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ss メリナと才途の契約

「あー……くっそ、いってぇ。」

「私のせいではないのでなんとも……。さ、そこに座ってください。」


 縄を解いてもらった才途は、起き上がると軽く伸びをする。麻縄は体に若干食い込んでいて、赤いアザを残していた。さすりながら、席に着く。ついてきた部屋は二人部屋の内の一つのようだった。おそらくメリナの私室だろう、女の子らしい色合いの家具が揃っている。


「はい、ありがとうございます。では自己紹介を。私はメリナと言います。ここ、"わーうるふ"の……えと、お手伝い、です。」

「お手伝い?」

「はい、お手伝い、です。」


 その割には、この子だけで仕事をしていたような気がすると、才途は何となくそう思った。自分たちの担当がたまたまメリナだっただけだろうか、とも。


「まぁいいや。俺は才途。宮原才途で、名前が才途。」

「サイト……獣人風の名前ですね。苗字もあるんですか。……この街にはお忍びですか?」

「貴族じゃないよ。」


 事情は詳しくないが、どうやら誤解を招いたようだ。上目遣いに聞いてくるメリナに、才途は笑って答える。才途の反応にほっとするメリナは、それはそれで疑問が生まれたようで。


「えと、それでもいいとこの出身です……よね?」

「いや、その……あー……。うちのところじゃ、身分で名前が長くなるとか、そういうことはないんだ。あいつらにも苗字はあるしさ。……面倒だったら、ただの才途ってことで、どうかひとつ。」


 どうにも説明できることではない。だから、悩みながらも才途はそう答えた。名字を名乗るのが面倒になるなら少し考えないとなと、心の中で一つ決めながら。


「なるほど。……あの、この街には何を? 王都なら隣の街になりますし、この街にわざわざ来る人って、特別な事情でもない限り、そんなにいないので。」

「まぁ、近かったから。仕事を求めてっていうのもあるけど、それは冒険者に登録したからどうにかなるだろうし。お金に余裕がなくなる前に行動しなくちゃだけど。……こっちも質問していい?」

「あ、すみません。」


 畳み掛けられてはボロを出しそうなので、才途は会話の流れを切ることにした。自分ばかり質問していたことに気付いたのか、目をパチパチさせたあとに、メリナは体を小さくして謝る。彼女のそんな姿を見て、才途は話の内容を丁寧に話すように心掛けることにした。

 

「……先に言っておくね。俺は獣人差別派じゃないから。」

「…………え、あの。」

「うん、ごめんね。……君、獣人でしょう、それもハーフの。」


 ギィン!


 小さな部屋に、金属音が響いた。少し遅れて、カランと音がなる。

 はじめの音は、金属が擦りあった音ではない。隠し持っていたというと狂気じみているが、別段凶器を持っていたわけではない。

 それは爪だった。見えない風の爪が、才途の掛けていた眼鏡のフレームを削った音。才途は避けることをしなかった。避けられないと分かっていたから、動かないことで被害を受けないようにした。

 ふたつめの音は落ちた音。メリナが頭につけていた白い帽子が、勢いで吹き飛んで床に落ちた音だった。だが、帽子で抑えていたのは髪ではない。

 そこに隠していたのは、耳だ。長い髪の毛と同じ色をした、狼の耳。


「……どうして。」

「まずその爪を引こうよ。魔力で覆ってるんだろうけど、それは武器だろ、メリナの。」

「っ! す、すみません。怖くて、その、つい。」

「……別にいいよ。そもそも俺が悪かった。」


 別に今言わなくてよかったことだしなと、才途は言う。ただそれが、"言おうと思えばいつでも言えた"とそう言っているようにも聞こえて、メリナは体を強張らせた。なぜ自分がそうだとバレたのか、それが分からない。


「……その反応。まぁ普段は隠してるんだろうな。それにしては宿の名前があからさますぎだけど、父さんか母さんかが獣人でこの国に来ているんなら、まぁ頷ける話だし。」


 普通の人間と比較して、動物の特徴を持った人間がいる。

 人間は彼らを亜人と呼び、亜人は自らを獣人と名乗った。人並み外れた身体能力と環境への適応能力を持つ代わりに、人の持つ魔力を失った存在。

 才途は慶次と服を調達する際や、先んじてギルドに顔を出した際に、奴隷落ちして力仕事をする獣人の一家を見た。気になって詳しく話を聞けば、この国では人間は、獣人という種族に対し昔に比べるとかなりマシなものの、差別的な目で見る者がまだいることを知った。


