんたって最上級の宿並みの仕様だ。
広さは目測10×7メートル四方。まず見えるのはフカフカっぽい大きなベッド×2。その隣にやけに煌びやかな机、ソファー.エトセトラ.etc.・・・
ん?ベッドが2つ?まあいい後で聞こう
「あ、スイちゃんもいたんだ~」
「ここがジルのへや」
いつの間にかスイはベッドに腰掛けている
「ね~ね~、2人とも聞いて聞いて~」
「豪華すぎるだろ・・・」(°□°;)
「・・・聞いてる?」
「スイ~、上の部屋もこんな感じ?」
「もうちょっと物が多いけど、基本的に同じ。それと私は友達と相部屋」
相部屋ってことは俺にも同居人がいるのかな~
「聞いてよ~」
「そっか~。今度スイの部屋見せてもらっていいか?」
「ダメ!!」
「即答かよ!」
「・・・りょ、寮長にバレたら・・・ガクガクブルブル」
スイは小さな声でブツブツと何か呟いている
「ん?なに?」
「うわ~ん。2人が構ってくれないよ~」
空気のような扱いだったシルビーさんが泣き出した。よほど無視されたのが寂しかったらしい
まあわざと無視してたんだけど~
これは勝手に俺の部屋に入っていたお仕置きだ
「どうどう。シルビーさん泣き止んで下さい。話聞きますから」
と俺は五月蠅いおば・・・ゲフンゲフン、もといシルビーさんをあやす
俺が思考の中でおばさんと考えてたらシルビーさんの眼が光った。が、すぐに泣いていたシルビーさんに戻る。あの眼には逆らえそうに無いです、はい
「わたしは馬じゃないよ!」
「じゃじゃ馬根性はありそうですけどね」
「・・・プッ」
その言葉に思わず吹き出すスイ
「スイちゃんなに笑ってるの!?」
「笑われちゃいましたね?」
「・・・グスッ」
「あ~ハイハイ、聞きますから。埒があかないのでサッサと話して下さい」
と俺はめんどくさいので手を顔の横で降りながらシルビーさんに話をするよう促した
「じゃあ改めて」
そこでシルビーさんは真剣な表情で俺に向き直る。さっきのは嘘泣きだったようだ
「昼間はソフィーちゃんを助けてくれてありがとう」m(_ _)m
「そんなことですか。コッチとしては、全部捌ききれなかったせいでソフィーに危険が及んじゃったん
で、逆に謝りたいぐらいですけどね~」
「それでもよ」
「まあ良いですけどね。今思ったんですけど、シルビーさんって真剣な顔も出来るんですね~。意外」
「私を何だと思ってるのかしらコノ子は・・・」
え?ただの親バカですけど?
「え?ただの親バカですけど?」
「な、なんでそのことを!?」
と大きな反応で驚くシルビーさん
思っただけのつもりだったがどうやら口からでてしまったらしい。というか自分が親バカの自覚あったんだ・・・。シルビーさん、なんて残念な人
「教室での態度見たらだれでも分かると思いますよ~」
「うんうん」
「そんな!?スイちゃんにまで!」
「学園のみんな知ってる」
どうやら周知の事実らしい
「シルビーさんって抜けてますね~。天然ですか?」
「天然?」とスイ
「天然天然言わないでぇ-------。私、学長なのに、学長なのに・・・。大事なことだから2回言ったわ♪(キリッ)」
「じゃあもうちょっと日頃の態度を正してください。今のとか」「うんうん」
「え~態度変えるなんてだる・・・無理だよ~」
シルビーさんはいつの間にか俺の部屋のベットに仰向けに乗ってバタバタしている
おい今なんて言おうとしやがった?
「じゃあずっとそのままでいやがると良いですね(ムカッ)」
俺はフッカフカそうなソファーに座り込みながら言う
うわっ吃驚ほんとにフッカフカ!?
