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危ない魔法使い?

 昨日のギルド巡りから一夜明け、学校では色々な報告をしながらゲーム談話に花を咲かせていた。


「て事があって、親方厳しいんだ」

「それは蓮花が悪いだろ」

「何故!?」

「いや、そもそも道具壊すなよ」

「道具だけじゃないぞ!金床も割れたぞ!」

「なんで自慢げなんだよ尚更悪いわ!」


 どうやら楓花と別れた後に早速ギルドに向かったらしいが、結果は芳しく無さそうだ。


「楓花、教材揃ったから、今日から魔法の勉強しよっか」

「美音〜私は?」

「蓮花はちゃんと親方に鍛冶習ってからね」

「あい...」

「楽しみにはしてたけど、早くない?」

「ベータ版と同じ所に本があって助かった」


 その時全員が思ったことだろう『なんで本の場所全部記憶してるのコイツ』と、しかし以前にも似た様な事があり聞いてみたことがあるため、そこは美音だからと納得してしまう友人達。


 相変わらずな美音の特技は一旦置いといて、楓花的にはようやく魔法が使える様になると言うことで、内心とてもワクワクしていた。

 美音からの言いつけで、楓花も蓮花も魔法に関してはノータッチなのだ。勿論ポイントを払えば誰でも取得できるが、近距離職にはそもそも適性が乏しい設定があり、魔法系職業よりも必要ポイントが高いのだが、それをどうにかするために、美音式魔法講座が計画されたのだ。

 何度も言うが、Another Lifeはリアル思考で作られており、武器の扱いは勿論、魔法でさも、努力次第でスキルポイントの消費無く覚えられる。勿論これにも限度がある、魔法系以外の職業では習得できる属性に限りがあり、基本どの戦闘職業でも2属性、一部召喚やテイム等の特殊な魔法関係は4属性、生産職等は3属性と最大数が決まっている。


「皆は使いたい属性決めてきた?」

「俺はとりあえず風と火だな」

「私は闇と火がいい!」

「俺はタンクだし土かな、後は移動の補助で風かな」

「私は風と光かな」

「うん。誰も水属性使わないのはわかった」


 全員自分のスタイルに合わせて習得する方向にするのは当然で、汎用性の高い風がやはり1番多かった。

 蓮花の場合は単純にロマンなため除外するが、プレイヤー全体で見ても、魔法を使う近距離職の殆どが、2属性の内片方が機動力を重要視した風なのだ。


 その日の放課後、家に帰った2人は一通りやることを終えて、早速ゲームを開始する。


「それじゃあ私は親方の所行ってくるな」

「あまり物壊さない様に気を付けてね」


 そのまま蓮花と別れた楓花は、美音との待ち合わせ場所である街の中央広場へと向かっていった。

 そこで美音の面影があるプレイヤーを見つけたのでそのまま合流した。


「やっと来た」

「そんなに待たせた?」

「3分位」

「それは誤差じゃないの?」


 これが2人の何時ものやり取りで、お互いに時間をあまり気にしない性格なため、他の友人が居なければ、一日中入れ違って日が暮れたこともあった。


「それじゃあ早速図書館行こっか」

「いいけど、どれくらいかかるの?」

「職業による?多分覚えるだけならそこまで時間的な差はないと思うけど、やってみないと分からない」


 基本的に勉強はあまり好きではないが、これも魔法を覚えるため、楓花は気持ちを切り替えて図書館への道を歩いた。


 図書館の中は常に清掃が行き届いているようで、かなり奥の方にある反対の壁まで本が所狭しと並んでいる。


「個室があるからそこでやろっか」

「氷菓はお金大丈夫なの?」


 この数日間、美音はこの図書館に篭もりきりと言うプレイスタイルだった。そのため金銭的な余裕は無いはずだが、そう思っての質問だが。


「私ここでバイトしてるから大丈夫。偶に本の生理するだけだけど、それだけで図書館の出入りと個室使用はタダ」

「へ〜そうなの」

「私的には楽な仕事。それより行こっか」


 こうして始まった個室での魔法の勉強、その手始めは。


「先ずは魔力を感じようか」

「先生ー、アニメや漫画じゃないのでもう少し分かりやすく」

「...じゃあ手を出して、私が口に水魔法流し込むから感じてね」

「手を出してとは?」

「冗談だよ。ちゃんと手から魔力流すからそっちを感じてね」


 ちょっとふざけてみた的にウィンクを真顔でしてくる美音をスリッパでちょっとひっぱたこうかと思った楓花だが、一旦落ち着いて魔力の感知に集中することに。


「今流した魔力を自分の中に探すんだよ。元々無い物だから判断が難しいけど、これだって物があると思うよ」

「なんか一瞬感じた水圧クソ雑魚の蛇口から出た水みたいなのが氷菓ので」

「おい?」

「それに反発した感覚のがそうかな?」

「残りの授業全部今の発言への抗議にしてやろうか」

「時間がもったいないから進めて」

「チェェェストー!」

「いった!?」


 いきなり頭頂部に衝撃を受けた楓花は、何故手刀を食らったのかさっぱり分からん顔をし、美音はとりあえずスッキリしたから授業の続きを始める。


「何故にぶたれて...?」

「魔力がわかったなら後はそれに属性を付与するだけ。普通は魔導書読んでそこから魔力感知、そこで初めてスタートライン、今回みたいなスピードは本来ならありえないからありがたく思え」