「あの、どうやって分かったん、ですか。……たしかに何人かは知っている人がいますけど、口を開くとは思えないので。」

「身のこなしかな。メリナさん、一緒にめんつゆの用意をしてた時に一度厨房で皿を落としそうになったろ」

「そう、ですね」


言われてメリナは思い出す。陶器の皿を落としそうになり、咄嗟に右足のかかとで受け止めたことを。


「その時の反応が、明らかに人間のものじゃなかったよ。勝間のAGIやDEXならもしかするとできるのかも知れないけど、アイツのステータスはSだ。普通の宿で働いているような人間にしては、あれは早すぎだ。」

「で、でも! 私には魔力があります。獣人とは思えないんじゃ……!」

「だから、ハーフなんでしょ。"獣魔人"。魔力を持たない獣人は、魔力に高い資質を持つ魔族と番になることで魔力を持ったハーフを生むことがある。話にしか聞いたことのない、それさえも都市伝説に近い話だけど。」

「……詳しいん、ですね」


 これまた普通の人間とは違う種族として、魔物の力を持つ人間の成れの果てとされる、魔族という種族がある。彼らは人より高い身体能力と高い魔力を持ち、人間とは冷戦状態にある。

 都市伝説に近い話だからこそ、世間話の一環で聞くことができたのだが。才途は深い息をつく。まさか話を聞いてすぐに出会うとは思っていなかったのだ。

 だが、なんとなく聞いた話でも、少ない情報の中では意識して覚えておくことができる。字や言葉の自動変換の際に感じた違和感、それが魔力だと仮定して、同じ違和感を感じた少女を、獣魔人と見るのは才途にとって無理のない話だった。


「……はい、私はたしかに獣人である父と魔族の母の間に生まれたハーフです。これがただの獣人や魔族なら、ことこの町ではほとんどの人に受け入れられるのですが、そのハーフとなると、まだ"分からない"のが怖くて。だから、私は父の養子ということにして、人間としてこの街にいるんです。」

「それでずっと、その帽子をしてるわけね。最初は衛生面的なものだと思ってたけど、メリナさんには必須だね。ごめん、簡単に出していい話じゃなかったわけだ。」


 どうやら話題の選択を間違えたようで。もとより前置きをした上で才途自身切り出した話題だったが、彼女にとっては重すぎる話だったようだった。


「いえ、たしかにバレてしまうことそのものもですが、それ以上にバレてしまったときの反応が怖いので……。その、サイトさんは、怖くないんですか?」

「んあ? 怖いよ、当たり前じゃん。」


 才途の即答に、メリナは表情を暗くする。仲の良かった友達に拒絶された子供時代の記憶。その光景が、才途の言葉によってフラッシュバックして……。


「いや、いきなり切りつけられたら誰だって怖いでしょ。メリナ、これで怖がんなってほうが無理じゃない?」

「……あれ?」


 その途中で、途切れた。才途の言葉に、今度はメリナがそわそわとする。


「いや、あの。獣人が怖くないんですかって質問だったんですけど……?」

「え、獣人が? なんで? 言ったじゃん、差別派じゃないって。種族がどうのこうので人付き合い決めないよ、俺。」


 俺に限らずあいつらもだろうけど、と才途は心の中で付け足した。

 地球の中でも、人種差別というものにとんと関わりの薄い日本でぬくぬく育った自分達は、肌の色や体つきで内面がわかるわけじゃないことくらい分かっている。それを馬鹿にする人間の器が小さいことを理解しているし、お国柄で人格の大体を予想する人間の底の浅さもよく知っている。

 何より、それだけの分別がついているくらいには、流石に人間ができているという自覚はあった。自覚というか、人間やるのに最低の礼儀というものを、わきまえていた。


 だが、それは地球の、それも日本の常識的なものである。才途は同時に肌の色で差別を行う国があることを知っているし、この異世界にそういう風潮があることも、分かっている。隣町の王都など、王政が敷かれていることを示す手前、エインワーズより厳しくなっているそうだ。場合によっては王都に入ることすらできない、なんてこともあるらしい。

