14話
次の瞬間、一瞬殺気が迸ると同時にドアの方からソフィー達にナイフが5本降り注ぐ
ソフィーは殺気にあてられたのか身を堅くしてナイフを見ている
シルビーさんは頬ずりに夢中で気づいてない
「クソッ!」
俺は即座にソフィー達とナイフの間に躍り出、ナイフの進路に腕と足の脛を移動させた
―キンッ
4本は仕込みナイフの腹で防いだが1本だけ捌ききれず通過する
よく見るとナイフは刃の部分が濡れていてぬらぬらと光っている
「毒だ、避けろ!!」
後ろから人の倒れる音がした
教室にいる殆どの人が固まっている
俺はナイフを放って逃げようとしているヤツを見つけると、人差し指と中指を横に並べそのほかの指を閉じた手を構えて衝撃波を撃った
【指突<穿二連>】
―ボコッ
衝撃は相手の両肩に当たらず背後の壁を凹ませる
よく見ると衝撃を察知して2つとも避け、そのまま踵を返して逃げ出している
「ッ!待て!!」
さっきのを使うには障害が多すぎる!
先ほどまで静かだった教室が事態に気づき騒然としだしたためだ。その間を縫うようにして襲撃者は逃げる
俺は一喝した
「静かに!!」
すると騒ぎは収まったが、襲撃者には逃げられた。その後、静かになった教室にシルビーさんの声が響く
「ジ、ジルエスくん」
みんなが一斉にシルビーさんの方を振り返る
振り向くと、倒れているソフィーとそれを支えるシルビーさん
シルビーさんは少し怯えのはしった顔で涙目になりながら俺を呼んだ
「ソフィーちゃんが、ソフィーちゃんが!!」
慌てて駆け寄ると、ソフィーが苦しそうにしている。息も少し浅い
「どうしたんですか!?」
「さっき倒れるとき足にナイフがかすって・・」
よく見るとスカートが少し切れ皮膚に傷がついている
「毒か・・・吸い出すぞ」
口調が鋭いものに変わり言うと、傷口に口をつけ毒を吸い出し、床に吐き出した。
それを見てソフィーは顔を赤くしたが、すぐにまた苦しそうな表情に戻った
これを5回繰り返したがソフィーはまだ苦しんでいる
教室にいる生徒は固唾を飲んで俺のすることを見ている
「しょうがねえ!!『解除<水>』!!」
そして傷口に掌を押し当て言った
「【制御】」
【制御】は魔術を使うときに誰もが無意識下で行っている作業だ
それを、俺が意識的にしたものがこれだ
【制御】でソフィーの中にある毒を探す。心臓の方に意識を伸ばしていくと心臓の手前ギリギリまで毒が進んでいる。その毒を血液の流れの逆方向に進ませていくが血液が邪魔してなかなか戻らない・・・この作業で毒を身体から出すのに10分は掛かった。
毒をすべて出し終えると床に大の字に倒れ込み、目を閉じて言った
「これで良いだろう。はあ、はあ、はあ」
教室から歓声が上がっている
俺は体中に汗をかいていた
--相当疲れた、主に精神的に。やっぱ慣れないことはするもんじゃないな~
途中から口調が変わっちゃったし~
「「だ、大丈夫?」」
「ああ、疲れただけだから」
目を開けると、ソフィーとシルビーさんがこちらを覗き込んでいる。
少し顔が赤いな・・・
俺は立ち上がるとソフィーの額に手を触れて聞いた
「ソフィーの方こそ大丈夫か?顔赤いよ?」
するとソフィーはますます顔が赤くなり小さな声で
「だ、大丈夫です」
と言って離れた
「それなら良いけど・・本当に大丈夫?」
「大丈夫です!!」
今度はハッキリと言ったが次の瞬間よろけたから慌てて支える。今はソフィーが俺に寄りかかるような格好になっている
周囲の男の学生からの僻みや妬みの視線がキツい・・・
「まだ回復はし終えてないんだから無理すんなよ~」
「は、はい」
恥ずかしいのか顔がさっきより赤くなっている
それから今度はきちんと立って
「そ、それと・・・ありがとう・・・」
ソフィーは笑顔と小さな声で言った
「ど、どういたしまして~」
不覚にもソフィーにドキッとしてしまった
やっぱ笑った方が可愛いな
それを見てシルビーさんが呟いた
「ふ~ん、あのソフィーちゃんにもついに春が・・ぶつぶつ・・」
なんか独り言を言っているシルビーさんの方を見た
「じゃあ俺はナイフ回収しますね~」
「・・・えっ?なに?」
シルビーさんは聞いていなかったようだ・・・
「だから、俺はナイフ回収しますから」
「わかったわ~」
「あっちはシルビーさんがどうにかして下さい」
歓声を上げる生徒達を見て言った
「え~逃げたわね!?」
「正直言ってめんどそ~なので。学長ならそういうの得意なはずですし。あ、ソフィーは怪我人なので頼っちゃダメですよ~。じゃ」
俺はナイフの回収に取りかかった
「う~、みんな、ちゅうも~く・・・・」
シルビーさんはみんなに声をかけているけど、あの調子だとかなり時間が掛かりそうだな
俺はナイフを手の中で転がしながらそんなことを思っていた
感想とかあったらおねがいしま~す