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第10話 エピローグ

 ――とても頭がぼんやりする。寝過ぎた時のような、軽い頭痛を覚えて織理は目を覚ました。


「織理、体は平気? 変なとこない?」


 目の前には心配そうに覗き込む弦の姿。そして少し横を見ると攪真と在琉もいた。囲まれている、何故。


「……えっと?」


 弦の心配気な顔に織理は困惑する。はて、何かあっただろうか。ここ最近変わったことなんて無かったはずなのに、と首を傾げる。今だってただ起きただけだ、外に目を向けても空は明るい。別におかしなことはない。精々心地よい夢を見た気がする、くらいだろうか。

 そんな織理のとぼけた様子に攪真は眉を寄せた。


「……まさか記憶が抜けとるんちゃうか?」


 攪真が近づいて織理の頭をぽんぽんと叩く。なんとなくむず痒い感覚だ。違和感を感じるが嫌ではない。

 しかし記憶とは一体? 依然として状況を飲み込めていない織理を在琉が鼻で笑った。


「めっちゃ無様で可愛かったですよ織さん。いやー、アンタにも見せたかったなぁ。畜生織さん」


 在琉はいつもの調子を取り戻したようにせせら笑う。――畜生織理とは一体なんのことだろう、初めての呼ばれ方だと織理はやっぱり困惑した。これまでの暴言の中でもトップクラスに失礼だ。

 困った織理は弦に視線を向ける。少し困惑した顔の弦は小さく笑いながら答えた。


「まぁ、猫だったんだよ。織理が」

「俺が? 毛玉だったってこと?」


 ――何それ楽しそう。織理はちょっと自分が羨ましくなった。あのふわふわの毛玉、身軽でどこにでも行ける自由な身体能力、そしてそこに居るだけで可愛い最強の生き物……そんなものになっていたのかと。だから畜生なのかとも納得がいく。猫を畜生扱いすることには異論があったが。

 少し思い馳せている織理に誰も真実を告げられなかった。――お前に猫耳が生えてたんだよ。それだけは言わなかった。本人に知らせることでもないと思ったので。


「あんなに耐えとったのに無意味で可哀想やなぁ、先輩?」


 攪真は小声で弦に耳打ちする。弦は困った様に笑い返した。それが聞こえなかった織理は、何の話? と首を傾げた。


「いやー、でもよかったわ。これで遠慮なく織理に触れるってもんやし」


 空気を変えるかのように軽く茶化す攪真。しかし笑う攪真の頭に何か見えた気がした。


「攪真、それ何……」


 織理が指差すと攪真は手を頭に当てる。それに釣られて弦と在琉も視線を送った。何やらふわふわする感覚、攪真は顔を青ざめさせた。


「猫……」

「いや誰得だよやめようよ」


 織理の呟きを聞いた弦がすぐさま反応する。流石に攪真の猫耳は全く嬉しくないと。


「あんの……野郎……!!」


 これはきっとあの犯人の報復に違いない、最後になんか仕掛けてやがった! 攪真は行き場のない耳をとりあえず動かした。


 この後どうなったかはまた別の話。



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