 衛兵いわく、この街は多種族が共生するにはかなりうってつけの街らしい。ただそんな街でも、風潮の名残は残っているわけだが。

 才途は、目の前の少女を見る。視線に怯え、触れられることに怯え、なにより言葉に怯えている少女を。


(……最低だわ、俺。結局価値観の違いの重さってやつを、まだまだ理解できていないらしい。自覚しなきゃな。どうしようもなくここは異世界なんだ。良いことも、悪いことも。いくらでもあると刻み直そう)


 こんな子相手に無神経な話の持ちかけをしたのだと思うと、自分の馬鹿さ加減に呆れた。数分前に戻って紐で縛り付けてやりたい、と。


 だから、言葉を選ぶ。


 もう間違わない。この世界で長い付き合いになるかもしれない相手だ。慎重に、だけど言いたいことをちゃんと伝えるために、考えて物を言う。


「あのさ。」

「……? はい、なんでしょうか。」

「その耳、もう少し仲良くなれたら、触らせてくれないか。モフモフだし、かわいいし、見てて落ち着かない。」


 言葉を選んだ結果がこれである。


 君の耳を触りたい。なるほど変態である。

 だが、そんな変態の言葉が、メリナにとっては"生まれてはじめての言葉"だった。

 家族と気を許した親友にも、言われたことのない言葉。


「……なんですか、もぉ……。サイトさん、おかしいんじゃ、ないですかぁ……!」

「……辛辣だねぇ、返す言葉がないよ」 


 ポロポロと、ゆっくりいっぱい涙をこぼすメリナの目を、頬杖をついて正面からまっすぐに、才途はじっと見つめ続けた。



※※※※※※


「……えー、こほん。」

「あ、泣き止んだ?」

「取り繕った空気を初手でぶち壊さないでください!」


 全力で空気を読まない男、才途。先程まで五人の中では割とツッコミを担当していたはずだが、四人が休みだした途端にこれである。


「サーセン。」

「謝意が全く感じられない……。もういいです、"そういう人"ってことにしておきます。」

「どーも。……それで、結局本題ってなんなの? だいぶ話逸れてたけどさ。」

「……。」


 どの口が言ってるんだお前、という思いを、才途はメリナの視線からビンビンと感じた。流石におもわず気まずさから目を背ける。そんな才途のどうしょうもなさに、メリナは目の力を緩めた。こういう人だと、先程そう思うことにしたからである。


「相談事というか……。サイトさんに、大部屋を回避するための交渉をしようかと思いまして。」

「え、マジで?」


メリナの言葉は、才途には願ってもない提案だった。なにしろ今から借りた大部屋に向かおうとも、そこで待っているのは爆睡をかます4人とベッド4つである。許されるのであれば爆音に設定したスマホを投げ込んでやりたいくらいだ。


「まじ……? はい、まじ?です。 ただ、条件がありまして、この宿の運営を手伝ってほしいんです。そうしたら、この部屋を使ってもらって構いません。」

「ふむ……?」


 言われて、才途は軽くこの部屋を見回す。二人部屋の広さを持つこの部屋は、ベッドが一個に机が一個と、一人部屋用に改造されているように見える。それはつまり、この部屋を一人で使っている人がいるというわけで、正直その人はメリナな気がするわけで……。考えていても仕方ないから聞いてしまおうと、才途はメリナへ向き直る。


「ここって、メリナさんの部屋じゃないの?」

「はい、今はそうですね。この部屋を一人で使っています。でもまぁ、場所を開けるくらい問題ないですよ。」

「はぁ、こちらとしちゃありがたいけど……。で、店の運営って、人手不足だから俺を雇いたいとか、か? それってお手伝いのメリナさんの一存で決められるの?」

「……そうてすね。黙っていても仕方がないのでぶっちゃけると、今、この宿には従業員が私しかいないんです。父と母は料理人で、この宿で三食作っていたのですが、宿が有名になるにつれ、王都までその名前が届いてしまいまして、現在、王城に宮仕えをしています。」

「……おいおい。」


 三食ついてくる宿の料理人が軒並みいなくなるということの問題が才途にはどうしょうもないものに感じられた。当然だ、宿の目的を半分失っているようなものだ。そして同時に納得する、だから、ここでゆっくり話ができるほどに、食事に来る人が少ないのだと。