「何故に上から目線?と言うか属性の付与って?」

「それぞれに呪文があるから、ここからは外に出て実技だよ」

「はーい。その前に氷菓もアイテム余ってるなら売ったら」

「そうする」


 ということで、2人は屋外に出て魔法の練習をする前に、お馴染みの商人の元へと向かった。


「へぇ、ライムちゃんのゲーム友達なのね」

「小さい時からの腐れ縁です。もう2人程喧しいのを紹介しますね」

「貴方達まだ未成年でしょうに、お友達の方はわかったわ」

「氷菓です。ライムが何時もお世話になってます」

「まだ数回だけどね」

「ふふ、礼儀正しいのね」

「まるで礼儀正しくない人がいた様な言い方ですね」

「仕方なかったとは言え初見で通報されそうになったからね」


 理不尽だと頬を膨らませる楓花と、必殺の営業スマイルで取り繕うリズに、勝ち誇った顔の美音、この状況に楓花は美音のローブの袖を掴み全力で引っ張る。


「ねぇライム...袖が伸びるから放して!」

「んー!」

「んーじゃない、てかもうかなり伸びてるから、カセットゲームだとグラフィックバグってるレベルだから!」

「ライムちゃんステイよ」

(それにしてもリズさんは氷菓の事を過大評価しすぎてる)


 ここで楓花は1つ、リズの勘違いを正しておくことにした。


「リズさん。氷菓は私の友達の中だと一番ヤバイのだよ?」

「え?」

「酷いなライム。私がやるゲームに爆発物があるのが悪い。私は用意されている物を使っただけで間違った事はしてないよ」

「じー」


 いきなり飛び出すヤベェ奴発言についていけないリズに対して、これまでにやってきたゲームの話を、一部だか説明する楓花。

 話が進むにつれて、リズの目線は美音を危険人物の如き視線で見ており、等の美音はそれを感じて弁明をする。


「ちょっと誤解がないかな?確かに爆発物はしかけたけど、皆が死んだことそんなに無いよ」

「それがあるから問題なんだよ。てかあの時のレアモン!もふもふの可愛いやつ、氷菓が近くで自爆使ったせいで逃がしたの忘れないからね」

「あれは挨拶だから、許してにゃん」

「ギルティー!」

「ぐふぅ...ほ、本気で鳩尾叩かなくても...」

「悔い改めろ!」

「ハッハッハ!だが断る!爆弾魔をやめたら私に何が残ると思ってるの?」

「あ!ライム達みっけー!」


 出店の前でふざけあってる所に蓮花も合流し、余計に騒がしくなった3人に、流石のリズも営業妨害になるので叩き出し、特にやる事もなくなっている3人は、魔法の実戦を行うために草原に出る。


「魔力弾」

「魔力少ないうちは魔法もポンポン使えなくてつまんなそうだな」

「それは今後の課題。今はこの魔力弾が一番効率がいい」

「魔力操作の練習にもなって良さそう。それに下積みも大切」

「それはいいんだけどさ...少しは前衛してくれない!?なんで一人一人で狩りしてるの?パーティー組んでるんだよね?」


 2人に比べて近接戦には不慣れな美音は、2人に対して講義をするが、楓花も蓮花も、揃って『この爆弾魔は何を言ってるの?』的な目をしている。

 楓花達には当たり前のこととして認識されている常識がある。それは『美音の近くは地雷原』と言う実体験を元に確立されたものだ。

 しかし実際にバラけて戦ってはいるが、美音を含めて誰も一撃すら貰っていない。

 身入りがいいのも事実なため、全員ができる所までやる事になった。


「ライム?魔法はどう?」

「今3属性目」

「そう、順調みたいでよか......ん?」


 この時、美音は聞き間違いを疑った。そう、自分の好きなアニメや映画の台詞に対しては絶対に聞き間違いしない自信がある美音は、今自分の耳を疑っていた。


「ねぇライム?今なん属性目?」

「3属性目って言ったよ?」

「え?」

「え?」

「どうしたお前ら?」

「ちょっと待ていこら、なにとんでも珍事件起こしてんだ、2属性って話聞いてた?」

「私生産できる」

「生産職ではないよね?」

「え?」

「え?」

「何やんてるんだお前ら?」


 この後も試しに他の属性を試したのだが。


「全部使えた」

「なぜ?」

「知らない」

「いいなぁ」


『サーバー内で初、近接職が初級魔法を全て取得したのを確認しました。称号【魔剣士の伝説 序章】を取得しました。』


称号【魔剣士の伝説 序章】

・魔力補正(極)・魔法攻撃補正(極)

・スキル【魔剣】の取得

武と魔の両方極めるのは、並の努力では足りない。

しかし私は諦めぬ!たとえ生涯をかけてでも!

