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全員集合 前編

 次の日、学校で何時もの様に集まってご飯を食べる楓花達。


「じゃあ2人も今日からゲームできるんだな!」

「おう!やっと爺ちゃんから許可出たし。海斗も母親から許可貰ったらしいしな」

「結構長かったね...」

「おいコラ!なぁに人の焼きそばパン食ってんだテメェ!?」

「美味しいよ。欲しいならあげる」

「美味いの知ってるよ!そもそもそれ俺の昼食だって言ってんだよ」

「じゃあ私も」

「やるわけねぇだろバカタレ共」


 今までは家の都合でゲームに参加出来なかった星矢と海斗も、今日から一挙にプレイしていく事になり、先に遊んでいた楓花達も今から楽しみにしている。


「無念...」

「早い者勝ち」

「違ぇし、やらないからな」


 顔を伏せて悲しそうにする美音と、何故か勝ち誇る楓花、それに対して星矢が怒っていると、ようやく海斗が戻ってきた。


「ごめん遅くなった。購買めっちゃ混んでて」

「遅ぇぞー海斗!だから2回の渡り廊下は飛び降りるのが早いって言ったろ」

「それ出来るのお前だけな!?危なくて出来るわけないだろ」

「海斗、遅刻のペナルティで焼きそばパンちょうだい、私が食べてあげるから」

「なんで上から目線なんだよ」

「海斗私も!」

「コイツらァ」


 美音と蓮花によって焼きそばパンを1個ぶんどられた海斗だが、そこは付き合いの長さ故、こんな事もあろうかと余分に買っていたのが幸をそうした。

 各々昼ご飯を食べながら、ゲームの話題に花を咲かせる。


「それでさ、皆は職業とかどうしたの?」

「拳」

「短剣」

「魔法」

「予定通りなのはわかったけど情報が少ないんだけど」

「予定通りだからこそ、海斗には期待してる。海斗が美音のヘイト引かないと、私達が爆死する」

「うん!任せて!いつかとっておきのを用意するから!」

「なんで俺だけ犠牲になる前提なんだよ!?てか美音は張り切るな!」

「え?是非とも受けてみたい?もう、海斗はドMなんだから」

「言ってねぇー!?」


 それから美音による海斗弄りが暫く続き、少し落ち着いたところで星矢が話題を変える。


「それで?お前らこの数日何してたんだ」

「引き籠もり」

「武器破壊」

「花嫁修業」

「情報が偏り過ぎだバカ3人。簡潔すぎて全然わからん!マジで何してたんだお前ら」

『なぜわからん?』

「わかるか!」


 この後3人同時に話し始め、特に互いに譲る気もなく、寧ろわざとではと思う程息ぴったりに話し続けて星矢から手刀を落とされ、仕方ないと3人バラバラに今までの説明をする事に。


「それじゃああんま探索は進めてないんだな?」

「それは皆揃ってから」

「1人もいいけどつまんないしな!」

「私は本読みたかっただけ」

「美音はそうだろうな」

「楽しみにしてて」

「何を!?」


 学校の帰り、蓮花は楓花を小脇に抱えて先に帰り、海斗は美音に捕まり返却期限ギリギリの本の山を運ばされ、1人残った星矢は1人のんびりと帰路を辿る。


 それぞれが帰路に着いた中、先に家に着いた楓花達は、一通りの身支度を終えてゲームを始めていた。


「それじゃあ私は親方に挨拶してくるぞ!」

「それじゃ私はここで皆を待ってる」


 蓮花と別れた後、楓花は広場の見渡せる宿を借りて、錬金術の練習をする事に。


「お婆ちゃんの話だと、レシピは弄ってもいいって言ってたから...」


 楓花は錬金術など全くの素人で、持ってる知識も何かしらできる位でしかない。新しい挑戦にワクワクしているが、始めて教わった時から思っていることがある。


「なんか料理してる気分」


 元々料理を教わっていた楓花は、自分の持っている知識の範囲内で工夫しながら作業を行っているが、素材の加工や壺の中の灰汁取りから、気持ち的には鍋料理の仕込みに感じていた。