「現在、うちでは宿に泊まる人の朝食と昼食しか用意できていない状況です。先程のサイトさん達は、私に作れるものしか頼まれなかったし、宿泊客でもありそうだったので断らなかったのですが、大抵はお断りしているくらいなんです。夕食は外の屋台に行ってもらうようにお願いして、それを良しとしてくれる人が寝泊まりしている。これが、"ワーウルフ"の現状です。それでもお父さんとお母さんが帰ってくることを期待して、それでも良いよと泊まってくださるみなさんのおかげでなんとか成り立っています。……ですが、それも厳しくなっている状況で。両親が城に行ってから二ヶ月ほど、正直このままでは店仕舞をするしかなくなります。……だから。」

「うん、よく分かった。……俺に、料理をしてくれって言いたいんだな?」

「はい。この宿に止まっている間の、五人分の宿泊料の免除と、サイトさんへの部屋の提供。これが今考えている報酬になります。」


 才途の言葉に、メリナはゆっくりと頷いた。こちらを見つめるその瞳には、曇りはない。真剣に考えて、この考えに至ったのだと、理解させられた。

 深い息をついた。ため息とは違う、感情と情報を頭の中で整理するための、区切りのようなもの。顔の前で腕を組み、才途は目を閉じる。

 

 悪い話ではない、というのがまず大前提としてあった。バイトで裏方をやっていた経験もある。宿の宿泊客の全貌と、食事にくる客でどのくらい人が入るかは知らないが、それでも食堂の広さを見るに、一人でもそれなりにこなせるだろう。パルムという、蒸している間は他の作業ができる肉まんのようなものが主食として人気なのも、好条件足り得る理由の一つだった。

 

(……でも、責任が重すぎる。)


 王城に宮仕えをするほどの料理人の後釜になれるとは思えない。今のこの世界がどれだけ料理の技術が高いのか、才途は把握していないのだから。何しろ食べたまともな料理が"わーうるふ"のものだけである。しかも素麺だ。

調査をしていたときは、地球と異世界の食材の名前のすり合わせは行えたが、それでも昴と一緒に頼もうとした二つの料理を始めとして、主要な料理まで知り尽くしてはいない。 

 なにより自分は家事全般が得意なだけで、調理免許を持っているわけではないのだ。自分に果たして務まるかどうか。と、そこまで考えて、才途は目の前の少女のことを考えた。


 この子は、いつから一人で抵抗をしていたのだろう。まだ少女の体で、親がいなくなって(おそらく王都の環境を考えるとエインワーズで待つ方が彼女にとって良かったのだろう)それでもずっと宿を閉める訳にはいかないと、一人で切り盛りを初めて。どれだけの間抵抗したのだろう。

 少なくともメリナは自分より技術はないはずだ。売り切れてるという言葉は、正確にはメニュー全てに対応する予定などないから食材の入荷を制限している、というのがおそらくの真実だろうと予想する。自分が手伝えることはきっとあるのだろうと。

 ただ、思いが違うのだ。なら彼女はどうして、数ある中で自分にこの話を切り出したのか。

 たまたま自分にいい条件を出せる足場が整っていたから? それだけだろうか。

 募る疑問は声に出る。


「……二つ、聞かせてくれ。親はどれだけの間城にいるんだ?」

「はい。えっと……始まったのはニヶ月前で、折り返しであと二ヶ月ほどです。」

「……結構あるけど、まぁいけるか。ちょっと長い夏休み分だと思えば、なんとかなるかも。じゃあ、もう一つ。……なんで俺なんだ?」

「それは……分かりませんか?」


 二つ目の質問に、メリナは何故か顔を赤くした。訝しげにメリナを見る才途に、もじもじと、メリナは落ち着きをなくす。


「?」

「あー……えっと、では失礼して。……動かないで下さいね。」


 メリナはぎゅうっと強く目を閉じたあと、意を決したように才途を見る。机越しに身を乗り出して、メリナの顔が才途の胸元にぐっと近づけられた。急に接近されて、思わずたじろぐ才途は、メリナの言葉に体を固くする。

 メリナの耳はピクピクと動き、仄かに甘い香りがする。途端に今度は才途が落ち着きを無くしだした。


「あ、あの……?」

「ライッシュと、これは海藻を干したものでしょうか?」

「――え?」

「卵を焼いたもの、茹でたお豆、リットゥに似たお肉を油で上げたものに、お肉の腸詰め……かな。あとは匂いが薄いけど山菜も、ドレッシングはグラジオンです。しかもどれも相当に上質なもので、それをちゃんと理解した調理です。サイトさん、料理できますよね? 多分、あの中で一番。……ううん、お父さんとも張れるくらいかも。」

