違和感
退院して一週間が経った。
通常に生活に戻れた。
入院期間はとにかく暇だった。
絵を描いたり、サッカーのビデオを見たりで
時間を潰していた。
絵を描くのが得意ではなかったが、絵を描いていると看護師さんに上手ですねと褒められた。
でもよく言われたのが、これを見て描いてるのに
ちょっと違うね。
俺は絵を描く時最初だけ描くものを見て、そこからは何も見ずに描いている。だからからか、出来上がった絵を見ると結構違うことがあった。
しかし、これが今後のサッカー人生に大きな影響を与える。
練習中、いつも通りボランチでプレーしていると
少し違和感を感じた。
ボールをもらい前を見ると、どこに出すとどうなるかがふんわりイメージできるようになった。
瞬間的に少し先の未来というか、今まではここに出すという目先のことだけしか考えられなかったが、ここに出せばこうなって次に自分はどうしたらいいのかが見えるようになった。
ただ、それは毎回上手くいくわけではなく、失敗するときもあった。それでも今までにない変化だった。
その動きを見て井上先生は目を細めて観察していた。
そして冬休みに入ってすぐの練習試合。
俺はボランチで出場した。
ルックアップし、前線にくさびを入れると
俺は身体が勝手に動いていた。
FWはキープしてトップ下に落とすと、裏のスペースに走っていた俺にダイレクトでループパスを送る。
俺はトラップしシュートをするもポストに当たりゴールにはならなかった。
そのワンプレーを見て井上先生は試合後、俺を呼び出した。
「中村!トップ下やってみないか?」
俺はいきなりすぎてびっくりしたが
「トップ下には和也がいるじゃないですか?」
冷静に答えると、フォーメーションを変えてでも
お前をトップ下で使いたいと。
今までは4-5-1だったが、3-6-1に変更すると。
2年生の俺の為だけに変えるのはちょっと
プレッシャーだったが受け入れた。
年が明けてから春まで3-6-1のフォーメーションで
練習試合をこなしていた。
3-6-1の6はダブルボランチに両ウィングがいて、ダブルトップ下だった。
練習試合ではほとんどが5点以上取っての勝利だったが、失点も多く守備が安定しなかった。
そうして春になり春季大会が始まった。