初めての公式戦
夏季大会1回戦は八岡中。
弱小チームだったので6-0と快勝。
俺は途中出場できなかった。
翌日の夏季大会2回戦。相手は春季大会準優勝の上河中。
坂東君が左足靭帯痛めたみたいで、同じ1年の賢吾がスタメン抜擢に。
試合が始まると防戦一方で、上河中がサイドを徹底的に攻めてくる。簡単にエグられ、クロスボールがきたのを弾いてミドルシュートが打たれる展開がしばらく続く。
前半はなんとか0-0で凌ぎきった。
後半は少し攻め方を変えてきてボールポゼッションを高くしてきた。
恐らく俺らが前半守備に翻弄され体力削られ集中力が欠けていることを読み、隙を見て速い攻撃をしようとしてきているようだった。
その一瞬を付かれ、裏に蹴られたボールを賢吾が対応するも、相手FWをエリア内で倒してPKに。
これを落ち着いて決められて1-0。
井上先生が動いた。
「中村!行くぞ。アップしろ」
春季大会準優勝チーム相手に1年生の俺が初めて出る試合に。
そして後半15分に賢吾と変わって俺が出場。
ピッチに立った時、地面から来る暑さと直射日光でしんどいなと思った。
俺が入っても上河中はポゼッションサッカーをして
なかなか俺等のボールにならない。
一瞬の隙を付かれ、サイドの裏のスペースにロングボールを入れられる。そしてクロスが入るが相手のミスキックでマイボールに。そして俺にボールが渡った。
俺は井上先生から、ボールを持ったら相手の裏にボールを蹴れ。DFとGKの間に蹴って点を取る。
チャンスは少ないけどFWの動き出しに合わせて中村が蹴ればビッグチャンスになる。こう言われていた。
俺は前を向き、FWの動き出しを見てすかさずロングボール。
FWが先に触れたが相手に弾き飛ばされた。
しかしこれがファールとなり、PKかFKか微妙なとこだったがギリギリFKだった。
場所はペナルティアーク右。角度的に奥山君の左足だったが、奥山君からこう言われた。
「中村、ここから決められる自信あるか?俺左足攣りそうでちょっとキツイわ。」
俺は「決めれる自信ないっす。でも枠に入れられる自信はあります。」
こう答えると、肩をポンと叩かれ奥山君はボールから離れた。
この角度から決められる自信はあんまりない。
でもワンチャンスをものにしないとこの試合勝てない。狙うは右隅。俺は蹴った。少しカーブしながらボールはゴール右隅へ。相手GKも右隅に蹴ってくるとは思っていなかったのか、一歩も動けずゴール!先輩たちは俺のところに来てナイスゴールや!よーやったと褒めてくれた。
しかし地獄が待っていた。
残り2分ほどしかなく、上河中は中央突破を仕掛けてきた。疲弊しきっている俺達は止めることができず、俺と相手FWのマッチアップ。
必死に食らいつくも足をひっかけてしまいFKに。
これを鮮やかに決められて2-1に。
そして笛がなり試合終了。
俺が同点にしたが俺のせいで負けた。
しかし、誰も俺を責めることはしなかった。
むしろあのFKを褒めてくれた。
先輩たちは悔しかっただろうが、春季大会準優勝相手に接戦できた、といっても防戦一方だったがギリギリの戦いで負けたことでスッキリしているような感じだった。
こうして初めての公式戦は後味悪い感じで終わってしまった。