「これでも何かしら変わればいいけど」


 ここから完成までは煮込む以外にやることも無く、火力にだけ注意しながら完成を待つこと数分、出来るだけ丁寧に作ったお陰か見栄えは悪くない物が出来上がった。


「さて、初めての1人作業、出来栄えは...」


初級ポーション レア度2 品質S

・体力を100回復

丁寧に作られた高品質の初級ポーション、通常取りも回復力が高い。


(確かこの前お婆ちゃんの所で見たポーションは初級のS+で効果は体力を150回復だった気が)


 楓花は自分のポーションがどれ程の物かを知らないが、初めて見たポーションが初級の最高傑作だったこともあり、いい物を作ったという感情があまり湧かないのだ。


「そろそろ皆来てるかな?」


 結果がどうかは別として、そろそろ全員が揃う頃かと思い広場を見渡すと、現実の面影がある男2人を見つけたので外に出る。


「やっと見つけた。他の奴らはどうしたんだ?」

「ビルドは工房、氷菓はインしてるから多分図書館。どっちも呼べば来ると思うよ。と言うか、2人とも殆どそのままなんだね」

「お前はそのまんますぎるけどな」

「私はいいの。今の見た目のままが良いから」


 ゲームの星矢は毛先に向かって紫に染まった髪を耳位の高さで纏めている。海斗の方は外見は現実そのまま、ワンポイントなのか瞳が若干青みがかっている位だろう。


 それから待つこと数分後何やら騒がしい声がしだし、それに合わせて何かの音が近付いているのに気付いた3人が視線を向けると、そこには案の定、こちらへ向かって全力疾走して来る友人2人がいた。

 方や街中では一部のオブジェクト以外が破壊されないのをいい事に、地面に向かってスキルを発動した反動で加速してくる蓮花、方や自己強化を行いながらも小規模な火魔法の爆破を足元に起こして加速して来る美音、この時3人は思った。


(何やってんだあの馬鹿共!)

((あ...もう知らんぷりしとこ))


 2人が目前まで迫った所で、気配を消して、人の間を縫って進んだ星矢が2人の頭に手刀を落とす。


「馬鹿共がー!」

「あ"」

「い"」

「周りに迷惑かけるな馬鹿たれ。あまりに酷いと1発どつくぞ」

「もう食らってる」

「痛ェェェ!?」

「まずは説教だそこに座れ」

「私達はその辺見て回りましょう」

「ライム、同罪か静観か選べ」

「もちろん大人しく待っていますはい!」

「俺まだなんもしてないんだけど」


 そこから暫くは説教が続いたが、これ以上は時間を無駄にしたくないと、楓花と海斗で何とか説得し、早速レベル上げに向かうことになった。

 余談だが説教中の星矢は怒鳴ったりはしない、寧ろとても静かだ、そして取って付けた様な笑顔、しかし目は笑わず。

 怒っていますと言う雰囲気で正論パンチをして来るラムネを相手に、蓮花と美音は、ゲームの中でありながら、何十年と老け込んだようにな外見になっていた。

 助け舟が来た瞬間には元に戻っていたが、2人は同じことはもうしないと誓った。少なくとも覚えている内は。


 そして向かった街の外、その光景を目にした2人の反応はバラバラだった。


「ほー、凄く綺麗だな。まるで本物と区別がつかないレベルでやばい」

「活きのいい気配がするな」

(やっぱり現実で気配探れる異常者はこっちでも異常だった)