「匂い……あぁそうか、弁当か。」


 料理名で言われなかったからピンとこなかったが、言われたものは今日作り門番に渡してきた弁当のラインナップだった。服は着替えたはずなのに、匂いですべてを把握されたことに驚く。獣人の嗅覚かと、才途は感心した。

 そして、同時にほっとする。メリナの言葉から、この世界では料理はそこまで高等な技術を使っているものではないと理解した。精々地球と同じ程度だろう、と。自分のお弁当でそこまでいけるのならば、自分も役に立てるだろうと。

 

「あー、少しだけ安心した。」

(メリナのお父さんが帰ってきたときが怖いけど……うん。今は頼らせてもらおう。)

「えと、それじゃ……!」

「うん。俺を雇ってください。ただ、メニューを覚える時間を掛けられないし、メリナのお父さんの味を再現できないだろうから、メニューを変えさせてほしい。一日8種類程度のセットを用意する。これじゃあ駄目かな。」

「いえ、大丈夫です! あの、よろしくおねがいします!」


 メリナの耳が嬉しそうにピクピクと動く。同時にスカートが大きくめくれ上がった。才途は驚き目を見開く。


「あ、ヤダ恥ずかしい……。」


 スカートの内側には、どうやら尻尾が隠れていたようで。それが大きく振られることで、スカートがめくれたらしい。下着の色は水色だった。黙っていようと固く決意する。ただし、今夜は眠れないか。


「さて、それじゃあ準備をっと……。あ、そうだ。メリナさん、一緒に働くんだから、敬語はなしにしない?俺もメリナって呼ぶし」

「サイトさんからは構いませんけど、え、駄目ですか? 私、どちらかというと接客のときは明るく振る舞ってるんですけど、素はこっちなので、こっちのほうが落ち着くんですが……。」


 そんな人いるのかと、才途は少し考える。まぁ思い出してみれば勝間や慶次に対してやけにフレンドリーに話すな、とは思っていたが。しかし、自分に対しては最初から敬語だったような……?


「んー……まぁいいか。」


 そういうことにしておけば、取り敢えず嫌われてないってことになるし。働いているうちに嘘か、それとも本当にそうなのか分かるだろう、と。

 だから今は構わない。これからしばらくの付き合いになる予感は、きっと間違っていないから。



※※※※※※


〜おまけ〜


 厨房に向かいながら、そういえばとふと思った事を聞いてみることにした。


「そういえばさ。」

「はい、なんでしょうか。」

「あの部屋を使わせてもらうのはいいけど……あそこメリナの部屋って言ったよね?」

「はい、そうですけど。」

「だよね。……メリナ、今日からどこで寝るの? 部屋を開けるって言ってたけど、私室以外にどこかベッドがあるとか?部屋の空きはないんでしょ?」

「え、あの部屋で寝ますけど。元々二人部屋を一人で使っていたので、元に戻すだけです。」

「え?」

「え?」

「いや、じゃあ俺は別の部屋で寝るところがあるの?」

「え、あの部屋で寝ますけど。」

「え?」

「え、嫌ですか? その、最近抱きまくらが壊れたので、一緒に寝たいんですけど……。」

「いやいやいや無理無理無理! 俺死ぬよ!?」

「え、でも獣人は嫌いじゃないって……本当は嫌いですか?」

「嫌いじゃないけど!ケモミーミ、モフモフ、アイムハッピー!」

「なら『よしわかった、俺が今日中に抱きまくら用意するから!裁縫苦手だけど頑張るから! だから普通に寝させてください押し入れでいいんで!』……でも、それじゃあよく眠れないんじゃ……。」


 抱きつかれたほうが眠れないよと強く思った。


(くそう、メリナの親は娘にどういう教育してるんだ、小悪魔ってレベルじゃないぞ!)

メリナ・ラフタンフール Lv.82

RANK B


双剣士 魔術師


HP C+

MP B-


STR:B

VIT:D+

DEX:B+

INT:B

MND:D+

AGI:A+

LUK:C+


スキル

剣術(双剣) B+

四属性魔術適正

回復魔術

風属性魔術耐性

ランナー A

鑑定 B

罠察知 B

索敵 A


ユニークスキル

風精霊の加護 S



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