「そんなヒドい。見捨てられたわ(ガク)」
「プハ、漫才みたい・・・」
とそれを見たスイは笑いを堪えながら呟く
「自業自得です。で、話がさっきのだけだったなら早く戻って下さい」
「つれないな~。ジルエスくんは」
「つれなくて結構。てかめんどくさいですし」
そろそろ絡みがダルくなってきたし
「スイちゃんは良いのに?」
とシルビーさんが身を起こす
「ちょっと話すことがありますから」
「そう。じゃあ2人共ごゆっくり~。他に誰かいないからってイケナイことしちゃダメだよん(ニヤリ)」
そう言って扉の前で振り返り意味ありげな笑みを浮かべている
「だれがしますか!!」
「ハイハーイ。それと明日のことスイちゃんから聞いといてね♪じゃあ、バイビ~」
ようやくシルビーさんが部屋から出ていった。あの人がいると疲れるな~
「イケナイこと、する?」
スイが顔を少し下げて上目遣いで俺を見る
その瞳は、純真無垢そのもの
「スイ、意味分かってるの?」
危うく理性がフェードアウトするとこだったぞ
「ん~ん」
首を横に振るスイ
「そんなこと人前で言っちゃダメ」
「なんで?」
「イロイロと危ないから」
ほんとアブナイ、主に男性が。いや、意外に女性も・・・
「ん。わかった。で、話ってなに?」
スイが首を傾げている
「ソフィーのことなんだけど~。3階にいる間だけでも護衛?みたいなのしてもらえないかな~って」
「ジルじゃ無理なの?」
「無理じゃ無い。が、上って男子が入ったらどうなる?」
「う~ん。年に何回か男子の侵入があったりするけど、みんな寮長さんがあんなコトやこんなコトを・・・ゴクッ」
スイはその時のコトを思い出したのか息を呑んでいる
「・・・ほらね。そんなとこだと思った」
俺の顔の筋肉は引きつり気味だ
「その前にソフィーちゃんそこまで弱くないよ?むしろ私の方が弱いし」
「そこはあんまり関係ないんだわ。強いて言えば殺気に当てられてすぐ動けるか、だな。ちなみにソフィーはダメだった」
「私、動けないと思う」
「昔、村に居たとき狩りとかしたことないの?」
「ある。けど?」
スイは俺の真意を測りかねているのか疑問顔
「多分殺気当てられたら条件反射で動けると思うよ?殺気に当てられるのは慣れるしかないし~。狩りって独特の緊張感があるじゃん?あれって殺し合いに近いとかじゃなくてそのまんまだからさ~。狩るか狩られるか、みたいな」
「ふ~ん。わかった、やってみる。けど期待しないで」
「はいはい。それでさっきシルビーさんが捨て台詞的なのを残して行ったけど、あれってなに?」
「明日のコト?たぶん魔闘会」
「何それ?」
「この学園でどの位の強さなのかとか知るための試合?戦闘?みたいなの」
「うへ~、なんだってこんな時期に編入させたんだ~。めんどくさ」
「強制参加。手加減は良い。武器はあっても無くても。勝ったらご褒美」
「よしガンバるか!」
「・・・随分態度に差」
急に態度が変化した俺にジト目で視線を投げ掛けてくるスイ
そんな蔑むような目で俺をみないで~
「人間何事も気持ちが肝心だからね~。フッフッフッ、明日から楽しみだな~」
正直『ご褒美』と言うフレーズが耳から離れない
「めんどくさいって言ってた」
「まあいいじゃね~の」
「じゃあその調子でチーム戦も」
「うぇっ!?そんなのもあんの?」
「うん。ギルドチームでそれぞれが出る」
「良いけどさ~」
「じゃあ遅いし帰る」
簡潔な言葉と共にスイは立ち上がり扉の前で立ち止まる
「また明日」
「ああ。また明日~」
スイはこちらを振り向かず、それだけを言って出て行った
「ふ~疲れた。まだ初日なのになんだコノ疲労感は・・・。つうか今日1日色々ありすぎだろ!厄介事の臭いしかしね~ぞ。」と俺は今日あったことを振り返る
思い出してみたが・・・、俺何でこんな色々巻き込まれてんだ?
「あ~やめだやめ。こうゆうときは寝るに限る!!」
俺はそう言うとベッドにダイブする
ん?そう言えば同居人のこと訊くの忘れてたな~
そんなコトを思ったが、すぐに意識を手離した