「ライム?」

「私何も言ってない」

「...」


 星矢からはかなり厳しい視線を向けられるが、何とかシラを切り通すつもりでそっぽを向く楓花、特に何かあった訳ではないので今回は特には何もなかった。


「それで、これはパーティー戦をするのか?」

「いつもバラバラにやっちゃってるぞ!」

「なら行ってくる」


 一言だけ言い残して近くの草むらに仁王立ちして待つ星矢、近くの茂みから襲ってきた野犬の首を正確に狙い一撃で葬る。


「おお〜」

「いつ見てもキメー」

「変態」

「俺には無理だからな?」

「最初だし、ワンちゃんの攻撃を逸らすところから始めたら?あとちょっとでもワンちゃんから苦しそうな声聞こえたらトムヤムクンの首を切るね」

「それもう反撃するなって言ってないか!?」

(その通りだけど、トムヤムクンはなんだかんだでこっちの都合は察してくれるし今回も大丈夫!ただ毎回何かしら察してるのは普通に気持ち悪い)


「なんか今貶された気がするんだが」

「キノセイキノセイ」

「ヒャッハー!モンスターなんていくら来ても無駄だー!」

「ふふふ、これも魔法をより知るため。技術の進歩に犠牲は付き物」

「はぁぁ〜...」


 1人ぶつかり稽古の様なものを始めようとする海斗だが、そのまわりには既に、カオスな世界が出来上がっていた。


「へへ、もっと斬らせろよ」

「ふふふ、この魔法は近距離で打つと...」

「ヒャッハー!まとめて肉塊にしてやんぜ!」

「もふもふ〜」

「待って!?カオス過ぎるからちょっと待ていお前ら!?」


 海斗を中心に四方に散らばる4人によって、遂に完成されたカオス空間、始まりの街付近の平原には今、首なしの死骸が転がり、強力な一撃によってミンチにされな何かの肉、魔法によって灰や水死体、中には胴体が真ん中辺りで避けたもの、そして成婚尽き果てた様な見た目に、死因と思われる首に切り傷の着いた死骸が転がる、見るものによってはあまりにも酷過ぎる空間の中心にいて、海斗は1人現実を見ないぞと馬鹿りに、包囲網を抜け自分に迫る野犬とぶつかり稽古をしていた。


 初めて5人揃って倒したモンスター達、しかしその内の幾つか、主に蓮花と美音だが、2人の作ったミンチ肉は、いくつかはアイテムとしてすら認識されていない物があるため、楓花はそれらを地面に掘った穴に埋めて埋葬している。


 楓花がこんな事をするようになったのは、普段のゲーム中にも、既にレベル上げだけが目的のプレイヤーは多くいて、そこそこの値段で売れる部位以外は、肥やしになるとその場に捨ててある事が多々あり。それを見てできる範囲で埋葬を始めたのがきっかけだったりする。


 そんな理由から、楓花の魔法レベルは土属性がダントツで高いのだ。穴を開ける魔法はまだ無いが、積み上げる墓石の代わりに初級魔法の『ロックバレット』で出てきた小石を積み上げている。


「魔法だから直ぐ消えちゃうけど、気持ちの問題だし気にしたらキリがない」


 魔法のレベルもそうだが、この時点での楓花のレベルは14、毎回効率のおかしい方法でレベル上げをしているからだが、流石に手に入る経験値にも限界があり、そろそろ他を当たろうかと考えていた。

 そしてクレイの話では、既にレベルが24まで行ったプレイヤーがいるらしく、そう言ったプレイヤーが一番に進化、つまりはより上位の職業になるのではとネットでは騒がれている。

 ずっと入り浸ることはできないが、もう足並みを揃えるためとかは気にしなくていい、全員が一緒に冒険できるようになった現在、ここから更に効率をあげれば追い付けるのでは無いかと楓花は考えていた。

【後書き劇場】逆じゃね?


「なぁ」

「どうしたのアニサキス」

「誰が寄生虫だ!?てかさっきの戦闘、俺タンクなのになんで中心でぶつかり稽古してんだよ逆じゃね!?」

「そうなん?」

「トムヤムクンハゲるぞ?」

「ハゲねぇよ!?」

「トムヤムクンハゲ散らかすよ?」

「おめぇは言い直さなくていいんだよ!?てか何さらっと人の髪ちらそうとしてんだ!」

「ノリノリだからここはあえてやれって言ってるのかと思って」グスン

「あ〜、トムヤムクンが氷菓泣かした〜」

「俺が悪いのこれ!?」

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