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三題噺もどき5

台風

作者: 狐彪
掲載日:2026/06/02

三題噺もどき―はっぴゃくななじゅうきゅう。

 




 風の勢いに任せて、雨が窓にたたきつけられている。

 ごうごうと吹く音は、どこか不安を煽る。

 まだ昼間だと言うのに、家の中は暗い。

「……」

 今月に入って早々。

 台風が来たらしい。

 おかげで休みが増えてしまった。

「……」

 昨日は、先月末にあった体育祭の振り替え休日で元々休みだったので。

 実質3連休になってしまった。

 得にすることもないので、困ったものだ。

「……」

 さすがに妹たちも今日は臨時休校で、家にいる。

 リビングで動画でも見ているはずだ。

 賑やかな声が聞こえてくる。

「……」

 もう1人は私と同じように部屋に居るはずだが、静かなものだ。

 何をしているのかは知らないけれど。

 まぁ、いつの間にか編み物にはまっていたからそれでもしているんだろう。

「……」

 母はと言えば、普通に出勤していった。

 なんというか、こんな大雨強風の、ザ・台風という状況の中で、来る人が居るんだろうかと疑問を覚えるが……。雨風のお祭り状態だ。こんなの外に出るだけでびしょ濡れになる上に、怪我をする可能性が大きすぎるだろう。

「……」

 おかげでいらぬ想像が頭を巡って仕方がない。

 時折風の隙間から聞こえるサイレンの音に、変な想像をして勝手に不安になっている。全くいやなモノだ。今日くらいは休めばいいのに。

 それに今はもう。

「……」

「……」

「……」

 そういえば、あの子は大丈夫だろうか。

 我が家もそうだが、家の少し離れた位置に大き目の川がある。

 マンション住で、上の方に住んでいるはずだから大丈夫だとは思うけれど……。我が家も川が近いとはいえ、上の方ではあるので、浸水の心配は今のところない。

「……」

 連絡ツールを開き、あの子とのトーク画面を開く。

 体育祭の前日に、昼食をどうするかという話をして終わっている。高校になってから家族で食べるとかしなくなった。体育祭の時もいつもの昼休み同様だ。

 その時にまぁ、外に買いに行くかどうするかという話をしたのだ。

「……」

 ―台風大丈夫そ~?

 という、何も大丈夫じゃないだろうと自分でも突っ込みたくなるようなメッセージを送る。そんなにすぐに返信が来るわけでもないので、画面を閉じ、動画サイトを開く。

「……」

 短い動画を次々と流していく。

 最近はペットというか動物の動画が多い気がする。仔猫とか、子犬とか、子供とか、小さいのがよたよた歩いているのは、誰が見ても可愛いと思う。

 こういうのを見ると、猫を飼いたくなるが、そう簡単に行く話でもないことは分かっているので言ったりはしない。

「……」

 時々、イラストの制作動画も流れてくる。

 アナログからデジタルまで。アナログの方が多いかな。鉛筆で下絵を描いて、水彩で色付けをしていく過程を眺めたり、油絵の具で分厚く重ねて行ったり。デジタルはちょこちょこと変わるので画面酔いすることがあるのであまり見ない。

「……」

 時間が経つにつれ、雨風の音は強くなってくる。

 家が軋むような感覚がして、よくわからない不安に駆られる。

 去年までは台風も地震も、今年も来たなぁくらいで、危機感はあったけど、こんなに不安に煽られることはなかった。

「……」

 早く母は帰ってこないだろうか。

 早くあの子からの連絡は来ないだろうか。

 早く、台風は去ってくれないだろうか。

「……」

 どうしてこういう時に限っていないんだろうか。

「……」

「……」

「……」

 あぁ、疲れた。











 お題:お祭り・猫・水彩

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