これは魔剣士を目指す者の、これから待つであろう苦難の序章


「凄そうな称号貰った」

「何故?」

「やっぱズルいぞ!」


 色々と規格外な事が起きているが、自分達には分からないと言うことで、3人は再びリズの元へ向かう。


「という事なんです」

「先ずは説明してから言いましょう?」

「説明の短縮できなかった、だと!?」

「普通は無理では?」

「あのなリズさん。ライムが近接職なのに魔法全部使えたんだよ」

「は?」


 ふざける美音に真顔でツッコミを入れる楓花に、何かしら説明を求めるも返答は来ず、仕方なしに蓮花がとてもザックリとした説明を入れると、リズの目が点になる。


「ちょっと待って、そもそもライムちゃんの職業ってなんなの?」

「短剣使い」

「流石に私も分からないわね。何かしら特別な能力があればわかりやすいけど。ただ一つ言っておくと、それはなるべくなら秘密の方がいいわね。少なくとも何かしらの言い訳ができるようになるまでは」


 結局原因は分からなかったが、いい意見は聞けたため、楓花含め3人はこの事については暫くは秘密にすることにした。


「気になるなら図書館へ行ってみたら?ただ文字が読めないのが難点だけれど」

「読めないの?」

「無理ね。ベータ版の時は普通に読めたのよ。でも製品版になってからは、このゲームオリジナルの文字のせいか読めなくて、翻訳も無いし」


 ここで楓花は、隣で他人事のように聞いている魔法使いに視線を向け、ちょっと聞いてみることに。


「なんで氷菓は本読めるの?」

「え!?」

「司書に読み聞かせ頼んだ。そこまで難しくないから直ぐに自分で読めたよ」

「ちょ!?」


 目の前の困惑するリズを置いてけぼりにして、なんて事ないように話す2人。

 こればかりは聞いておかねばと2人の方を掴み引き寄せるリズ。


「流石にはいそうですかとは行かないのだけど、氷菓ちゃんは本の内容が分かるの?」

「もう自分一人で読めます」

「もしかしてライムちゃんも?」

「私は教わったばかりだから単語だけ」


 それを聞くと、リズは2人から手を離し、顎に手を宛てて考え込むこと数分目線を美音へ向けて問う。


「ねぇ、氷菓ちゃん。この情報皆に共有してもいいかしら」

「いいですよ」

「ありがとう!これで皆喜ぶわ」

「みんな?」

「そう、ベータ版の時から歴史や文献漁りしてる物好きなプレイヤーとかね」

「へー」


 この情報の共有があったことで、プレイヤー達の熱は更に増していくのだった。


「おーいリズー」

「あぁ、やっと納品に来たのね」

『ん?』


 リズを呼ぶ声に振り返る3人の前には、こちらに向かってくるタンクトップにバンダナの男が手を振りながら歩いてきていた。


「遅かったわね」

「無茶言うなよ。これでも急いでスキル上げして納品に来てるんだぜ」

「はあ、一応紹介ね。この人はクレイ、鍛冶屋をしている私のお得意先よ」

「クレイだ!鍛冶にしか脳のないプレイヤーだ、よろしくな!」

「私はライム」

「私はビルドだ!」

「氷菓」

「2人は知ってる。名前までは知らなかったが、始まりの街付近の平原に現れた2人組のプレイヤーは今有名だからな。そっちの魔女っ子は新顔だな」


 現実の時間でもかなり遅い時間になっており、3人はここまでにして寝ることに、リズとクレイはもう少し商談を続けるようだ。

【後書き劇場】とある日の思い出


「美音ってなんで図書室の本の位置覚えてるの?」

「それは俺も気になってたけど、なんかコツでもあるの?」

「特にない?」

「やっぱ美音は凄いやつだな!」

「強いて言うなら」

『言うなら?』

「どうして自分の部屋の本棚の中身覚えられないの?」

『は?』


この時美音が言った言葉で、それ以降各々が変な特技を持っていてもあまり驚かなくなったのであった。

そして全員が驚きの中で同じ事を考えたのだ。

『学校の図書室を自分の部屋とは言わないでしょ』

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